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第23話 家族

フローとの距離は相変わらずだ。

エイリッヒが時折様子を見に訪れる。

今日もルーファスと中庭でフローの淹れた紅茶でティータイムをしている。

もちろん、今日の分の執務は終わらせたよ!

和やかな雰囲気にルーベルトが溜息を吐いた。

穏やかな時間はゆっくりと過ぎていき、他愛無い話やフローの昔の話でドキドキしたりしてティータイムは終わった。


今は夕飯になるまで自室で読書をしている。

「フローって出自が問題あって捻くれているだけでやっぱりいい人なんじゃないかな」

『真の悪人はいつでも善の者を演じられる』

「じゃあ、その逆で善なる人は悪の人を演じられるね。ルーベルトみたいに」

僕がふにゃふにゃ締まりのない顔で微笑むとルーベルトがまた溜息を吐いた。

今読んでいるのは市井で人気の作品だ。

何も持たなかった両親すら居ない貧民街の少年がある日、偶然お城から抜け出した王子様と出会いそっくりなことを利用して王子様に付け込んで這い上がろうとするも、善人の王子様に接しているうちに感化されてそれまでの自分を恥じて王子様と対等な友人になるために奮闘する話だ。

でも、このお話のラストは少年が攻めて来た隣国の兵士相手に王子様の身代わりになって殺されてしまうんだ。

それにより、何もなかった少年は王子様だけじゃなくて貧民街出身ということで王子様と接することに眉を顰められていた王家の関係者達からも感謝されて、王子様と二人でいる銅像を街の中心の広場に建てられんだ。

…少年は、こんなこと望んでいない気もするけど。

ただただ、大切な友人を守りたかっただけじゃないんだろうか?

王子様が死にゆく少年を抱き締めて泣いている挿絵が印象的だ。

「ルーベルト。ルーベルトは僕がいなくなったら悲しんでくれる?」

『ふん。清々する』

「このお話が悲劇でも人気があるのは二人の友情が人の心に何かを与えたからなんだよ。多分」

『つまり?』

「僕とルーベルトも誰かに何かしらの影響を与えているってこと!サシャ嬢とかルーファスとかエイリッヒとかフローとか。ルーベルトがルーベルトのままならお互いの関係性を変えられなかった。僕は、僕がルーベルトになれて良かったよ。不謹慎だけどね!」

また、ふふふと笑って本の表紙を撫でる。

僕は殺されるならルーベルトに殺されるのがいいなぁ、なんて思いながらルーベルトが悲しまないように精一杯生きようと思った。

ルーベルトの身体を乗っ取っていて、ルーベルトの幸せを願うのは少し違った気がするけど、これが僕の今の気持ち。

大切だと思える人を守れる強さが欲しい。

そのために僕ができること。

ルーベルトと一緒にルーベルトの大切な民と領地を守ること。

僕が大切だと思う人を信じ抜く信念を貫くこと。

決意を決めて両手を握り締めて天に伸ばす。

今の僕じゃ役不足かもしれないけれど、頑張ろう!

その時、僕のお腹が鳴るのと同時に夕飯が出来たとノックと共に迎えが来てくれた。

今日の晩ご飯はなにかな!料理長の作るご飯はなんでも美味しいから毎日が楽しい!

「ルーベルト、楽しみだね」

『なんでもいいさ。栄養が充分に摂れれば』

「ルーベルトは面白みがないなぁ。好きな食べ物とかないの」

扉に向かいながら話すと、ルーベルトが一拍置いて呟いた。

『母様の作ったパイ』

「…そっか」

なんだか申し訳ない気持ちになりながら扉を開けた。

僕にはルーベルトのご家族の記憶なんてないけれど、ルーベルトが守りたいと思う民と領地を作り上げて来た人達だ。

僕は、ルーベルトのご家族の想いも大切にしたいと思った。


それはそれとして、晩ご飯は「僕」の好物とルーファスの好物が並んでいて、ルーファスと美味しいねとにこにこしながら食べていった。

ルーベルトのご家族はもういないけど、新しく出来た義弟のルーファスともちゃんと絆を結びたい。

血が繋がっているだけが家族じゃないって信じたいから。

僕も、ルーベルトの家族でいいんだよね?ルーベルト。

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