#13 砲撃
「ほう、お前が金等級を受けたという、噂の女曹長か」
爆撃艦サウッコはそのまま王都には戻らず、キヴィネンマー要塞ドックに入港し、そこで焼夷弾の補給を受けることとなった。で、艦長と副長、そして私の3人はこの要塞指揮官であるアンティラ陸軍准将の元を訪れる。
この准将、やはりというか大の空軍嫌いなようで、敵自走砲を破壊して撤退に追い込んだ我々に対し、いきなりこの物言いである。
脇に立つこの司令官付き参謀長である大佐も、我々を冷ややかな目で見つめている。我々の爆撃によって、この要塞前の塹壕戦に勝利したことなど、まるで意に介さない様子。別に我々の助力など不要だったと言わんばかりだ。
「空軍も多少は打撃を与えたようだが、我が方の奮戦により、今回も敵の侵攻を食い止めることができた。その辺りを、重々わきまえよ」
これだ。我が方の奮戦といっても、前線兵士を消耗し、後方にある要塞砲は敵にほとんど打撃を与えることができなかった。その事実をもって、どうして我々の戦果を過少にしたがるのだろうか?
などと考えたところで、一介の曹長が准将閣下に物申せるはずもなく、その場は黙ったまま敬礼して、要塞司令室を出る。
「嫌われたものだな」
通路を歩く中、艦長がぼそっとつぶやく。すると副長がそれに短く答える。
「我々は、空軍ですから」
空軍と言うだけで嫌われる、というのも妙な話ではあるが、確かにそれは事実だ。やっかみか、それとも新しい兵種への抵抗感か。いずれにせよ、理不尽な理由であることには違いない。
3人は要塞敷地内にあるドックへとたどり着く。そこに停泊する小型爆撃艦サウッコを見上げる。小型艦とはいえ、全長は200メルテもある。それは要塞司令部のあるどの建物よりも大きい。あまり空中戦闘艦になじみがないのか、陸軍の兵士らはこの巨体を見上げては、何かをぼそぼそと話している。多分、さっきの准将と同じ感情を抱いているのではないだろうか。
「お帰りなさい、艦長」
で、その真下にあるゴンドラの入り口で、砲長のマンテュマー大尉が出迎える。互いに敬礼し、3人は中へと入る。
「いかがでしたか?」
「いかがもなにも、一方的に戦果を取られただけだよ」
「やはり、そうでしたか」
こうなることはあらかじめ織り込み済みではあった。要塞と爆撃艦の同時攻撃であるから、どちらの戦果かなど、明確に線引きできない。となれば、前線にいる階級の高い方にその大半が取られる。特に陸軍が空軍の戦果など認めるはずがないから、ああなることは予想できた。予定通りであったとはいえ、やはり釈然としない。
「艦長のティッキネン大佐は、いらっしゃいますか?」
と、外から艦長を呼ぶ声がする。振り返ると、陸軍制服を着た兵士が一人立っている。伝令兵のようだ。
「私がティッキネン大佐だ」
「アンティラ准将より伝言です。勲章を授与された曹長には、前線の視察を行ってはどうか、とのことです」
「前線視察か……そうか、分かった。准将閣下には、喜んでお受けすると、そう伝えてくれ」
「はっ!」
艦長が伝令兵にそう告げると、兵士は要塞司令部内へと返っていった。
「よろしいのですか?」
「空軍のひよっこどもに、前線の悲惨さを目に焼き付けてやろうという准将閣下のありがたい申し出だ。どのみち、あれだけの打撃を受けたオレンブルク軍が引き返し、すぐに戦闘が起こることはあり得ないだろう。いい機会でもある、カルヒネン曹長も自身の戦闘結果を、目に焼き付けておけ」
「はっ」
あの准将の無茶な申し出を、受けることになった。もっとも、この要塞内にいる限り、断れるような気がしない。
