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45話 開演

「スミマセン。私、刃物を持つ事を禁じられておりまして・・・潰したり、へし折る事しか出来ないのです。それと・・・まだ殺めてしまってはいけないそうなので・・・端の方からゆっくり潰させて頂く事になります。ですので・・・死んでしまわれないよう、よろしくお願いします」


 ・・・痛みで冷静さを取り戻せたぜ・・・。そうだよ、アイツは何ら真実など語らない!嘘を嘘で固め倒すヤツだ!危うく女神のペースに乗せられる所だった・・・。

 恐らく、この女も含め竜飼いどもは何らかの嘘を吹き込まれ集められたのだろう。

 オレが熱くなってはダメだ!仲間を信じて何とかして女神に直接会って問いたださなけりゃならない!


「・・・あの・・・聞いて・・下さってますか?」


 オレの脚をへし折った女は、細い躰の割に豊満な胸の谷間にメイスを抱え直し、モジモジと喋った。ベールの上には黄緑色のガラの悪そうな顔つきの竜が乗っている。そいつと目があった。


「よう!オレぁ、サタナってもんだぜ!オレのスケ、つえぇだろ!?コイツな“ミートチョッパー”なんてあだ名がついててよ、生き物ぐちゃぐちゃに潰すのが大好きなんだ。そんでよ、あんまりにも性癖歪んでんから街をほっぽり出された事があんだぜ!最高だろ?

 あっちの女もそうみてぇだけどよ、オレぁ、竜飼いでオツムがマトモなヤツって見たことねえな。ま、それぞれ相性でくっついてんだけどな!ちなみにな、あっちのキャンちん、ホントはアス・・・」


「アスモデだ」


「んだよ!オレが紹介してやろうと思ったのによ!まいいや。そうそう、オレのスケの棒きれよ、ギンギンでえれえ硬かったろ!?ブチ込まれたら直ぐに逝っちまうから“絶対絶命”って名前がついてんだ。せいぜい苦しんでくれや!って事で夜露死苦だゼ!!」


 ・・・見た目通りだ。お前絶対、人型の時リーゼントだろ!


「・・・そいつは、どうもご親切に。だけどな、此方にも1本、立派なメイスが自前で付いてるんでな、もう結構だ」


 オレのナニを指さして、セクハラ発言で言い返してやると、修道女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。両脇をキュッと締めメイスにすがると、ことさら胸が強調された。

 そんな会話の間にぐにゃりと曲がった脚が集めた黒い邪悪により“痛い”という感覚だけ残し元通りになっていた。


「おい!ルイから離れろ!!」


 セリセリが腕を大きく振りかぶり地面をえぐり飛ばして石つぶて・・・いや、岩つぶてをとばして攻撃を仕掛けた!


「セリ!待ってくれ!!こっちから手を出さないでくれ!!」

 「でも!・・・はっ!?」同時に強く後ろへ飛び退いた。間を置かずしてセリセリの居た場所へ無数の矢が降り注ぐ!!矢は地面に突き立たるとズシャッと崩れた。砂・・・の矢!?

 バランスを崩されていたみたいだが、どうやら狙いは外れなかったみたいだ。修道女の辺りに岩が積み重なり小高い丘のようになっている。流石はセリだが奴らは潰されていないようだ。何故なら中からヒトの気配を二つ、感じるからだ。

 カラカラと小石がこぼれ落ち、岩の隙間から金色の光が漏れたかと思うと凄い勢いで四方へ飛び散り、その中から“リーゼントに短ランのボンタン小僧”がポケットに手を突っ込んで蟹股歩きで出てきた!コイツ、多分・・・


「・・・テメェ!アッブネエだろーが!!ああん??うすらデカいネェチャンよ!!テメェはカンケーネエからぶっ殺してやったっていいんだぜ!?おお?コラ!」


 そいつはナナメ45度の角度でセリに絡んできた。やっぱりサタナだったか。

 「ぶっ殺す」・・・か。確かに狙いはオレだけだ。だが此処までついて来てくれたコイツらには、それなりの覚悟がある。それにな!殺れるものなら殺ってみろってもんだ!!お前らじゃ到底無理だぜ!!


