金剛不壊
遡ること数分前――
「真っ赤だな。目の前がマジで真っ赤になってる
――――――『金剛不壊』、『ヒートシステム』」
<Armor Change>
<アークスが『ヒートシステム』を発動!>
<熱交換によりMPが回復した!>
<熱交換によりMPが回復した!>
<熱交換によりMPが回復した!>
…………
<熱交換によりMPが回復した!>
どうやら、火属性のみのスキルらしいな。まともに食らったのにダメージを食らっていない。ヒートシステムのお陰だ。
しかも、奴ら倒したことも確認せずツユの方を向いている。あまりにも隙だらけだ。
「回転割り」
「ひぃっ!?」
「ごはっ!?」
「ぶへぇぇ!!」
この状況、そうだな、短歌でも詠んでみるか。
なんだかいい感じにアイデアも降りてきたし。
「ああ!?………て、てめぇ……?!」
「あ………ああ………!」
「燃ゆる火の、その陽炎に、照らされて。
――白き鎧は、ただ歩むのみ。
どうかな?ちょうどいい感じだと思ったんだけど。感想を聞かせてくれるかな?」
「て、て、てめぇ……なんでだよ、なんで死んでねぇんだよ!」
「え?いや、教える義理はないね。うん、間違いない、うん。
まあでも、一つ言うとするなら。
――全員まとめてかかってこい。俺は全員ぶっ倒すし、全員逃がす気はないからな?」
「こ、殺せ!このふざけたやつを殺してやれ!!」
号令を受けて、わらわらとやって来る。統制が全く取れておらず、バラバラに襲いかかってくる。
せっかくだからまともに受けてみるか。
「ウラァ!」
「死に晒せ!」
<パリィ!『千載一遇の時』発動!>
「なっ、体が……!?」
「兜割り」
「ぎゃあ?!」
「うわっ………」
「アックススイング」
体が反応して一人はパリィしてしまった。
でも一人の攻撃はまともに食らったはずなのにダメージになっていないぞ、すげぇ。
「泥濘奔流!」
「「「「どわぁぁぁ!!?」」」」
ほとんど泥濘奔流で吹き飛ばされてしまったようだ。
まあでも、何人かは躱しているから、まだ終わりじゃあないけど。
「クソ!ポイズンクロー!」
「デッドリークラッシュ!」
「おん?スキル食らってもダメージが入らない?」
「そんな馬鹿な!?」
「パワースイングスラッシュ!!」
「「ぎゃぁぁあ!!」」
名前からして毒状態にさせるスキルみたいだったが、ダメージは入らんわ、毒は無効化されるわ、散々だなあの二人。別にもうどうでもいいが。
「く、来るんじゃねえ!」
さて、ようやくあと一人だ。あいつを倒せば制圧完了だろう。
「トマレェ!!それ以上近づいてみろ!こいつをぶっ殺すぞ!」
「っ!!」
とうとうツユを人質にしやがった。困った、魔術を使っても先にやつがツユを殺すし、このまま走っても到底間に合わない。どうするか………。
悩んでいると、次の瞬間、ヤツの腕が斬り落とされた。
「………へっ?
あ、ああああ!!?お、俺の腕がぁぁあ!!」
「今だ!」
完全にあいつの意識が俺から外れた。今なら行ける!
「我が体の負荷を取り除け、『フロート』!!」
高く跳躍するのではなく、幅跳びの寸法で一気に攻撃範囲に入る!
そしてそのスキルを宣言する!
「セイクリッドアックス!!」
「ぐぁぁあ!!」
渾身の一撃を与え、完全にとどめを刺した。
ようやく、50人を倒した。流石に疲れた。どこから襲ってくるか分からなかったからな。いつの間にか見えなくなってて隙を伺っているのかと途中まで思っていた。
「ごめんな、ツユ。助けに来るのが遅れてしまって。あれ、まさか俺一人しか行けないとは思ってなかったんだよね………本当にすまなかった。」
「いいんです。また、助けてくださって………ありがとう、ございます………。」
「………うん、よかった。」
とにかく、間に合ってよかった。これで解決したな。
「まあ、聞かなければならんこともあるが。」
「?」
「手助けなんてしてなんのつもりだ?まだいるのはわかってるんだ、出てきたらどうだ?