ということで、私はついさっきまで戦場だったあの塹壕へと向かうことになった。それに当たって、副長が艦長に尋ねる。
「ですが艦長、まさか彼女一人で行かせるので?」
「いや、マンテュマー大尉とともに行ってもらう。砲長と一緒ならば、舐められることはないだろうな」
ということで結局、私と砲長は塹壕へと向かう羽目になった。
丘の上に立つ要塞を出ると、峠に向かう緩やかな斜面を歩く。途中で、地面に掘られた幅1、2メルテほどの溝に入る。これが、塹壕と呼ばれるものだ。
入口の兵士に、我々が来た事情を砲長が説明している。我々が空軍兵士であることを承知のうえで、その兵士が案内することになった。兵士の後ろについて、塹壕内へと入る。
敵の銃や砲の攻撃から身を守るために掘られた深さ1、2メルテほどの溝だが、頭上から降ってくる砲弾に対しては、あまり役に立っている気がしない。とはいえ、これまでオレンブルク軍の侵攻を阻止できたのは、まさにこの急造された地面の溝と、その後方に控える要塞のおかげである。
そんな塹壕内を進む。時折、小銃を抱えた兵士らとすれ違うが、空軍のグレーの制服を怪訝そうな表情で見る。やはり、ここでも歓迎されてはいないようだ。
が、その塹壕をさらに進むと、徐々に硝煙と血生臭さが鼻をつくようになる。兵士の表情も、険しさを増す。まさに死地を潜り抜けてきた兵士たちだけに、我々空軍とは面構えが違う。
そして最前線の一歩手前の二号塹壕まで接近した時、私はその異臭に思わず鼻を覆う。
「ここが、今朝の戦闘で激戦だった場所です。ちょうどあそこに、敵の自走砲弾が命中しました」
案内の兵士が淡々と語るが、そこには強烈な血生臭さと泥臭い臭いとが混じった異臭と、そして泥だらけの物言わぬ兵士らの姿があった。
手足だけや、頭部を吹き飛ばされた者、それらは泥だらけのまま放置されている。私はその光景と異臭を前に、布で口を覆う。その視界の中には担架を持った兵士もおり、それら物言わぬ身体を乗せては運んでいる様子が目に入る。
凄惨な土溝の下を歩く兵士らだが、我々が来た奥へ続く通路へと向かわず、真っ直ぐ二号塹壕の奥へと進んでいく。不思議に思った私は、案内役の兵士に尋ねる。
「今の兵士たちは、要塞の方へ向かうのではないのですか?」
「ああ、この塹壕の端に集めているんです。そこで、焼却するんです」
「えっ、彼らは家族らの元へ帰されるのではないので?」
「こんな戦場です、とても無理ですね。かといって、埋めるにしても多過ぎる。そのままにすれば死臭が酷くなり、かつ伝染病の原因になりかねない。だから、ああやって焼却処分するしかないんですよ」
この兵士、処分といった。ここでは人は死ねば、処分されてしまうということか。淡々と語る案内役の話に、私は言葉を失う。
さらに、一号塹壕までたどり着いた。そこはもう、二号塹壕の比ではない。焼却処分など不要な身体が、あちらこちらに転がっている。そうだった、初弾をここに落としたから、その炎で焼き尽くした。ゆえに、ここにいるのは敵か味方かすら判別できない。
ここまでなるともう、塹壕の地面か壁に埋めるしかないらしい。まだ二号塹壕の処置に手間取っていて、ここまで手が回らないようだから、ここは戦闘後そのままである。
私は望遠鏡を手に取り、さらに国境側を眺める。自走砲車の残骸が見える。峠の向こう側には最後に爆撃した敵の物資集積所があるはずだが、ここからでは見えない。
私も病院で傷ついた兵士らを見てきたが、ここはさらに生々しい。実際に亡くなった兵士らが大勢おり、それが手つかずのまま放置されている惨状を目の当たりにした。私は、拳に力をこめる。
私は、何か役に立てたのだろうか?
