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計算士と空中戦艦  作者: ディープタイピング
第3部 侵攻作戦編
44/72

#44 高地

 いよいよ、ネフスキヤヴォストークまで超えなくてはならない戦場が、あと一つとなった。

 その戦場とは、アラル山地である。

 標高3000メルテ級の山々が連なる山地ではあるが、これを陸上部隊が通過するには、この山地の真ん中を貫く峠道を進むしかない。

 当然、オレンブルク軍がそんな場所に何も仕掛けないわけもなく、そこには地形を活かした要塞があるという。


「副長、そんな場所を、どう攻略するというのですか?」

「詳しいことは聞かされていない。が、一つわかっていることは、今回はあの新兵器が使えないといことだ」


 広場に招集され、副長から現況報告を聞かされたヴェテヒネン乗員が、当然抱くであろう疑問を砲長であるマンテュマー大尉が尋ねる。それに対し、副長からの返答は、ただ我々の不安をあおるものでしかなかった。

 そりゃそうだ。陸上戦艦とやらは、塹壕突破には大きな役目を果たした。が、あの鈍足ぶりでは、とてもじゃないが山地では使えない。

 その存在感は確かに驚異的だ。が、今の陸上戦艦の性能では、戦場を選びすぎる。せめてもう少し高速に動けるならば、その活用価値があるというものだが。

 この先の戦争を変えるほどの兵器かと錯覚したが、案外、役に立たないものだな。結局は空中戦艦が主役であり続けるのか。そう私は思った。

 制圧した平原に作られた駐屯地から、その次の戦場であるアラル山地を眺める。あの山々を超えたすぐ先に、要塞都市ネフスキヤヴォストークがある。

 思えば、遠くまで来たものだ。ここは、キヴィネンマー要塞から距離にして12000サンメルテほど東に位置する。さらにあと80サンメルテ東に、その攻略目標である要塞都市ネフスキヤヴォストークがある。

 そのわずか80サンメルテの間に、あのアラル山地要塞が立ちはだかる。だが、考えてみれば、その要塞を超える要塞都市がその先に控えているのだ。あれを突破できないならば、その先の要塞都市攻略など夢のまた夢だ。


「いやあ、大作戦の前の飯は美味い!」


 作戦に向けて周囲がピリピリしている中、この能天気で無神経なセリフを吐くのは、一応民間人であるマリッタだ。


「今の食事と、作戦の大きさは関係ないだろう」

「そんなことないよ。このさぁ、何とも言えないピリピリとした空気が、このカレーに辛さと旨味を与えているような気がするんだよぉ。いつもと違う、何かを感じるんだぁ」


 言いたい放題だな、こいつは。単にチョコレートの食いすぎではないのか。あの甘味で舌が辛さへの耐性を失い、そこにカレーの辛みがなだれ込んだ結果、いつもより刺激的に感じているだけじゃないのか。

 刺激か。そういえば、もうひと月近くも王都クーヴォラに帰ってないな。ラハナスト先生はお元気だろうか? あの刺激的な10桁計算機は今ごろ、何に使われているんだろうか?

 3日に一度、定期的に戦況を知らせる暗号電文を、例の暗号法で送信している。もちろんあれはあの10桁電子手順計算機でなければ解読できない。だから当然、あれが使われているのは間違いないのだが、そんなことのためだけにあの高性能な機械を使うはずがない。

 「計算」にはもっと崇高な目的がある。未来を切り開く力がある。本来は砲弾の向かう先を予測して、殺しあうために使う道具ではない。例えば、市場や銀行の金勘定を素早く行うことで、多くの人をその無価値な労働から解放したり、優れた材料計算を行って丈夫な建物や乗り物を開発したりと、そういうことに使われるべきなんだ。

 ふと、腰に差した計算尺を取り出す。このひと月、ずっと計算づくめで少し目盛りのあたりがすり減ってきた。王都に戻ったら、新しいのを買おう。だけどいつになったら、私は王都に戻れるのか。