「サンキューな!!あんちゃん!オレの女、護ってくれて助かったぜ!」


 うしろに、修道女とサタナをセリの攻撃から防いだヤツがいた。そいつに向かってきちんと頭を下げてお辞儀する。ふ~ん、ヤンキー君、一応礼儀は持ち合わせているみたいだ。こいつぁ、いよいよ一昔前の不良だな。嫌いじゃないぜ?そういうやつ。


「・・・あんちゃんじゃない。オンナだ」


 そいつは厚い白鎧に身を包んだ重騎士だったが、どうやらオンナだそうだ。隙間のない鎧だし性別までは判らんよな。判るのは連れの竜もまた、ゴツゴツと溶岩のような鱗を纏っていて明らかに支援型の奴らだということ位か・・・って事は砂の矢を放ったヤツはコイツじゃないな!もう一人居るはずなんだが見当たらない。物陰からの狙撃か・・・。


「んナァ!!リン!!おい、リン!!何やってんだべよ!!ちゃんとルイを守れっての!!

・・・リン??・・・・リン!!

おい!ルイ!リンがおかしいんだナァ!!!!なぁ~んか変だ!!」


「なに!?・・・リン!!おい!どうした!?しっかりしろ!!」


 そういや、さっきからリンが静かだ。頭がボゥっとしていて気がつかなかったぜ。

 リンの顔をわしづかみにしてのぞき込むと目が虚ろになっていて何処も見てはいない。そこでオレはリンの頬を思い切り引っ叩いてやった!

 ・・・はずなのにオレの頬がめちゃくちゃ痛ぇ!!なんで!?


「リフレクト」


 リンの・・・声じゃない!!これは!!聞き覚えがあるぜ!!

 あの声!間違いなく女神のやろうに違いない!!またリンを乗っ取りやがった!!


「おい!女神!!アンタ卑怯だろ!乗っ取りじゃなく今度こそ姿を見せろ!!言いてぇ事も聞きてぇ事も山ほどあんだよ!!」


 “乗っ取り女神”は聞く耳を持たずこちらを気にもしないでフイ~と神殿上部、祭壇の方へと向かった。


「待て!!」


 追いかけようとするオレ達に槍と重騎士のランスが襲いかかる。モモの金平糖が機雷のように漂っているために大きく躱す事はせず最少で逃げる。その先々を砂の矢が狙ってくるが、テンポが悪い。むしろ機雷に命中し、オレ達の動ける範囲が広がった。


「はっ!連携がなってねぇな!!にわか竜飼いどもめ、楽勝だゼ!!走り抜けてリンを追うぞ!!」


 モモの金平糖が()()された為にリンを追いやすくなった。右に左に物理攻撃を避けながらオレ達も祭壇を目指す。

 神殿の前には、すでに多くの参拝者とギャラリーが集まっていたが、ギルドの腕章を付けた係員によりロープが引かれ近づけないようになっていた。

 竜飼いどもが派手に攻撃してくる度に歓声が上がり、セリセリも負けじと弓矢で応戦するが、ことごとく竜どもに逸らされ、大きな拍手が送られる。

 “こりゃあ、いよいよ見世物感がスゲえな”

モモがギャラリーを護るべく(オレ達を閉じ込める為、か?)結界を張る舞を踊り始めた頃、オレは祭壇へと続く階段に辿り着き一歩、足をかけた。


「ゴッバアッ!!」


 まるで地雷を踏んだかのように一段目の階段が砂柱を立てて吹き飛ぶ。


「グアアアッッ!!」


 激痛に身をよじり痛みの元を押さえようとするが、ない!オレの・・・オレの右脚の太ももから下が無くなっている!!


「ルイーーッッ!!」


 竜飼いどもと応戦中のセリセリが叫ぶが奴らに手一杯でなかなか傍に来られない。


「クッソ!コイツら鬱陶しいな!待ってて!!今、そっちに・・・!」

「ダメだ!!コッチに来んな!!」

「でも、でも!!」

「オイデーー!!セリを!セリを護れーーっっ!!」

「当ったり前ナァ!!」


 ・・・“脚が無い”という感覚が無い。確かにそこに脚の存在を感じるのだ!あまりにも突然の事にびっくりして血も噴き出ない程失した認識が無いのか!?

 若しや幻覚攻撃!・・・いや、そんなはずは無い。何故なら、「ドチャ」と音を立てオレの右脚が落ちて来たからだ。その脚は瞬時にメイスでひき肉にされてしまったが・・・!