落とした焼夷弾は、確かに自走砲車を破壊した。敵の撤退を促すべく、物資の破壊にも成功した。が、それがどれほどの兵士を助けることになったのだろうか。さらに言えば、先の2発はほとんど無駄弾であった。もっと早く高度を下げていれば……
と、凄惨な光景に打ちひしがれていると、突然、叫び声がする。
「敵の斥候だ、撃て撃てーっ!」
いきなり奥の方から小銃の発砲音が響く。パンパンと塹壕の縁から銃を撃つ兵士らの視線の先には、濃緑色の服を着た兵士が二人、走っていくのが見える。
一人が背中から撃たれ、倒れる。が、もう一人はまんまと取り逃がす。銃を撃った兵士らが、こちらへと走ってくる。
「くそっ、要塞の連中め、どこを見てやがるんだ」
悪態を吐きながら走ってくる兵士が、私と砲長の姿を見て立ち止まる。
「なんだ、空さんか」
我々を見て、空軍だと認識した。てっきりまた嫌味でも言われるのかと思いきや、その兵士はこう告げる。
「まだ、敵の兵士がいる。ちょっと頭を下げてろ」
それを聞いた私と砲長は、慌てて頭を抱えてしゃがむ。が、そこでその兵士は突然、小銃をバンッと放つ。
「いたぞ、右へ行った!」
すると別の兵士らが発砲する。頭を抱えて塹壕の壁際にいる私と砲長には、何人の敵兵がそこにいるのかは知る由もない。
「敵は去った、頭を上げていいぞ」
その兵士に言われて、恐る恐る頭を上げる。立ち上がり、私はその兵士と対峙した。
「あ、曹長殿、失礼いたしました」
その兵士は上等兵だった。銃をおさめ、私たち二人に敬礼する。大柄な兵士だが、私の方が階級は上だった。しかも、金色の勲章を身に着けている。おまけにその隣は尉官ときた。階級が物を言う軍隊だからこその態度の変わりようだ。
「いや、構わない。我々こそ助かった」
砲長はその兵士にそう告げて返礼を返す。それから少し私は望遠鏡で前線の方を眺める。濃緑色の制服をまとう敵兵が、峠の方へと去っていくのが見える。
「ところで、なんで空さんが塹壕にいるので?」
その兵士は、私を見てそう尋ねる。
「いえ、アンティラ准将閣下が前線を視察してはどうかと提案されたので」
「ああ、そういうことですか」
と言いながらその兵士は塹壕の淵から身を乗り出し、峠の方を見張る。が、再び戻ってくると、こんなことを言い出した。
「ならば、准将閣下自らもお越しになればいいんですけどね」
この兵士の口調から察するに、我々に視察を提案した准将閣下自身は、ここにはお越しになっていないようだ。
「ところでお二人さんは、あの爆撃を行った船の乗員で?」
「は、はい、そうです」
「そうなんですか。でも、女で船乗りとは珍しいですね」
「ああ、彼女は計算士だ。それで、落とした焼夷弾の弾着地点を確認するために来たんだ」
それを聞いた兵士は、なにやら驚いた様子だ。女が計算士というのは、確かに珍しいことではある。が、驚くようなことか?
「てことは、この人があの自走砲車への爆撃を計算したんで?」
「それはそうだ。計算士だからな」
するとこの兵士は、いきなり私に敬礼する。
「あ、ええと、なにか……?」
「小官はあの自走砲に、危うくやられるところでした。もしあの爆撃がなければ、今ごろは二号塹壕の端で山積みにされて焼かれていたかもしれません。あなたは命の恩人です」
思わぬ言葉を投げかけられた。陸軍とは、空軍を忌み嫌っているのではないのか?