「随分と暗い顔をしているな」


 その日の夜、駐屯地のテントの中で、砲長にこう言われた。そんなに暗い顔をしているのかと、私はその言葉に少し驚く。


「もうひと月も王都に帰ってませんから」

「それを言ったら、ついこの間の南方進出の時でも、これくらいの期間、帰らなかっただろう」

「それはそうですが、あの時はほとんどが味方の地にいましたからね。ここは敵地のど真ん中で、しかも地上(おか)に降りてもテント暮らしがせいぜい。気が滅入るのも当然でしょう」

「そうか? 俺はユリシーナと一緒なら、どこでも構わないがな」

「いや、砲長はそれで……」

「おい」

「あ、はい、アウリスはそれでよくても、私は王都に帰りたいんですよ」

「やはり、あの新型の計算機が気になるのか?」

「当然です」

「はっきり言うな。俺よりも、計算機の方が大事か?」

「比べる対象が間違ってます。砲長……アウリスは私個人にとっての大事な存在ですが、あの計算機は人類にとっての宝なのですから」

「人一人と人類、か。それはあまりにも重みが違いすぎるな」


 私の言葉に理解してくれた……わけではないな、なんか急に面倒臭くなったようで、私の背後から抱き寄せて、身体をまさぐり始めた。この男は、要するに自分の欲求が満たせればそれでいいらしい。テントの中ではいつもこうだ。

 まあ、そんな具合に夜を過ごし、翌朝を迎える。日が昇ってしばらくした頃に、ヴェテヒネンの乗員に召集がかかる。


「次の作戦の概要を伝える」


 駐屯地の端に設けられた広場にて、前に立つやや厳しい表情の副長が、集まった27人に向かってそう告げる。間髪入れずに、キヴェコスキ兵曹長が質問する。


「副長、その前に聞きてえんだが、今度の戦いではあの高い山に築かれた要塞を叩くっていうんだろう?」

「その通りだ」

「どう見たって、キヴィネンマー要塞よりも強固そうじゃねえか。そんなところを堕とせると、フロマージュ軍の司令部は本気で考えてるのか?」

「当然だ。そのための作戦が立てられた。その概要を、これから説明する」


 こうも自信満々に肯定されては、さすがの兵曹長も返す言葉がない。副長は続ける。


「今度の作戦では、例の新兵器、陸上戦艦は使えない。となれば、攻撃の(かなめ)となるのは我々、空中艦だ」


 いきなり我々こそが今度の戦いの帰趨を決するのだとばかりに、切り出した。さらに副長は続ける。


「そこで、ヴェテヒネンにも爆撃任務が与えられた。ほかの爆撃艦15隻とともに、要塞への空爆を加える」

「ちょっと待ってください、副長。たった15隻で、キヴィネンマー要塞を超える規模の要塞を攻撃すると、そうおっしゃるんで?」

「そうだ」

「そりゃあ、あまりにも無謀すぎるってもんじゃねえですかねぇ」

「なぜだ?」

「キヴィネンマー要塞でも、15隻の爆撃艦からの攻撃ごときじゃびくともしませんよ。せいぜい、表面をこんがりと焼き上げるだけ。空爆が過ぎれば、再び要塞砲を出して反撃してくるだけじゃありませんか?」

