ゲームスタート
数々のゲーム会社がVRゲームを発表し、
『ゲーマー』や『動画配信者』が立派な職業として認知されるようになって二十年。
人々は好きなゲームを布教し合い、まさにゲームは娯楽の一つとしてなくてはならないものとなった。
中でもVRゲームは自分たちがそのままゲームの世界に入ったかのような臨場感を感じられるほどに技術が発達した結果、老若男女誰もが遊ぶものとして、その地位を確固たるものにした。
そんな中、今もなおビデオゲームを楽しむ配信者が一人。
「おっしゃあ!!勝ったぞぉぉお!!」
《おおおおおお!!》
《まじかよ》
《やりやがったこいつw》
《ついに完走かー》
「盾縛りでラスボスまでの攻略、完!!」
《88888》
《お疲れ様〜》
《本当にやべぇなこいつ……》
《年始めからだったろ》
《何なら他のゲームでもこういうのやってるからなこの人……w》
《そういえばそうかw》
彼の名は三岳 涼。動画配信者として、ゲームをプレイしその様子を配信している。リスナーからは『みたっさん』と呼ばれ、鬼畜な縛りプレイをも完走する根気強さを武器に、3年間活動してきた。
つい最近登録者四十万を突破した、ビデオゲーム配信者の中では有名な男である。
「さーてついに終わりましたよみなさん」
《長かったな〜》
《目を閉じればあの場面やこの場面が……出てこねぇ》
「いや出てこないんかいw
まあ絵面が地味オブ地味だったからね、しょうがないね」
《次は何をするんです?》
《前なんか回避禁止縛りとかいうのをやってた人いるけど、みたっさんもやるの?》
「いんや、このゲームは一旦終わりにして、新しいゲームをやろうと思ってるんだ」
《お、新作ですか?》
《発売されるのなんかあったけ?》
《いや特にないような………》
「やっぱり流行りには乗りたいよな。」
《お?》
《なんか始まったなw》
《茶番ですか?》
「VRMMO、やります」
そう言ってパッケージを持ってみせる。
《キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!》
《ついにみたっさんもVRゲームデビューか》
《あーたしかにこれがあったか!》
《FAWか、面白い》
FAW。先日発売された、『ビリード・エンターテインメント社』(以下ビリエン)が開発したVRMMORPG、『Fantastic・AnotherWorld』の略称である。
ビリエンのゲームはどれも高めの評価を受けており、このゲームにも期待がされていた。
無論高い評価を得ることに成功し、今話題の人気作である。
「まあキャラクリエイトの時間はほぼコメント見ないでやるけど、そこんところはよろしく。」
《おけまる》
《りょ》
《これは明日がたのしみですなぁ》
「何を言ってるんだ?これからやるぞ?」
《ファッ?!》
《まさかの徹夜で草》
《俺明日起きられるかな?》
「まあ一旦配信閉じるんですけれども。色々接続とか設定とかせんとあかんらしいんでね?
というわけでおつでした〜また後で!」
《乙》
《おつでした〜!》
《いつからはじまるんでしょ?》
配信が終わったことを確認し、諸々の設定を行う。
「いや〜緊張するな〜これ。扱ったことないものを見るとドキドキするなぁ……」
個人的に気になってはいたし、配信者仲間から設定方法は教えてもらったから、盾縛り攻略を完走した切りの良いところでやると決めていたのだ。
むしろ毎日配信していたのは早く終わらせてFAWをやりたいというところから来ていた。
さて、では早速だが配信開始だ。
「はい皆さん、みたけのゲームプレイ配信にようこそ。今回は宇宙からお送りしておりまーす」
《宇宙キター!》
《これゲーム選ぶ前の画面?めっちゃきれいやん》
《どんなプレイになるのか楽しみ》
「それではFAWを始めていきましょうか!
