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17,勝者は栄光を手にし、敗者は地べたを這いつくばれ。

マルグリット邸。

とても大きくて立派な建物だ。白を基調としておりユルプル家の豊かさが伝わってくる。しかもこれがファーウェル滞在用の

別邸だというから驚きだ。

マオーたちが門に近づくと勝手に開き、庭園に10人のメイドが奇麗に並んで道を作ってお辞儀をしている。

その先に。

一人の男が立っていた。

マオーと同じ180前後の身長、程よく引き締まった肉体、オールバックの黒髪でレルゲンの言った通り美青年と言える。

ただすこしだけタレ目なのがマオーと好みがわかれそうな感じか。ちなみにマオーはややつり目。

男はつかつかと速足でマオーら三人の近くまで来た。


「レイチェル!久しぶりだね!この日を一日千秋の思いで待っていたよ!レルゲンも変わらず元気そうで何よりだ!」


テンションの高い男に若干ひきつるレイチェル、レルゲンは表情を変えずに一礼した。


「さて、肝心の君が私の『聖戦』のお相手かな?」


聖戦…?ああ決闘の事か。こいつらは決闘を聖戦と言っているのかとマオーは理解し頷く。

「私はマルグリット・ユルプルだ。よろしく!」

うざってえくらいの爽やかで元気な挨拶と共に手を差し出すマルグリット。

「マオ・パルマだ。こちらこそ」

そうマオーは差し出された手を握った。

手が離れたあと、マルグリットはマオーをまじまじと見つめた。そして頷いた。

「ふむふむ、たしかにいい婚約者だね。いきなりで恐縮だけどこれから一緒に食事でもいかがかな?」

予想外の一言にレイチェルが驚く。

「ちょっと!?きょうは顔合わせだけって話じゃ」

言いかけたところにマルグリットが割って入る。

「どうしてだい?心配しなくても私のところで食事をしようなんて言わないさ。場所は君たちが決めていいし勿論お代は全て私が持つよ」

レイチェルはマオーを見つめた。多分マナー知らずだったらとかで心配しているのだろう。マオーはそんなレイチェルの不安を払拭するように

「それではご馳走になろう。レルゲン、ここらで適当なレストランはあるか?できればオーランドとは関わりのない店がいいな」

と答えた。それをききグッド!と指を立てるマルグリット。

「でしたら…ファーウェル大聖堂付近にファーウェル都営レストランがありますのでそちらはいかがでしょうか?」

都営レストラン。これならお互い料理に毒を盛るような真似はできないだろう。選んだマオー側もいきなり決まった話だからできないはずだ。

「それでいいかい?マルグリット伯」

「問題ないさ!ちなみに私に敬称はいらないよ。そのかわり私もマオと呼んでもいいかい?」

こいつくそうぜえ…と思いながらも平静を装い静かに頷くマオーだった。




ーーーーーーーーーーーーー




ファーウェル大聖堂の一部は観光名所として公開されていたので、付近に飲食店も多く存在していた。

マオーたちが今回食事をするレストランはいわゆる高級レストランだ。

レストランの入り口前でマルグリットがそういえばと口を開く。


「レイチェルとレルゲンは別の席で食事をしてくれないかな?彼と二人で話したいからさ」


「なんでよ」

「男同士でしか話せないこともあるのさ。それにこの食事は彼にお礼をしたいという意味が大きいからね」

不満そうな顔をみせたレイチェルだったが、マオーが目線でいう通りにしろと伝えてきたので渋々先に

レストランに入っていった。レルゲンも二人に一礼してレイチェルについていく。


「さてと。さあいこうか」


赤いカーペットに豪華な装飾。白く奇麗なテーブルクロス。もうすっかり暗くなり、アンティークな燭台の揺らめく火がいい雰囲気を醸し出していた。高級なためかテーブル感覚は広くとっており、人は多いが落ち着いていた。