「大丈夫だ、そのための新兵器が用意されている」

「は? 新兵器?」


 いきなり、新兵器という言葉が飛び出した。副長の次の言葉に、皆が注視する。


「爆撃といっても、搭載するのは焼夷弾ではない。そうだな、徹甲弾のような弾頭を大きくしたもの、とでもいえばいいか」


 なにやら不可解なことを言い出したぞ。砲長がすぐさま質問する。


「副長がおっしゃっている意味が分かりません。我々は今、爆撃任務のことをうかがっているのであり、弾頭のことではありません」

「いや、だから、その爆撃任務で敵要塞に叩き込むものが、その徹甲弾のようなものだと言っている」

「ではお聞きしますが、我がヴェテヒネンならばともかく、主砲を持たない爆撃艦がどうやって徹甲弾を撃ち込むと?」

「それはだな……うーん、口で説明するのは難しいな。実物を見せた方が早いだろう」


 そう言って副長は立ち上がり、全員を広場からやや離れた武器集積場へと引き連れる。

 ここには、大量の武器弾薬、および機関や主砲の修理部品などが集められている。その場所の一角に、奇妙な形の物体が置かれていた。

 見た目は細長い砲弾だ。しかし、砲弾にしては太く、しかも長い。後方にはなぜか、羽のようなものがついている。こんなものを詰め込める砲身があるのだろうか? その異様な武器の前で立ち止まった副長が、皆の注目を集めつつあるこの物体を指差しながら、我々にこう告げる。


「これがその、新兵器だ」


 すかさず、砲長が尋ねる。


「副長、とてもじゃないですが、こんな大きな砲弾、主砲にはおさまりませんよ」

「いや、これは砲弾ではない。『自噴式弾頭』といって、自力で推進し、目標に向かって飛翔、目標に命中するという兵器だ。ある程度の岩や土を貫通しつつ、遅延信管により起爆するという、そういう仕組みを持っている。今回は焼夷弾の代わりに、これを抱えて出撃する」


 と、副長がこの武器について我々に説明する。私は、その砲弾状の物体の後ろ側に回ってみる。

 大きな穴が空いている。自噴式と言ったが、ここからガスか何かを噴き出して進むもののようだ。


「副長、一つ質問があります」

「なんだ、カルヒネン曹長」


 それを見て、私は一つ疑問を抱いた。それを副長にぶつけてみる。


「見たところ、確かに自力で何かを噴射しつつ飛翔する物体のように見えます。が、このようなものが安定して飛ぶとは思えません。どこかで事前に試し撃ちすることはできないのですか?」

「さすがはカルヒネン曹長だな。その通り、私もこの武器に疑問を抱いている。が、残念ながら、訓練している時間的、物的余裕がない。ぶっつけ本番でやるしかないと、そう前線司令部からは告げられた」

「えっ、これをぶっつけ本番で?」

「とりあえず、照準器はある。それに、ただ重力任せにばら撒く焼夷弾に比べたら、命中精度は格段に高い方だといわれた。それを信じるしかあるまい」


 なんだか適当だなぁと、改めて思う。新兵器を渡されたのはいいが、役に立つのかどうかわからない物体を取り付けられては、我々にとってはただの重石に過ぎないのでは?

 こんなものを10発、砲撃室のある後部ゴンドラの真下にぶら下げる。しかも照準器を前方に取り付ける必要性から、発射ボタンも艦橋に付けられるという。おかげで、この武器の使用時には私と砲長が艦橋に出向くことになった。

 納得のいかないまま、その場は解散となった。出撃は翌日の10時と決まる。10隻の爆撃艦とヴェテヒネンによって、この実力不明な武器を背負って突入、距離1000メルテまで接近して発射することになっている。

 要塞の主力兵器をこれらで叩いた後に、およそ7万の軍主力と20基の自走砲車が突入、要塞を制圧することになっている。もちろん、その後は空中警戒にあたり、敵の空中艦が現れたらそれを叩く。そこは、いつも通りの戦術を繰り広げることとなる。

 今度も敵は、間違いなく空中艦を投入してくるだろう。要塞戦だから、爆撃艦よりは戦艦、あるいは偵察艦を出してくることになるとは思う。となれば、むしろあの奇妙な新兵器を腹に抱えている時が一番危険だ。