「い、いえ、最初の2発は外してしまったのです。もっと早く当てていれば、これほど悲惨なことにはならなかったかもしれません」
「それでも、要塞の連中よりははるかに我々の命を救っていますよ。何せ連中の砲弾は一発も敵の自走砲を捉えていないんですから」
「は、はぁ」
「では、見張りに戻ります。お互い、神の加護があらんことを」
「はい、神の加護があらんことを」
互いに敬礼すると、その兵士は塹壕の奥へと走っていった。
途中で塹壕の奥にしゃがんだものだから、軍服と勲章が汚れてしまった。致し方ない。王都に戻ったらすぐに洗おう。そう思いながら、再び要塞へと戻っていく。
「えっ、もう焼夷弾が補充されたんですか?」
ドックへ戻ると、爆装が完了したとの報告を受ける。
「そうだ。ハミナ市から馬車で運ばれてきた。敵が出て来ても、すぐに攻撃できるぞ」
艦長が嬉しそうにそう語る。正直言えば、ついさっきあの前線の惨状を目の当たりにした手前、あまり焼夷弾を使うことに乗り気ではない。が、一方であの兵士からの感謝の言葉も忘れられない。あの人を死なせないためにも、我々は頑張らねば。
そう思いつつ我々はその後、三日ほどをこの要塞内で過ごした。その間、サウッコ内で過ごすことを覚悟していたが、意外にもあの要塞司令官殿の計らいで要塞内に部屋を与えられる。といっても、ここは他所だから気が抜けない。
塹壕では意外にも感謝の言葉を聞いたが、要塞内ではやはり空軍嫌いが蔓延している。部屋は与えられたものの、食事はさすがにサウッコに積まれたものを摂る。ここの食糧を消費するわけにはいかない。そんな見えない圧と遠慮で、やや疲弊していった。
が、そんな生活も四日目に入る。私は焼夷弾投下時に用いる計算式の改良版を作成し、反復計算を続ける日々を送っていた。艦の速力や高度を仮定し、正確に爆撃タイミングと艦の方向を割り出すための計算。これを値を変えて、また行う。
砲撃よりも、爆撃はタイミングが重要だ。特に自走砲車のように集中点攻撃だと、一瞬のずれが大きな誤差を生む。だから、可能な限り早く計算を終えなくてはならない。反復する意味は、ここにある。
と言いつつ、今日中に敵が来なければ王都に帰還することになっていた。が、意外なほど早く敵は現れる。
「敵、三個大隊、来襲!」
前回の三倍もの敵が現れたとの報が、我が26人乗員の元に届いた。要塞の一室に集まった我々は、艦長からの命を聞く。
「総員、乗艦せよ」
三倍の敵ということは、前回の比ではないほどの苛烈な戦いが待っていることになる。ということは、自走砲車は一台ではないはずだ。だが、我々とて二度目の戦闘だけに、前回以上に戦うことができる。
そう意気込んで、私はドックへと早足で向かう。ところがだ、思わぬ事態が待ち構えていた。
サウッコのゴンドラ入り口に、兵士が立ちはだかっていたのだ。
「なんだって! 出撃許可が下りないだと!?」
副長の叫び声が聞こえてくる。私は耳を疑う。ここは戦場で、我々は敵を撃つためにここにいる。そして、撃つべき敵が国境のカレリーア峠を越えようとしている。
なのに、どうして爆撃艦の出撃が許可されないというのか。
「要塞司令官からの命令です。どうか、ご自重ください」
見張りの兵士らも、この命令に決して腹落ちしているわけではなさそうだ。が、上官の命令が絶対の軍隊では、逆らうわけにはいかない。
「なんだって俺たちが出撃できねえんだ!」
全員が部屋に戻ると、キヴェコスキ兵曹長の叫ぶ声が聞こえてくる。
「おい、今は戦闘前だ、騒ぐな」
「その戦闘に、どうして俺たちが参加できないんです! 砲長、おかしいとは思いませんか!?」
その問いに対し、敢えて砲長は口をつぐむ。ここは陸軍の要塞内であり、その司令官が出撃を許可していない。で、ある以上、それに異を唱えるのは、例え空軍であっても許されない行為だ。
