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20,だって私が初めて…。


「おおおおっとおお!!?マオは剣を捨て体術に移行したああ!!」


派手男のこえが響く。

「剣撃が通用しないから拳撃かい?どちらにせよこの鎧には通じないよ」

マルグリットの言い分はそれはその通りで、魔法強化した武器が通用しないのに未強化の拳が通用するわけがない。


「やってみなきゃわからねえだろ。能書き垂れてねえでさっさとかかってこい」


前に突き出した手をくいくいと動かしマルグリットを挑発するマオー。

「言うに及ばず!」

マルグリットがマオーに突っ込んでいく。

「なっ!!?」

剣が空を切った。マルグリットが驚いたのは避けられたことではなく避けられ方だった。目にも止まらない刹那の移動でマルグリットの横に立っていた。またもや手をくいくいとし挑発する。

さっきとはまるで違う、余裕の回避。

これが本来のクラスになったマオーの動き。

「マオ!!!さっきまでと動きがまるでちがあああーう!!一転してマルグリットピンチかああ!!」

(悔しいがその動きは素晴らしい…!!だが君の打撃は私にはきかない!!)

当たらないなら数を打て。

その考えでマルグリットは連撃を試みる…ようとした。

初撃。

マオーは避けるのではなく。


いなした。パリイ。


「!!?」


隙だらけになった腹部にマオーの掌打がさく裂した。

「うおおお!?」

マルグリットは5メートルほど後ろに下がらせられる。剣を杖代わりにしてなんとか堪えた。

「ってー、アホほどかてえ鎧だな」

振りぬいたあと手を振るマオー。


「…はははは。予想外の力でおどろいたよ!だがダメージはまるでな…ぐはあ!!!??」


マルグリットが突然大量の吐血をした。兜と地面が鮮血で染まる。

会場がどよめく。悲鳴もきこえた。実況も止まった。

マルグリットはあり得ないほどの激痛に膝をついてしまった。

「な…なに、を…した……!?」

マオーはあの時の冷たい目を見せた。


「『鎧通し』という体術だ。とあるアホほどつええ女からおそわった」


ゆっくりと動けないでいるマグリットに近づくマオー。

(…鎧…通し?)


「名前そのまんまの魔法ですらないただの体術だよ。掌打がインパクトする刹那、爆発的に押しぬくことで衝撃が鎧と筋肉を貫通し内臓に直接ダメージを与える。理屈は単純だが冗談抜きで血反吐を吐くほどの鍛錬しないと出来ねーから真似しても無駄だぜ?」」


一式装備は魔法や打撃は防げるが、単純な技術による貫通衝撃波までは防げないというわけだ。

マオーは続ける。


「気分最悪だろ?内臓を直接ぶん殴ったようなもんだからな」



ーーーーーーーーー



VIP席。

「あーあー、やっぱりーまずいことになりましたーねー」

ローニャが全くそう思ってなさそうにそうセリフを放った。


「あなたたちの言ってた貴族のほうが心配ってまさかこのこと?」


レイチェルは今度は別な意味で不安になっていた。



「そ。多分あの貴族殺されるわよ。あの顔は完全に切れてるわ」



いきなり物騒なことを言うレニにレイチェルは驚く。

「じょ!?冗談でしょ!!?ほら!神官もいるし!?」

やれやれといった反応を見せるレニはザインに説明をするよう促す。

「マオーが本気であの技を撃ったら、貴族はすでにあの世にいってるんだが…それはべつに救うために

手加減したわけでなく、立ち上がれるくらいに手を抜いて一回苦しめて希望と絶望を味合わせてから

二回目で殺るってことだ」

ザインも淡々と説明する。別に死のうが生きようが関係ないといった感じで。

「止めなくていいの!?仲間なんでしょ!!?」

慌てるレイチェルに不思議そうにする三人。


「なんで?マオーが怒るの無理ないわよ。マオーだって最初は殺す気なんかないって言ってたわ。

あの貴族が聖堂騎士一式装備なんかしてきてマオーを追い詰めるのが悪いんじゃん」


レニの正論にううとなるレイチェル。


「それにマオーの体術ってある意味切り札の一つともいえるから、それをこんな公衆の面前で

披露させられたら俺らとしても心情的に止めたくないしな」


自業自得ってやつだとザインも同調する。


「そーもそーもー、私たちがとめたらー反則負けにーなっちゃわないですかー?」


ローニャの言葉にそりゃそうだと頷く二人。



「わかったわ!あなたたちが正しいわ!!だったら私がなんとかする!」



VIP席をたち走り出すレイチェル。

「…ザイン何してんの早くついていきなさいよ」

いいながらザインを蹴っ飛ばすレニ。

「あだ!!俺が子守り役かよ!??」

いいからーはやくー。とローニャもザインの背中を押す。

へいへいとレイチェルの背中を追うザインだった。

「本当にやばくなったら、ローニャ。わかっているわね?」

「いうにおよーばずーですねー」

レニは弓を装備し、ローニャは鉄扇を両手に握った。



ーーーーーーーーー



(勝手なのはわかってる…!でもマルグリットには死んでほしくないしマオーにも殺してほしくない!)