『メスガキ赤ずきんちゃん』さんよ!」
俺がそう言うと、そいつは物陰から姿を表した。
さっき見た赤いフードを被った女が。
「むー………やっぱり気づいてたんだ、あたしのこと」
「そりゃさっきまでいた何人かの敵がいつまで立っても出てこないからな。後、最後のやつの手を斬り落としたところで流石に誰でも気がつく。
それで、なんで首を突っ込んできたんだ?」
「それは…………その…………えっと……………。」
だんまりとしてしまった。何も言ってくれないと困るのだが。もう一度聞こうとして口を開いたその時、
「あー、少しいいかな?私から説明させてもらっても。」
白い神官服を着た男が、さっきの物陰からでてきた。
歳は40ぐらいだろうか。
「お、おじさん……!」
「………あんた誰だ?こいつの連れってことか?」
「私はキョウビっていうんだ。見ての通り神官さ。
その子の親戚でもある。ほら、自己紹介しなよ」
「…………アケビです。盗賊、です………」
「アークスだ。戦士で、使っているのは斧。」
「ツユです。魔術師やってます。」
「うん、よろしくね。」
「………よろしく、お願い、します………。」
《【速報】メスガキ赤ずきんちゃん、おじさんと一緒にゲームしてた》
《アケビちゃんか、覚えたぞ》
《キョウビさんってまさか格ゲー界の伝説の?》
《たしかに面影あるなとは思ってたけどさ》
《まじかよ》
というか、初めて知ったな、名前。パーティ組まないとプレイヤーネームが見えないので、自己紹介がないと分からないのだ。
「ここじゃなんだし、街に戻って話をさせてくれないかな?飯は奢るからさ。」
「俺はまあ、いいが。ツユは?」
「私も大丈夫ですよ。」
「よし!じゃあ、戻りましょうか。」
「へ〜………コミュニケーション苦手だからキャラを作ってゲーム内で友達を作ろう………と?」
「うん、そういうこと、そういうこと。」
「逆効果じゃないか?割とメスガキって友達作りにくそうだからな」
「うん………でも、あの子、ものすごく上手かったんだよね………それで決まってしまった以上もうどうしょうもなくて………」
「大変だなあんたも。」
ファストラクタに着いて、俺は酒場でキョウビと話していた。ちなみにツユとアケビは街でショッピング中。打ち解けてくれるといいのだが………。
「あの子、幼稚園の頃から負けず嫌いで、前に出たがりなんだよねぇ。
それで、機動力が高くて、前衛で戦う盗賊が向いているんじゃないかと思ってね。私はそれを援護するための神官になったのだけれど、それはそれで大変でね。
あの子が片っ端から挑んでいくから大変だったよ……。
PKするわけでもないし、なにか素材は取ってるけど、いくらかお金もおいていくから恨まれていることはない。けれどウザがられることにはなってしまったんだよね………。」
「まあ、正直うざかったですよ。ただ、あの戦い方はかなり良かったですよ。離れたところにクナイで牽制して一気に近づいて連撃を叩き込む。あれは参考にしたいと思いましたね。」
「そうかい?いや〜あの戦い方は二人で考えて練習してたんだけど、そう言ってくれて嬉しいねぇ。」
一緒に練習してたって、この人ものすごく強いんじゃなかろうな?
<Side ツユ>
アークスさんに助けてもらいました、どうもツユです。いまは有名なメスガキ赤ずきんちゃん……もといアケビちゃんとスカイちゃんとともにお散歩中です。
アケビちゃんは銀髪ですが目の色はきれいなあけび色をしています。あと美少女です、こんなに可愛い子がいるなんて!
「あの………」
「なぁに?」
「その、蛇って……確かアークスさんの?」
「うん、名前はスカイ!」
『きしゃ!』
「私は、この子の言っていることはよくわかってないけど、私のことを気に入ってくれてることはわかるんだ。きっとアケビちゃんのことも気に入ってると思うよ!」
「ほんとかな……あたし、アークスさんのこと襲っちゃったから、嫌われてると思うな……」
うーん、それを言われるとそれもありそうなんだよね………でもこの子のことだから、もうあまり気にしてなさそうなんだよね、親だと思われるドラゴスネーカーを倒した私達に懐いているし。
「ねぇスカイちゃん、アケビちゃんに撫でてもらってもいいかな?」
「へっ?!」
『きしゃ!しゅるる………』
「はい!」
「はいって言われても……えっと、こ、こうかな……?」
『しゅるる〜………。』
「スカイちゃん、気持ちよさそう。嫌われてないみたいで、良かったね。」
「うん………かわいい、かも………。
ツユさん。あの、よかったら……ともだちに、なって、くれませんか……?」
「! いいよ!」
「おーい!」
「アークスさん!」
「あ………」
「仲良くなれたみたいで、良かったな。」
「……はい。」
「うんうん。じゃあ、提案しても良さそうだね。」
「?」
「アケビちゃん。俺らのパーティに、入ってくれないか?」
「!それ、は………でもあたし、アークスさんに……」
「それはもういいよ。別に被害は受けてないし、俺のこと助けてもらったし、ちょうど二人入れば4人パーティで名前とか決められるしな。」
「私もアケビちゃんとパーティ組みたい!」
『きしゃあ〜!』
「私も、アケビにはちょうどいいんじゃないかと思ってね。この二人がいい人なのは、もう知ってるからね。」
「………私も、みんなと……いっしょに遊びたい!」
「やった!」
「それじゃあパーティに招待して、申請を承諾してくれ。」
この日、俺はロストテクノロジーを手に入れて、新たな仲間を二人迎えた。
ああ、あともう一匹いたな。大事な仲間が。




