19,聖堂騎士装備一式(ディバインシリーズ)。
VIP席。
いままで余裕そうだった三人の表情が変わった。
「ありゃあ、聖堂騎士装備一式じゃねえか。なるほど、これが自信の根拠
ってわけか」
さっきまでの緩い感じが真面目な表情に切り替わったザイン。
「ちょっとーまーずいかもですねー」
ローニャのいつもの笑顔が止まる。
「はえーシリーズ装備とかボンボンのくせによく知ってるじゃない」
レニが感心と言った感じに注目している。
三人の態度の変わりように少し不安になるレイチェル。
「え?え?どういうこと?一式?私にも説明してよ!」
ローニャとレニがザインを見る。はいはいとザインが口を開く。
「一式装備てのは上から下まで、同じ魔法や祝福で強化された武具に一式強化術式をして一式装備することさ。一式そろえることで単品よりさらに魔法や祝福による強化が高まるってわけだ。ちなみにあの貴族は聖堂騎士装備一式ってやつを装備をしている。この装備の凄さをわかりやすく言うと…智天級の冒険者が装備していてもおかしくないほどいい装備だ」
それを聞いてわかりやすくレイチェルは動揺する。
「それって凄くまずいじゃない!智天級ってあなたたちより上なんでしょ!?」
レイチェルと真逆に、真面目な表情になっても慌てる様子のない三人。
「まあ落ち着きなさいよ。まずいかどうかはいずれわかるわ」
腕を組み依然マオーの勝利は揺るがないという自信の表情を見せるレニだった。
ーーーーーーーーー
「おおおおっとお!!?マルグリットの猛攻が収まらない!!マオは防戦一方か!!?」
派手男の実況が響く中、マルグリットの衰えることのない剣撃がつづく。
「ははは!逃げてばかりじゃかてないよ?マオ」
華麗に剣撃を避けつづけるマオー。だが決して余裕で避けているわけではない。むしろギリギリよりである。
(まさか聖堂騎士装備一式とはね…恐らく全能力超強化の祝福がされてるな)
かたや重い全身鎧かたや軽い黒装束。それでもマオーがギリギリ避けることしかできない剣撃をマルグリットができるのは装備のバフがあるから。
初めに聖堂騎士一式に気付かなかったのは、すべて装備をしないと一式強化が発動しないから。
ちなみに聖堂騎士装備でも一式強化術式が施されていないと一式強化が発動しない。
ただ一式揃えるだけでは一式装備とはならないのだ。そこになかなか入手できない理由がある。
(だめだな…一向に疲れる気配がない。体力回復の祝福もついている)
ここでマオーは大きく距離をとった。
「武器強化改(カスタマイズ+2)」
魔法でショートソードを強化させるマオー。多分この武器ではあの鎧に傷をつけることはできない。
だがまあ試す価値はある。
「随分控えめな武器だねえ。。君こそ警戒が足りなかったんじゃないかい?」
マオーは確かにそうかもなと心の中で答えた。
そもそも座天級でただのショートソードを使っている冒険者なんてマオーぐらいだ。それでも使う理由はシンプル。
手入れが面倒だから。
中途半端に高い剣を買うと手入れが本当に手間なのだ。剣を研ぐ必要もあるし各種メンテナンスに時間と金がとられる。
それにマオーは魔法で武器強化ができるので、中途半端に高い剣よりショートソードを強力にできるのだ。
なら安物を使い捨てるほうがコスパがいい。
だがこの場合は完全に裏目だった。
「ま、しゃーないッ!!」
と今度はマオーがマルグリットに突っ込む。
「いいねえ!これこそ闘争だ!!!」
マルグリットの薙ぎ払いをを刹那で躱すマオー。がら空きの腹部に切りつけようとしたマオーだったが
「っつ!?」
ガイイイインと鈍い音がしマオーの剣がはじかれる。マオーが態勢を崩すと見逃すまいとマルグリットの
振り下ろしの一撃がくる。
「おわりだ!」
(…そこだ!)
結論から言えばマルグリットの剣撃はまたも避けられ、鎧と手甲の隙間にマオーのショートソードが
突き刺さった。
つまりは体制を崩してからの突きだった。はじかれ反動で痛がったのも撒き餌。
だが。
(!?)
感触に違和感を感じたマオー。
「考えることはみんな一緒だな」
突き刺さっていなかったのだ。マルグリットの突きがマオーに迫る。
避けられない。甲冑の隙間まで祝福強化されているとは。恐らく鎖帷子を着ているのだろう。
それぐらいは予想していたがノーダメージは予想外。
「これは決まったかあ!!?」
派手男の叫びと共にマオーが端まで吹っ飛んだ。
つまり刺さっていない。
「ちッ」
マルグリットは血のついていない騎士剣を見て舌打ちする。
ギリギリ。ショートソードをクロスして突きを防いだのだ。だが壁にぶつかったダメージはそれなりに大きい。
(…ああ、鬱陶しい。面倒くさい。なんでサクっと勝たせてくれないのだろう。大人しくしてれば
手を抜いてあげたのに)
いっそ指輪を外して。
肉片一つ残さず塵にしてやろうか。。。
…まあ、そんなことはしない。
マオーは両手のショートソード二本を投げ捨てた。
余裕でゆっくりとマオーに近づいてきたマルグリットはマオーの行動に思わず立ち止まる。
「どうしたんだ?あれだけのことを言っておいてもう降参かい?まあそれはそれで構わないけどね」
肩をすくめるマルグリット。
「そんなわけねえだろ」
マオーはそう答え、その後腰を落とし、利き腕を大きく前に出しもう片方を引く。
それはまるで体術の構え。
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VIP席。
「あら!?マオーが剣を捨てた!マオーにここまでさせるなんてあの貴族も中々やるじゃない」
レニがどことなく嬉しそうにそういう。
「え?いままで本気じゃなかったってこと?」
レイチェルは何とも言えない気持ちだった。確かにマオーが劣勢になろうと三人はまったく動じないのだ。
だが劣勢にしか見えないしでいろんな感情でよくわからなくなっていた。
「本気じゃないっていうかマオーの元々のクラスは武闘家だけど普段は
魔法剣士って感じ。手加減ていうよりは相手や状況に合わせて変えるって
わけ」
そりゃあよく捉えすぎだろとレニを笑うザイン。
「あいつは単に素手で魔物に触りたくないんだよ。レニの理由もあるにはあるんだろうが本質はそんなもんさ」
そんな理由で?とぽかんとするレイチェル。
「要はそれだけ余裕ってことなんだよ。智天級を見たときはねえから絶対とはいえんが
剣を捨てたマオーは実質智天級の実力ぐらいはあると俺は思っている」
ザインが続ける。
「反撃開始だ」