「さ、遠慮せず好きなものを頼んでくれたまえ」

メニューを見るとマオーはお!?となった。

「僕は決まったから呼んでも?」

勿論ならわたしが呼ぼうと手をあげ待機していたウェイターを呼ぶ。


「マッシュドラゴンステーキメインのコースで」


マルグリットはそれを聞きほおと感心した表情を見せた。ウェイターも少し驚いた表情をみせる。

「じゃあ私も彼と同じものを頼む」

「は…はい!お飲み物のほうはどうされますか」

マオーは一瞬いつもののりで黒ひげと言いかけたがこらえて、このコースに合うワインを適当に持ってきてくれと言ったら

「ならベル・ラトゥールという赤ワインがおすすめだよ。ステーキによく合うんだ」

マルグリットがそういったのでじゃあそれでとこたえた。

「しかしマッシュドラゴンとはお目が高いね。実は私もそれを頼もうと思ってたんだ。気が合うじゃないか」

合いたくねーよと内心つっこむが、まあ久しぶりにマッシュドラゴン肉が食えるということでマオーの機嫌が少し良くなっていたのだ。

「マッシュドラゴン自体が希少だし、そもそも討伐が難しいからな。智天級冒険者のパーティでも手こずると聞く。そのかわり肉がとてつもなくうまいから超高価で取引される」

このくだらない会話にも少し付き合ってやろうとかんがえたマオー。

ウェイターが驚いたのは、マッシュドラゴンのコースは金持ちでも引くぐらいの値段だったからだ。

「それを君にご馳走できてよかったよ。いつもあるとは限らない…むしろない時のほうが多いからね」

ここでウェイターがきて二人のグラスに赤ワインが注がれた。


「さて明日の健闘を祈って乾杯と行くかい」


マオーは頷いた。




ーーーーーーーーーーーーー




レストランでのマナーは実はマオーは心得ていた。孤児院を開く前に潜伏してたころ、そういう知識はある程度マスターしていた。こういうのはある日突然必要になるものだと理解していたから。

マルグリットに劣らず上品に料理を口に運ぶマオー。ここでああそういやと


「僕にお礼ってどういうことなんだ?」


マオーがそう聞くとマルグリットがワインを一口飲み、ふうと一息ついた。

「聖戦を受けてくれたことにさ。君がもしそれを断ったら私はそもそもノーチャンスだったからね。

レイチェルが受けてくれても君が断る可能性は十分あった」

それにと続けるマルグリット。

「きみは聖戦を受けるメリットがないしさ。受けて勝ったところで君にはもともと婚約者だったレイチェルがそのままなだけ。負けたら私に奪われる。それを勇敢にも受けてくれた君に感謝だ」

マオーはたしかにそういやそうだなと思った。依頼だから受けているけど普通こんな勝負受ける奴はアホだ。確か貴族同士なら断れないらしいが。レイチェルもそう言い訳すればよかったんじゃね?と一瞬考えたがそういやこの貴族より強いって自分でいったんだから不自然か。

「僕が聞くのもなんだがレイチェルのどこがそんな好きなんだ?よりどりみどりだってきいたぞ」

マルグリットは不思議そうな顔をする。


「魅力的だから君も婚約しているんだろう?」


「質問しているのは僕だ」


少しだけ威圧感を出してしまったマオー。ステーキを口に運ぶことで落ち着こうとする。

若干たじろいだマルグリットだったがすぐに収まったのでこたえる。

「質問を質問で返すのは悪かったね。まあ単純に性格だよ。あの年で御父上の仕事を手伝いたいとか立派じゃあないか。たしかに私に言い寄ってくる女性は多いけど、どこに嫁ぐとか御家の話ばかりであまり私にあわないんだよなあ。それに控えめな恰好しているあたり、倹約家なんじゃないか彼女は?そういうところも好感がもてる。それにここまでアタックして振り向いてくれないのも、逆に振り向かせたくなるじゃないか」

悔しいが最後の意見だけは同意だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



しばらくして。

コースのほとんどが終わり、デザートを食していた二人。

「ご馳走様でした。マッシュドラゴンの肉はやはりいいもんだ」

マオーが満足げにいうとここでマルグリットが


「楽しんでくれたようでなによりだ。…じゃあ本題と行こうか」


と切り出した。



「君たちって実は婚約者じゃないんだろ?」



マオーのスプーンが止まった。

「別に答えなくていいよ。社交界のときのレイチェルの反応をみれば嘘だとはすぐわかったし、多分だけど男性経験もない。君が何者かは知らないけど、大方婚約者の振りをしてくれと頼まれた…そんなところだろ?」