全力で走りながら自分のしたことを後悔するレイチェル…涙を流しながら。

自分の馬鹿な見栄と嘘で一人の男が殺されそうになっている。

一人の男が殺そうとしている。

冒険者のことをもう馬鹿にしないって思ってたのに、まだ少しどこかで彼らの覚悟を甘く見ていたのだ。

ちゃんと考えればわかることだったのに。

自分と違って死と隣り合わせの仕事を普段からしているのだ。

野党やブラックリストとも戦う冒険者にとって殺人は日常茶飯事なのだ。

やらなければやられる。

そんな世界で生きている人をここまで追い詰めたら、たしかにこういうことになるのは当然だ。

マルグリットの覚悟もなめていた。

決闘をしてまで自分と婚約したい。それにこの大舞台を用意してきたのだ。

覚悟と自信となる根拠があったと容易に想像できた。

そんな二人が本気でぶつかり合ったら本当の殺し合いになることも十分かんがえれた。


(私って本当に馬鹿よ…!!)


もういい!反則負けになってマルグリットと婚約になっても構わない!。

マオーを止めたい!!

…私の傲慢かもしれない。でも


「マオーにマルグリットを殺してほしくない…!」


だって私が初めて……



ーーーーーーーーー



「立てよ。まだいけるんだろ?」


またも手をくいくいとし辛そうにするマルグリットを見下すように見下ろすマオー。

「…ええ。まだまだあ!!」

激痛をなんとか堪え立ち上がって咆哮したマルグリット。

「おおーっと!!マルグリットが立ち上がったああ!!試合はまだまだこれからかああああ!!」

マルグリットが立ち上がったことで実況と歓声が戻った。

だがマオーだけは冷めた表情をしていた。


「そうだ。最後まで足掻け。それでこそやりがいがある」


もうすでに試合は決まっていた。マオーは死なない程度に手加減をした。ザインの言う通り

いきなり全力で撃ったら苦しまずにあの世に行ってしまう。苦しみながらも向かってくる

ところを打ち抜くことでマオーの気分も少しは晴れるというものだ。

「あああああああ!!!」

最後の力を振り絞りマオーに突進するマルグリット。


「いい覚悟だ」


マオーが構える。

今度は全力で撃つ。

脳みそを粉々にしてやろう。

マオーが掌打を放った刹那。

マルグリットは走馬灯を見た。


(あれ…?私…死ぬのか?」



「マオーーーー!!!!やめてえええええーーー!!!!」



月の入り口にレイチェルが立っていた。実況よりも大きい声で叫んだ。観客の視線がレイチェルに集まった。

涙と動機が止まらない。人生でこんなに全力で走って叫んだのは初めてだ。


マオーの掌打はまさしく目と鼻の先、マルグリットの兜前で静止していた。

(…いきている?)

走馬灯を見ていたマルグリットは訳も分からず放心している。

「………」

マオーも動かない。

レイチェルがマオーのところまで走ってきて。

背中から抱き着いた。


「もういいから。マルグリットの勝ちでいいから。もうやめて」


ここでようやくマオーは掌打をおろした。

「ええーとこれはあどういうことだあ?」

実況も困惑している。

「マルグリット!私はあなたに謝らなくちゃいけないことがあるの」

マオーが止まってくれたと感じたレイチェルはマオーからはなれマルグリットに近づく。

ここでようやくはっとしたマルグリットは状況をようやく理解した。

死んでいるはずの自分が生きている。

決闘の場になぜか涙をぼろぼろ流しているレイチェルがいる。

そして自分に何かするでもなくただ立っているマオ。

「…初めからあなたの気持ちに正面から応えるべきだったの。実は私たちは…」

レイチェルが何か言う前にマルグリットが遮った。


「レイチェル!!…その先はいう必要はないよ。助けられた上にそのレディを泣かせてしまうとは

紳士失格だね私は。降参するよ。実は悶絶しそうなくらいしんどいんだ」


マルグリットが後ろに控えた付添人に合図した。

付添人から降参の合図がでた。

「おっとおおおお!!!なんでかわからんが!!マオの勝利だあああ!!!!」

マルグリットに賭けた人が大半だったため、会場は微妙な空気のままおわった。



ーーーーーーーーー



決闘の後、コロシアムの医務室でマルグリットが横になっていた。

神官の祝福により傷は癒え、休んでいた。

「謝るのは私のほうだ。本当はきみに婚約者がいないだろうと思っていながら決闘を申し込んだのだから」

医務室にはマオーとレイチェル、マグリットの三人。神官は治癒を終わらせ、既にいなくなっていた。

マルグリットはレイチェルの発言を遮った時察したのだ。やはりマオとレイチェルが婚約者ではないことに。

ならあの時のキスは疑問に残るが、もう一つ確信めいた事実がある。

マオーの強さだ。

神官に強化してもらった装備をものともせず突破する強さ。都合よくそんな強い奴が現れるわけがない。それに躊躇せず自分を殺そうとする残酷性。どう考えても普通ではない。おそらくは冒険者を雇って婚約者のふりをさせたというのが妥当である。