 もちろん、爆撃艦隊の後方でフロマージュ軍の戦艦7隻が護衛に回るが、あの頼りない砲撃しかできない連中だ。たいして役に立たないだろう。そう思った方がいい。


 ふと私と砲長は、ヴェテヒネンの方へと向かう。鮮やかな青色の帯模様が描かれたこの目立つ艦は、臨時の飛行船ドックで並ぶ空中艦の中でも探し出すのは容易だ。

 ちょうど作業員が、艦橋のあたりに何かを取り付ける作業をしている。例の照準器と、後部につける新兵器の発射装置を取り付けているようだ。そこから電線のようなものが後部ゴンドラまで伸びている。


「いつの間にか、あちこちいじられたな、この艦も」


 砲長がつぶやいた通り、この艦もオレンブルク侵攻作戦以来、あちこち変わっている。

 気嚢には目立つ模様が描かれ、機関は高性能なものに置き換わり、今度はおかしな武器を土手っ腹に取り付けられようとしている。細かいところで言うと、気嚢の表面には多少の防弾性を持つとされる半透明なゴム膜で覆われ、またゴンドラの窓には防弾ガラスがはめられている。つまり、被弾性能や機動性は格段に上がっており、乗員保護性という点ではずっと向上した。あの青色の帯を除けば、だが。


「あの青色帯を除けば、我々にとっても有益なものばかりです。今度の新兵器だって、いつもの焼夷弾よりはましなようですし、問題ないのでは?」

「あの青帯を含めて、すべてフロマージュ軍の都合じゃないか。それが気に入らない」


 砲長も言う通りだ、どれもこれもフロマージュ軍の都合でつけられたものばかり。いいように使われている、その感覚だけは私も拭えない。無論、砲長の方がより理不尽さを感じているはずだ。あの時、殴られただけに。


 その日の晩は、砲長と副長、そしてリーコネン上等兵の4人で夕食を食べる。出された戦闘食は、塩漬け肉とソーセージ、豆類、ジャガイモ、そしてビスケットにジャム。そこにチョコレートとキャラメルがつく。

 ビスケットは、我々のものと比べたらはるかに柔らかく、食べやすい。これもセレスティーナ連合国からの提供品だという。あの国の戦闘食は、なぜか必ず甘味がつく。

 肉類とジャム付きビスケットを交互にいただき、最後にお茶をいただきながらチョコレートとキャラメルという甘味を食べる。この殺伐とした戦場で、くつろげる瞬間だ。

 時折、上空からブーンというプロペラの共鳴音が聞こえてくる。敵の夜襲に備え、フロマージュ軍の空中戦艦が警戒に当たっているためだ。我々も爆撃任務がなければ、このまま上空で警戒待機するはずだった。が、換装作業中のヴェテヒネンは発進できない。この時ばかりは、爆撃任務を与えられたことに感謝だ。


「ところで砲長、今度の作戦が成功したとして、その先にある要塞都市への攻撃、成功すると思いますか?」


 砲長がまた、副長には答えづらい質問を投げかけている。副長も苦し紛れにこう答えるのみだ。


「フロマージュ軍の上層部が、いろいろと考えているところだ。それにまた、新兵器の投入があるかもしれん」

「とはいえですよ、相手はアラル山地要塞など問題にならないほどの強固な要塞都市です。城壁で囲まれ、無数の要塞砲が並べられ、しかも交易中継地だから物資も豊富。籠城されたら、攻めどころがありません」

「空が開いているだろう。爆撃艦による空爆を加えて中から破壊しつつ、城壁を突破。その後は司令部を占拠制圧できれば、要塞都市といえども陥落する」

「その場合は市街戦です。わが国でも当初、国境沿いにある街、ケラヴァを攻め込まれた際、建物の陰からオレンブルク兵を狙撃し続けて消耗し、撤退に追い込んだことがあります。今度の要塞都市は、10万人規模の住人を抱える大都市ですよ。ケラヴァの比ではありません」

「わかっている。簡単な戦いでないことくらい、我々以上にフロマージュ軍は承知しているだろう。ともかく、今はフロマージュ軍司令部の指揮下にある。疑念を抱いたところで、やることは変わらん。我々は、我々の持てる力すべてをたたきつけるのみだ」