ゲームスタート!」
画面がグルグルと回転し、やがて表示が出てきた。
〈Fantastic・AnotherWorldの世界にようこそ!〉
『どうも、ナビゲーター二十二番、バータです。これからキャラクリエイトをしていただきます。』
蝶々の姿をしたナビゲーターが現れ、自己紹介をしてくれた。
『まずは、この世界でのあなたの名前を決めていただきます。』
名前は決めてある。名前と職業だけは。
「アークス、っと………」
《なるほど、みたけではない、と……》
《でもアークスって何から来てるのかな?》
『次に、種族を決めてもらいます。』
種族一覧には、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ノーム、獣人の5つがある。そしてその下にある、『ランダムルーレットを回す!』のボタン。
「ランダムルーレットっていうのは?」
『ランダムルーレットは種族、職業を決めるときに、新たな選択肢として一つの種族を開放できる機能です。ルーレットで選ばれた種族を選択しないのも可能です。あくまで可能性、ですから。』
《ほえー結構楽しそう》
《選べるならアリでは?》
「せっかくだし回してみますか。ポチッと!」
色々な種族名が高速で表示されては変わる。そして、選ばれたのは……
『ノームバトラー』
ノームでありながら、戦闘にも秀でた種族。
ただし、生産成功確率アップの効果がノームより低い。
「お、あたりでは?これにします」
『はい、ノームバトラーですね。次に、職業の選択ですが、ノームバトラーの場合戦士固定になります。』
「武器種は選べる?」
『はい。直剣、大剣、大槍、斧、大斧、棍棒が選べます』
「斧でお願いします」
《なるほど、種族によって変わるのか》
《エルフとか魔術師固定な感じする》
『了解しました。最後に、キャラクターの見た目を作っていただこうと思いますが、リアルモジュール使用でよろしいですか?』
「はい、それでお願いします」
髪の色を茶髪に変え、眼の色を赤色に変えた。
『これで設定は完了です。それでは、良きFAWライフを!』
「というわけではじまりました」
《いよいよやな~》
《動きはどうなん?》
「あまり現実と変わらない感じだな。ちょっと視点が低いかな?って思うくらい」
《ノーム選んだ友達もそんなこと言ってたわ》
「とりあえずは探索と行きましょうか。」
スポーンしたのは『はじめの村』という村だった。この近くの森から、街へと行けるらしい。
村人から聞いた話だ。
「でも森にはビッグスネークがいるから、気をつけてな。」
「ありがとうございます。気をつけて言ってきます。」
《ステータスどんな感じっすか?》
「お?気になる?じゃあ、『ステータス』」
――――――
名前:アークス
種族:ノームバトラー
職業:戦士(斧)
Lv1
HP:120/120 MP:50/50
STR:15
AGI:5
INT:10
MID:10
TEC:20
VIT:15
(ステータスポイント:残り0)
パッシブスキル
生産成功確率アップ(中)
斧系統強化
大地の加護
スキル
斧スキル
「兜割り」
大斧スキル
「アックスブレイク」
盾スキル
「シールドバッシュ」「ガードアップ」
採集
採掘
鍛冶
調合
岩石の武器
野性的咆哮
――――――
《割と強いのでは?》
《AGE低いのか》
《TEC高?!》
《岩石の武器と野性的咆哮はまじで何?》
《知らない子ですね》
《……俺のログにもないな、ヨシ!》
「意外とTEC高いんだな。
野性的咆哮はあれだよ、ウォークライとかそういうのじゃない?岩石の武器はまじでわからんな」
そんな雑談をしながら、村の出口にやってきた。
「おお、いよいよ冒険感出てきたな」
《森って何が出てくるん?》
《ラット、バタフライ、夜はビッグバットもでるな》
《お、出てきた》
「さてまずは盾を構えて、相手の攻撃を待つ、と」
大きなネズミのモンスター、ラット3匹が出てきた。
一匹の噛みつきを盾で受けて、斧で横薙ぎに切り裂く。
2匹目は体当たりを受け止めて叩きつけるように斧をぶち当てる。
3匹目は近づくところを狙って振り下ろした。
<経験値 12獲得>
<レベルアップしました! 1→2>
「よし、レベルも上がったな。」
《うまい》
《見ていて安心するバトルスタイル》
《3匹目よく当てたな》
「まあ得意な方だから、タイミングとか合わせるの。
レベルアップしたから能力値に上げとこう。今回はSTRで」
そして森の奥へと進んでいった。
――――――
名前:アークス
種族:ノームバトラー
職業:戦士(斧)
Lv1→2
HP:120/120 MP:50/50
STR:16
AGI:5
INT:10
MID:10
TEC:20
VIT:15
――――――