「気づいていたのね…。なんで私を止めてくれたの?」

あのとき本当のことを言おうとしていたレイチェルを止めたマルグリット。

「もう嘘かどうかは関係がなかったからさ。聖戦を始めた以上、すべては聖戦に委ねられた。

それにあの時もいったけど助けてもらった上に、きみにあの場で真実を言わせるなんてそれこそ

君を愛する資格がないってもんさ」

はははと笑うマルグリット。レイチェルがあの場で真実を言えばすべてが茶番だということが

コロシアム中に伝わってしまう。レイチェルに恥をかいてほしくはないし、自分も命をかけて

戦っていたのだ。それにもともと嘘だとわかっていて挑戦したのは自分自身だ。


「一つきいていい?…私のどこがそんないいの?」


レイチェルの素朴な疑問に一瞬ぽかんとしてはあとため息をつくマルグリット。

「君は少し自分を知ったほうがいい。私のために割って入ってまで止めてくれたじゃないか。

彼が反則負けになるかもしれなかったのにも関わらず…ね。君が思っている以上に君の

精神は素晴らしいものさ」

ここでマルグリットはマオーに視線を向ける。

「マオー君…っていったっけ?彼女とは婚約者ではないのだろうけどお勧めするよ」

マオーはすでに冷静さを取り戻していた。笑顔を取り繕う。

この会話を不自然なく進めるように。

「あいにくだがまだ結婚を考える予定はないんでね。まあ、色々あったがそれなりに

楽しめたよ」

と手を差し出すマオー。マオーの反応にマルグリットは?という感じだったが

とりあえず差し出された手を握った。レイチェルはマオーが穏やかになって安心していたが

マルグリットは決闘前とは別人のような反応を見せたマオーを怪訝には思ったものの

あれも演技だったと思えば納得できた。対立を深めて婚約者っぽくしたかったんだろう。



「ところであの鎧一式はどこで手に入れた?」



マオーはこの質問がしたくてこの会話に参加していたのだ。

態度を変えたのもこのため。いくら伯爵とは言え一式装備など簡単に手に入れられるわけがない。

しかもマオーが戦う相手がピンポイントで持っていた。

でき過ぎである。

「結構前だけどファーウェル大聖堂の神官から、私がもともと持っていた聖堂騎士装備を祝福してあげようって話がきたのだよ。理由はユルプル家当主を応援してあげようってことだったかな?いまいち釈然としなかったけど、断る理由もないし受けたけどその効果が凄くてさ。友人の座天級の冒険者と模擬戦をやったら勝てたしね」

なるほどなとマオーは頷いた。だからこその自信だったのか。


…ただ。

一式強化までの理由がふんわりとし過ぎている気がする。いくらファーウェル大聖堂の神官とは言え

一式強化術式の施行なぞおいそれとはしないしできない。それほどの労力が必要なのだ。


そもそも…だ。


「マルグリッド。レイチェルと出会った社交界のとき、なんかこう…不思議に浮かれた気分じゃなかったか?」


マオーの質問にレイチェルとマルグリットは不思議そうな顔をした。


「どういうことだい?…て、また質問を質問で返したらまた怒られてしまうな。…確かに言われてみればそうだったかもしれない。普段より高揚していたのは間違いないな…レイチェルに出会えたからかな?」


そうははは、と笑いながら返すマルグリット。

「それで。どうしてそんなことを聞くんだい?」


「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」


マルグリットの返答にマオーが口に手を当て考え込む。その真剣な表情に二人はこれ以上の追及がしづらくなり沈黙する。

その二人の様子を察したのか、マオーは慌てて取り繕う。


「ああ、本当に他意はないんだ。…ここらで僕は失礼するよ。自分でやっておいてなんだが、お大事にな」


最後まで?マークの二人だったが、もう話すことがなかったので退出するマオーだった。



そもそも。マルグリットがレイチェルにここまで惚れ込む理由が乏しいと感じた。

まあ、色恋沙汰なんてそんなものかもしれないが。


しかしあるいは。


社交界のあの場でマルグリットが魅了術チャームをかけられていたとしたら?


意図的にマルグリットがレイチェルに惚れるように仕向けられていたのだとしたら?


…ファーウェル大聖堂の神官。


偶然にただの親切で一式強化術をしてあげた?それはあまりに能天気な思考だ。

マオーの予想がただしければ。

ファーウェル大聖堂の神官とレルゲンは繋がりがある。


「…めんどくせえ」


深くため息をするマオーだった。



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