 ようやく何か噴き出して来たと思えばそれは血では無く、どす黒い煤が溢れ出し脚の形を成していった。その様が自分の躰ながら気持ちが悪く、二度、胃液を戻してしまう。オレの躰・・・もしかすると、中身は既に魔王であって、オレという皮が張り付いているだけになっているのかもしれない・・・!!もう、あまり時間がない、か・・・。

 クチ回りを拭い立ち上がろうとすると「バンッ」と機雷が炸裂し右肩が爆ぜ、またも歓声が上がる。クソ・・・漂ってた機雷が近づいていたことに気がつかなかったか!

 肩から煤を撒き散らしながら、勢いでギャラリー付近まで転げていってしまった。


「え・・・!?アナタは!昨日の!?」

「あ!!おじちゃんだ!僕を助けてくれたおじちゃんだ!!」


 吹き飛んだオレをなじるギャラリーの中に聞き覚えのある親子の声があった。


「なんでおじちゃんやられてるの?おじちゃんはいいひとなのに!おじちゃんはスゴいヒトなのに!なんで??おじちゃんをいじめないで!!」

「くうぅ、いってぇなっ!!・・・ん?君は昨日のボーズか!ここは危ないぞ!おじちゃん、訳あってな、戦わなきゃ・・・」

「ダメよ!!このヒトのそばに行っちゃ!!このヒトは・・・悪いヒトだったのよ!!」


 ものすごく汚い物を見るような冷たい眼差しでオレを見下すと、子供を抱き上げ足早に群集の奥へと逃げていった。

 言葉無く見送るオレと親子の間にユラリと殺気が割って入り、全身に鳥肌が立つ。強くのけぞった時には既にオレは宙を舞っていた。

“このまま落下するのは危ない”勘が告げるままに左手に「爆符」を貼り付け強く殴る。


「ッダァ~ン!!」


爆発により落下の軌道を変えたのと同時に、オレの右脚を千切っていった砂柱が目の前に立つ。あのまま落ちていたら・・・!!

 爆符の衝撃により左手が無くなっていたが既に煤の手に置き換わっている。もしあのまま落ちていたなら砂柱に喰われていたと思えば安いもんだが、起き上がる暇もなく二本、三本と砂柱が立つ。転げ回って上手く避けたが、そのうちの一本にギルドの係員が巻き込まれ、吹き飛んだ。何処から攻撃を?姿が見えない!

 このまま無関係なギャラリーの傍で戦うのはマズいな。殺気の主の正体も見極めなければ!今わかっていることは攻撃間隔が速い事。始めは遠距離からかと思ったがオレの移動とヤツの攻撃にタイムラグが無い事から案外近くにいるのだろうと推察するぜ!それと、オレの傍で殺気をだしたのは間違いだったな!!落ち着けば気配で追える!


「そこだっっ!!」


「すこん」と音がして標的にヒット!


「いてっ!」


 ははっ!見つけたぜ!コイツ、見えないんじゃ無い、見えづらかったんだ!魔法なのか!?・・・いや、違う!!迷彩模様の竜と同化していやがったんだ!


「クソのクセによく判ったね。僕のとっておきだったのに!・・・ってか、何このハートの付いてる・・・管?が3つ??武器じゃ無いみたいだけど・・・」


 そりゃあまあ、武器じゃあないわな。オレは女神に直接会うまでは面と向かって戦いたくないの。敵意丸出しで機嫌を損ねたくはないんだよ!・・・ってか、よく見りゃ子供じゃねぇか?コイツ!


「ふふっ。、そいつはな、痛いアベックが使う“カップルストロー”って代物だ。リンのヤツがどうしても使いたいって・・・んなこたぁどうでもいいか。それよかな?目上のヒトに対して「クソ」とはなんだ。いかんよ!?そういうの。居場所はな、気配だ。殺気がさっきからだだ漏れだぜ!?お子さま」


「ウッザ!!」


 スゲえ睨みつけてる・・・。四人目の竜飼いはガキか・・・やりづらいな。

 なんて思っていると、竜が砂を吸い込み始め「ぷっ」と吐き出す。それは細い矢となりオレの足の甲に突き刺さり、そして崩れた。これは、からかってる場合じゃあないな!


「逃げるな!!おっさん!!」


 痛みを押さえてその場を逃げさり祭壇を目指す。確か七人の~、と言っていたからあと三人も居やがるのか・・・!兎に角リンを取り戻さなければ話にならない。もう爆破の奇襲はないだろうし、他はセリ達が押さえてくれている。一気に追うぜ!!





 

 





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