「ともかく、粘り強く交渉するしかない。場合によっては、カンニスト中将の名を使って許可を引き出すしかないだろうな」
そう言いながら、艦長と副長は司令官室へと向かう。残された我々は、部屋にこもって朗報を待つ。
が、一向に二人が戻ってくる気配がない。そうこうしているうちに、砲撃音が響いてきた。
ズーンという、腹に響く音。あれは、大口径の要塞砲だ。立て続けに3発、発射音が響く。そういえば、ここの要塞砲は3門だったな。
「あの音が響くということは、すでに敵は峠を越えたな」
砲長がそう呟く。が、我々には今、それを援護する力がない。ただここで手をこまねいて待つしか方法がない。
「そういえば砲長」
と、私はふと、砲長に尋ねる。
「なんだ」
「出撃前に、戦場を見ておきたいと思います。今、攻撃を続けている要塞砲のある場所に行きませんか?」
「なんだと!?」
この突拍子もない提案に、砲長は怪訝な顔で私を睨みつけてくる。
「カルヒネン曹長、無許可で要塞砲に近づくことは、軍規違反だぞ」
「いえ、無許可ではありません。現に我々は司令官閣下より、要塞砲の視察許可が下りてますし」
そう、つい昨日のことだが、塹壕に続いて要塞砲の視察提案がアンティラ准将閣下よりなされた。例の塹壕視察もそうだが、我々は空軍とは違うのだと見せつけたいのだろう。そういう意図での視察提案だったため、保留していた。が、それがまだ有効なままだ。
「だがな曹長、あれは平時の時の許可であって、今は戦時だ。どう考えても無理な話ではないか」
「いえ、准将閣下からの視察許可は、平時か戦時かを限定しておりません。ましてや我々は共に戦う同志です。理由があって立ち入るのですから、なおのこと問題ないのではありませんか?」
と私が食い下がったので、砲長とともに要塞砲のある区画へと向かった。
無論、入り口で兵士に拒まれた。が、准将閣下自らが出した許可であること、そしてサウッコの爆撃精度を上げるために事前に戦場を知ることの有益さを解いたら、渋々ながら通してくれた。こうして二人は二番砲塔へと足を踏み入れる。
「指揮所より、左3.2、上方4.3!」
ちょうど砲撃室では、まさに弾着補正が行われているところだった。戦艦ヴェテヒネンのよりも大きな砲身の尾栓が閉じられて、次の射撃が行われるところだった。
ドーンという雷のような音が、この閉じられた空間内に響く。すぐに尾栓が開けられ、中の火薬カスが取り除かれる。その状態で、砲弾が装填される。
が、違和感を覚えたのはここからだ。遅延信管を持たない砲弾だから、先に砲弾を入れることには何ら問題はない。が、続いて火薬袋がポンポンと突っ込まれることには、大いなる違和感を覚える。
(あれ、誰が袋数を指示したんだ?)
まだ、敵は遠い。だから、最初から最大量を装填しただけなのかと、私はそう解釈する。が、そんな解釈では到底説明できない事態が起こる。
さっきから誰一人、計算尺を動かしてはいない。ただじっと尾栓を閉じて、何か待っている。この光景には、さすがの私もおかしいと思い始めていた。
そしてそんな私の違和感が決定的になる。電話が鳴り響き、それを取った兵士がしばらく電話の先に聞き入ると、ひと言、こう叫ぶ。
「指揮所より、右4.2、上方1.2!」
おそらくこれは、先ほどからの相対角度を指示しているのだと思う。つまり先の砲撃よりも、右に4.2度、上へ1.2度動かせと言っているのだろう。
が、どうしてそれが、電話から指示されているんだ? 砲撃を行ってるのはここであり、電話でなければ会話できないほど離れた誰かには務まらない。
こんな砲撃をしていたら、当たるものも当たらないじゃないか。
この時点で私は、戦場の事前視察のことなどすっかり忘れていた。




