鍛冶屋の弟子、「イフリア」
前回のあらすじ
『死人の洞窟』攻略完了!
ファストラクタに戻ってきた。
まさかあそこまで楽勝になるとは思ってもなかったが。
「あ〜………なるほど、そうだったか。よりによって『死人の洞窟』だったか……」
「ボスモンスターも一撃で倒してきまして……」
《ボス一撃とか言ってることやばいんだよなぁ……》
《しかもそれが自力でできているわけだから処置なしなんだよなぁ………》
《ほんとやばい》
「いや、新たに覚えられているなら問題ない。成長しているわけだからな。ただまあ、回復魔術まで取得するとは思ってなかったが。
水と風も鍛えておくんだぞ?強化魔術はどの属性からも派生するからな。他の属性は私の杖を使うといい。そこまで強くなるわけではないからな。」
「もちろんです。そっか、どの属性でも派生するのか………。」
《あれ、盾もらってなくね?》
「あ、やっべ。忘れてた。」
《忘れてたんかい!w》
《いやまあ俺等も忘れてたよ。色々ありすぎた。》
「どうしよ、まだ開いて……る!良かった〜!」
いや完全に忘れてた。だって弟子入りしてたんだよ?そこからダンジョン攻略してきたんだよ?忘れるでしょ、そりゃ。忘れたらいかんけど。
「ごめん、遅くなっちまいました!」
「おう、大丈夫だ。どこかでくたばってるとかじゃなくてほんと良かったぜ!」
「早々くたばりませんよ、俺は。んで、盾は?」
「まあ焦るなって、今持ってこさせるからよ。
イフリア!オメェの客だぞ!持って来い!」
少し遠くから、はーいと元気な声が聞こえた。
《あれ?女性?》
《ショタだと思ってた》
《いやショタてw言い方w》
「あんたが私の武具を使ってくれてる人?!」
「あ、ああ。そうだ、俺はノームバトラーのアークスだ。君の名前は?」
「あたしイフリア!ドワーフの娘!15になるよ!」
「ついでにいうと、こいつの親やってるアグニスだ。親子共々よろしく頼むぜ。」
「アグニスとイフリア。覚えたよ。よろしくな。
盾をもらっても?」
「ああ!ちゃんと手入れしておいたぜ!」
《かわいい》
《あっ好きかも……》
早速何人かメロメロになっているがまあ仕方ないだろう。
身長が大体160cm。燃えるような真っ赤な髪を束ねてくくっており、目は青色に輝いている。
あとはまあ、胸もかなり大きい。サイズ?知らん。自分で見て考えろ。
「しっかし変わった武具だよなーこれも。盾はもう必須と言っていいほど使ってるけど。」
「へへっ、そうだろそうだろ〜?まあ、こんなもんくらいにしかスキルを付けられないんだけどな。」
「いやスキルつけられるだけですごいと思うが?」
《プレイヤーメイドの武具にはまだないよな?》
《ないない。専用のスキルが必要なんじゃないかって考察班が言ってた。》
「だめなんだ。どんな武具にもつけられるようにならないと、ドワーフとして一人前にはなれないんだ。」
なるほど。厳しい世界なんだな〜と思っていると、アグニスが手招きしていた。何かと思って聞いてみれば、
「あいつがその盾作ったときに俺がそういったんだ。ちなみに嘘だ。」
と。いやうそかい。
でもイフリアは完璧に信じているけど?そう言うと、
「ああ。向上心が芽生えてよかったんだが、こう、嘘だというのをいつ打ち明けるか迷っててな……」
いやさっさと言えよ、可哀想じゃないか、流石に?
