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第12話 ルーベルトと僕

その晩は月の綺麗な夜だった。

「今更だけど僕ってなんなんだろう?」

『本当に今更だな』

ルーベルトが呆れて溜め息を吐く。

『急に現れ私の体を好き勝手使う不届者なのは間違いないがな』

「そう言わないでよ、ルーベルト」

僕はベッドの上で枕を抱えながらごろりと転がった。

『そのような子供のような真似をするな。仮にも公爵家の者の体だぞ。威厳と尊厳を持て』

「うぅん。そういうの苦手なんだよねぇ」

またごろりと体を転がせばルーベルトから怒りの声が鳴り響く。

「ごめんって」

大人しく枕を頭の下に戻して寝る体勢を整える。

でも、本当に僕ってなんなんだろう?

なんでルーベルトの体にいるんだろう?

なんのために存在しているんだろう?

僕は自分のことながら分からないことだらけだと今更ながらに痛感した。

でも、ルーベルトのことは好きだ。

ルーベルトが他人からなかなか理解されない人でもその優しさを僕は知っている。

エイリッヒのことで深く悲しんでいることも、ルーファスのことをなんだかんだで可愛がっていることも知っているのだ。

そこで閉じていた瞼をパチリと開いた。

「決めたよ!ルーベルト!」

『嫌な予感しかないが、何をだ?』

「きっと僕がルーベルトの体にいるのはルーベルトの善意の悪逆を正しく民に知ってもらうためなんだと思うんだ!」

『……つまりは?』

「ルーベルトがいい人だってこと、みんなに教えてみせるよ!」

『やめろ!』

「なんでさ。ルーベルトも悪逆貴族のルーベルト・トランドラッドなんて呼ばれるより善意が伝わった方が民に好かれると思うよ」

『別に民に好かれたくて政策をしている訳ではない。好きに呼ばせればいい』

「でも僕はルーベルトのこと、みんなに好きになってほしいな」

『必要ない』

ぴしゃりと言い切られてはこれ以上押し切れない。

僕はルーベルトの意地っ張りと心の中で舌を出した。

けれど繋がっているからすぐにバレてまた怒られた。

まったく、ルーベルトの意地っ張りの怒りん坊。

ルーベルトの怒鳴り声を子守唄に僕は健やかに寝た。


翌日は清々しい青空が広がっていた。

ルーベルトの指示を聞きながら執務をこなし、ルーファスと昼食をとり、午後からまた執務に戻る。

ルーベルトは幼き公爵として完璧だと思う。

でも、誰からも褒められない。

僕はそれが悲しくて寂しい。

唯一、ルーファスはルーベルトを正しく認識し尊敬してくれていることが嬉しい。

この調子でルーベルトをもっと理解してくれる人を僕が作らなくちゃ。

いつ消えるか分からない僕がルーベルトを正しき人として民に示さなくちゃ。

一種の強引な好意にルーベルトはまた苦言を呈したけれど、今のルーベルトは僕だ。

僕がルーベルトとして民に好かれるように頑張ってみよう。


外の小鳥の合唱がいつの間にか止まっていて、平和的な外の様子が静かなものになっていることには気付かなかった。

これが僕の道に暗雲を示すものなのか、僕にはまだ分からないけれど、僕は僕なりにルーベルトを助けたいと確かに思った。

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