 副長にこの先の戦局の行方を尋ねても酷というものだろう。指揮権をフロマージュ軍に握られている今は、悪い予想を抱いたところで士気を下げるばかりだ。副長としては、ただフロマージュ軍を信じろとの投げやりな意見を唱えざるを得ない。

 そこにリーコネン上等兵が割って入る。


「とはいえよ、負けた時のことは考えた方がいいぜ。いや、ネフスキヤヴォストーク以前に、このアラル山地要塞の攻略すらも失敗するかもしれねえ。そうなりゃ俺たちは、どっちに逃げりゃいいんだよ」

「退却命令が出た、という前提であれば、この平原に設けられた駐屯地まで引くんだろうな。そこで態勢を整えて攻めるか、あるいは勝機なしとあきらめて撤退するか。それもすべて、フロマージュ軍次第だがな」


 独立戦争中は、いつも危機的状況に追い込まれながらも決定権はこちらにあった。ところが、この戦いでは生殺与奪の権利をすべてフロマージュ軍任せにしている感がある。それが多分、不快感の元でもある。


「まあいいや、ところでこの戦闘食、美味えよなぁ。これ作ってるセレスティーナ連合国が参戦してくれたら、この戦闘食を使って敵の兵士を寝返らせて、簡単に勝てる気がするんだけどな」


 と、リーコネン上等兵が能天気なことを言って話を締めくくる。が、ここでさらっと出てきたセレスティーナ連合国だが、彼らはあくまでも中立という立場で参戦しない。が、こうして物資面では多大な支援をしてくれている。新兵器と呼んでいるもののいくつかも、セレスティーナ連合国で作られたものだと風のうわさで聞いた。

 私も以前、彼らのタンカーを見た。船は国力を示すというが、あれを見る限りではフロマージュ共和国など比べ物にならないほどの大国だ。あの国が加担してくれたなら、あっという間に東側同盟など叩けるだろうに。

 などと考えながら、私は横からすっと出された飲み物に口をつける。一口飲んだ瞬間、ワインだとわかる。ああ、また砲長か。それにしてもこの敵の奥地で、よくワインなんて手に入るな。フロマージュ産と比べたら、少し味が浅い気がする。これも多分、セレスティーナ産なのだろうな。

 と思いながら、それをくっと飲み干す。そこからの記憶が、ぷつっと途切れる。


「伝れーい! 空中艦隊、全艦出撃ーっ!」


 私が目を覚ましたのは、テントの外を伝令兵が空中艦乗りに出撃命令を伝えている声を聴いた時だ。横には、全裸姿の砲長。もちろん私も、一糸まとわぬ姿で寝ていた。


「出撃命令ですよ、砲長!」

「そうだな、すぐに着替えて走るぞ」


 大急ぎで着替えを済ませる二人が、軍服姿で外に飛び出す。見張りの兵士が、こちらになにやら生暖かい視線を向けてくる。戦場で男女が同じテントにいることが、そんなに珍しいのか?そんな兵士らの視線を感じつつ、ヴェテヒネンへとたどり着く。

 すでにゴンドラの下には、あの砲弾型の自噴式弾頭が取り付けられていた。その弾頭の分だけかさ上げされた高さにあるゴンドラに、梯子を伝って上る。


『抜錨、ヴェテヒネン、発進する!』


 発進の号令は、艦長から発せられた。繋留錘(バラスト)をつけた綱を切り落とす音が聞こえ、船体が浮かび上がる。

 さて、敵はどう動くか。まずは爆撃任務だが、敵はおとなしく攻撃を許してくれるだろうか?

 などと思っていると、さっそく敵が動き出した。


『敵艦隊発見! 艦影多数、数15! すべてアプローズ級! 距離12000、急速接近中!』


 なんと敵は、いきなり近接戦闘を挑んできた。かれらは上昇中の艦艇に向けて、まさに襲い掛かろうとしている。

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[良い点] トールボーイのご先祖様? 考えることは同じなのだなぁ
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