マオーはスプーンを置き、掌で顔を隠すようにした。


「それで。仮にそうだとして、それを僕に言ってどうする?」


掌で表情が見えないマオー。

「いやさっきも言ったようにお礼が言いたかっただけださ。君がいたから勝負が成立したし

その上君が婚約者でないなら明日勝った後堂々と彼女を奪えるからね」

いいながら肩をすくめるマルグリット。

「随分と自信があるんだな。僕の強さもわかってないのに」

変わらず表情が見えない。


「負けないさ。例え君が冒険者だったとしても負けないね。…まあ智天級だったらきついけど智天以上は

こんな依頼うけないだろうしダーフォン所属に智天以上の冒険者は登録されてないからな」


それは座天級以下なら勝てると言っているのか。こんな奴に『あいつら』が馬鹿にされているのか…。

変わらず表情が見えない。



「そうか。じゃあ一つ教えてやろうか。『俺』はお前みたいなよく知らん奴に知ったふうな口されるのが

大嫌いなんだ」



ここで掌を顔を離す。


「!!?…それが君の本当の表情かおかい?ひどく冷たい目をしているね」


だがマルグリットも今度は引かない。

「ああ、一応言っておくと食事を受けた真の理由は、お前が警戒に値するか見極めるためだった」

マオがそういうとへえーとマルグリットが笑い

「で、私の評価はどうなんだい?」


「明日殺しあう人間にお礼とか健闘とか言ってる時点で論外だろ。この食事でなんとか毒でも盛ろう

ってしようもんなら一考したかもな」


マオーはどんなことをしても勝つという考えのやつのほうが厄介だとわかっていたから。

これはすこしきいたようでマルグリットは眉をひそめた。

「少し待っててくれ。あと一つ伝えたい事がある」

そうマオーが立ち上がる。

「どこにいくんだ?」

すぐに戻るからちょっとだけ待っててくれとマオーは離れたレイチェルの席に向かった。

「どうしたのマオー?」

不思議そうにするレイチェル。勿論あの目はやめていた。

「ちょっと用があるからついてきてくれ」

「わわ!!?ちょっといきなり手ひっぱらないでよ!?」

「レルゲン、すぐ戻るからそこにいてくれ」

?とわかりましたと返事をするレルゲンだった。


ーーーーーーーーー



「なんなのよもう…」

訳も分からずと言ったレイチェル。

「いきなりレイチェルを連れてきてどうしたのか」

マルグリットもレイチェルと同様だった。

テーブル越しにマルグリットそして対面にマオーとレイチェル。

ここでマオーはいきなりレイチェルを片手で引き寄せ


「わわわ!?こんなば!」


「!??」


もう片方の手でレイチェルの顔を引き寄せる。

ディープキス。

「ん…ん…」


マルグリットはレイチェルが無理矢理されているとは思えないキスだった。むしろ受け入れている。

ていうか完全に女の顔をしている

しばらくしてレイチェルは解放された。幸い店自体が薄暗かったので遠くの席まで注目されなかった。

「悪かったな。急にしたくなって」

「急にしたくなった。じゃないわよ…次はちゃんと場所を選んでよね…ってあ!」

ここでレイチェルは気づく。わざわざこの場所でキスをした理由に。

マルグリットの表情がえらいことになっていた。怒りを無理矢理抑えようとして歪んでいる。

多分婚約者じゃないとかそういう事を言われたのかもしれない。

つまりは証明するために。だがマオーはそれが目的ではなかった。

マルグリットをみて不安そうにしているのをみてとりあえず席に戻ってと促すマオー。

わかったとたったったと足早に自分の席に戻っていったレイチェル。

そして再び二人。


「なにが『多分男性経験もない』んだか。恥かくから今後そういう知ったふうな発言控えたら?」


ここまで熱いキスを見せればその続きもしていると思うだろう。

もう座る気がなかったマオーは立ったままマルグリットを煽る。

それを受けてかマルグリットも立ち上がった。


「見せつけてくれるねえ…!君は紳士かと思ったけど違うようだ」


レイチェルがいなくなったことでマルグリットの怒りの表情が爆発した。


「ようやくいい顔になったじゃねーか。そうだ称えあうなんて気色悪い。勝ったものが栄光を手にし

負けた奴は無様に地べたを這うでいいんだよ、真剣勝負なんてのはな」


それをききはははと笑うマルグリット。


「だとしたら地べたを這えたらラッキーだねえ。死んでないんだから。悪いけど手加減するのは

やめにしたから覚悟しておいてくれ」


マオーがそれにこたえる。

「奇遇だな。俺も手加減するつもりだったけど、気が変わったからお前専用に救護班の神官5人

ぐらい追加しておいてくれ。もし伯爵殺っちまったら面倒ごとになりそうだからな」



ーーーーーーーーー



そんなかんじで別れた。レイチェルがやたら心配していたがべつにどっちにせよ戦うのに変わりはない

のだ。

だったら対立を深めてあの貴族のプライドをずったずたにしてやろうとおもった。あの自信と発言

全てを否定してやる。

そもそも金のためとはいえこんな茶番に突き合わされてイライラしていたところに、馴れ馴れしいくそ貴族と食事まで突き合わされた挙句、しょうもない会話をさせられたのだ。

…ただ、頭に血が上り過ぎて、しょうもない煽りをしたような気もしてきた…とも思えてきた。

本当に悪い癖だ。イライラするとどこかでどうでもいいやとなって考えなしに行動してしまう。

自分で言ってたじゃないか『貴族をサクって倒して金貨100枚で終わり』と。

そう思いながら一人で夜風をあたっていたマオー。


「まあーいいか」


結局反省していなかった。


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