「そうなんだよなぁ………いやでも、それで嫌われるのは嫌なんだよなぁ………」
自業自得だろそれは………と話していると、ようやく気づいたのか、イフリアはこちらに振り向いて、問いかけてきた。
「?親父もアークスさんも、何話してるんだ?」
「いや、なんでもねぇ!な、アークス!」
「ああ、そうだな。」
早く話してやれよ……と思いながら、そう答えた。
朝になり、冒険者ギルドに向かっていた。クエストを受けに行くのと、やっぱり仲間がほしくなったのだ。
そう上手く仲間ができるとは思わんが、ある程度は目星をつけられるのではないかと思って――
「なぁなぁ、パーティ入れなくて困ってんだろ?俺等が面倒見るから入れよ!」
「いいだろ?一人じゃなんもできねぇからな魔術師は!」
「…………あーあ、」
面倒事に巻き込まれた。しかも回避できんやつ。
《Side ツユ》
私はツユ。FAWをプレイしている一般女性です。
魔術師をしているのですが、先日PK集団に襲われてしまいましたが、危ないところをあの人に助けていただきました。
あの人、というのはアークス……またの名を『みたけさん』。私も見たことなかったのですが、配信者だったのです。助けてもらったあと、気分転換に動画鑑賞をしていたところ偶然にも見つけたのです。
独特のトークに、驚くような縛りプレイ。そして高い集中力を発揮するときのあの真剣な表情。
みるみるうちに虜になっていきました。
さて結局一日をみたけさんのアーカイブ視聴で潰したのですが……
FAWに戻ってくると、パーティから追放されていました。どうやら私が無事だったのは、戦っても勝てないと知っていたから、あのPKに体を売ったのだと。
必死に違うと言いましたが、結局信じてもらえませんでした。
どうしてそんなこと言われなければならないのだと、悲しくなりました。
しかも、元パーティメンバーに噂を流されて、パーティを組むことすらも難しくなりました。
そして体目当ての人たちにも迫られて……もう、嫌だと。このゲームは辞めようと、思っていたその時に。
「ごめん、お二人さん。そこ立たれると邪魔なんだけど?」
またあの方が、来てくれたのです。
《Side アークス》
「ごめん、お二人さん。そこ立たれると邪魔なんだけど?」
いや、本当に邪魔だったんだ。クエストが貼られている掲示板の前にいたから。
「あ?なんでお前に配慮しなきゃいけねぇんだよ?」
「こっちは今説得してんの、説得!」
「どう見ても絡んでるようにしか見えなかったが……?」
「はあ?そんなわけねえだろ!」
「つかお前こそ、こいつの体目当てなんだろ――
ガッ?!」
あ、しまった。つい腹パンしてしまった。
「何するんだてめぇ――ゴフッ!?」
あ、今度は手が滑ってカウンターしちまった。
いやていうかさ。
「人のこと、何だと思ってんだ?オイ。」
「ひっ……す、すみませんでしたぁ!!」
と言ってダッシュで逃げていった。いや逃げ足はやっ。謝る相手間違ってんだろ………。
「大丈夫?」
「あ……はい、大丈夫です。ありがとうございます。」
て、うん?この人、前にも会った。
「ツユちゃん?久しぶり。」
「はい、お久しぶりです。」
まさかまた会うとは思っていなかった。……なんだか不穏なのだが聞けるようなものではなさそうなのでスルーする。
「あのさ、ご飯食べに行かない?美味しい店知ってるんだけど、どうかな?」
「……はい、付いていきます。」
ファストラクタ中心部から少し離れた通り。
そこに店がある。
「こんなところに店があったんですね。」
「最初見つけたときはびっくりしたよ。本返しに行ったときにたまたま目に入って、それから何回も来てるんだ。パスタがマジでうまいんだよ、ほんとに。」
戸を開けて、店に入る。
店の中はカウンター席が6、四人席のテーブルが3つある程度。今日はテーブルに一組家族連れがいた。
「いらっしゃいませー、ご注文が決まり次第お呼びください。」
店員はウェイトレスの女性一人と店長のみ。
パスタとピザだけのシンプルなリストランテ、それがここ『Ombra Dell'albero』だ。
「あの、ミートソースをお願いします。」
「かしこまりました。あなたはいつも通りカルボナーラでいいですよね、少々お待ち下さい。」
「え、あの、今日はナポリタンの気分で――」
そのまま行ってしまった。ナポリタン食べたかったのに。
しょんぼりとしていると、ツユちゃんがふふっ、と笑った。
「お、ようやく笑ってくれたな。まあ笑ってほしいところじゃなかったけど。」
「あ、すみません、ちょっとおかしくて、つい……」
「いいよいいよ、いつもカルボナーラだけ頼んでる俺が悪い。」
「………カルボナーラ、好きなんですか?」
「うん、子供の頃からね。自分で時々ソースから作るくらいには。」
「すごいですね。自分で作るほどって、相当ですよ。」
「おまたせしました。ごゆっくりどうぞ。」
「あ、どうも。あれ?ナポリタンだ。」
「聞こえてたみたいですね、注文。」
「そうみたい。うん、やっぱりこれも美味しい!」
「そうですね、ミートソースもお肉たっぷりで美味しいです!」
「本当に?一口もらっていいかな?」
「はい、どうぞ。」
「もぐもぐ………うん、いいね。こういう肉たくさんのミートソース最高だな!」
「ナポリタンも一口もらっていいですか?」
「どうぞどうぞ!」
「もぐもぐ……麺が太くて、いい具合にソースと絡んでいて、とても美味しいです!」
気に入ってもらえてよかった。
《デートにしか見えないんだが、これいいのか?》
《配信忘れているのでは?》
《やべぇ俺もパスタ食いたい》
《草》
ちなみに私もカルボナーラ好きです(聞いてない)




