↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の終わりは歌  作者: 夜乃 凛
[Blank]

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/45

駒は4体か5体か

 リーリエは手紙を朗読した。その内容は、コーラル・ベインスと、セリア・フランティスによる質問で、ストライド家がアークル家の接収されるのは本当か、という内容だった。そして、もしそうだった場合、ストライド家に協力したいという申し出だった。


 正直、リーリエは戸惑った。コーラルとはほとんど接点がない。そして、セリアに至っては、仲が悪いと言えるだろう。そんな者たちがリーリエの味方になってくれる理由がわからなかった。

 フィゲルと両親は静かに聞いていた。フィゲルは腕を組んでいる。


「それだけか?」


 フィゲルが言った。手紙の内容はそれだけか、の意。


「はい」


「ふむ。少し考える」


 フィゲルは顎に手を添えて考え始めた。なかなか様になっている。リーリエと両親は、フィゲルが言葉を発するのを待った。行列に並んでいるような気分である。


「ベインス家とフランティス家が協力してくれるなら、確実に君には有利になる、リーリエ。手を結んでおいたほうが良い。相手になんらかの打算があるのかもしれないが、そんな細かいことは気にしていられない。領土を無くすよりマシだろう」


「でも……」


 リーリエは意見しようとした。


「私の言うことが間違っていると?」


 鋭い目つきでリーリエを捉えるフィゲル。それもまた、様になっていた。ドキドキしている場合ではないのに、リーリエの心拍数が上がる。


「いえ、とんでもありません。そうですね、ベインス家とフランティス家が味方をしてくれるなら……ミハエルにも勝てるかもしれないですな」


「残酷だが、負けることを覚悟しておいたほうがいい。これはそういう戦だ」


「え?でもベインス家とフランティス家が……」


「我がブリッツ、ストライド、それにベインスとフランティス、それを持ってしても危ないという話だ。四対一でも、ミハエルの相手をするのは難しい。奴は、相当に頭が切れる。勝てる見込みのない手段は取らないし、慎重で、冷酷だ。もう既に、ストライド家を丸め込む準備は整っているはずだ。そこで、どうすればいいと思います?」


「ええと……味方になってくれる家の連携を強める、でしょうか?」


「悪くない。しかし、違うな。やるべきことは、こちらの駒を増やすことだ」


「これ以上仲間になってくれる家があるのですか?」


「家系は無いかもしれない。しかし、平和主義で、接収など認めない、頑固な老人を知っている。リーリエ、君も見たことがあるはずだ」


「私も……どこで、ですか?」


「コンテスト会場だ。審査員がいただろう?審査員のリーダー、ゾルド・マキシムだ。彼の、この国に対する影響力は計り知れない。ただの善人ではない。裏社会に通じているとも言われている。だがしかし、平和主義者なのは間違いない」


「ああ、あのご老人ですね。あの方がそんな影響力を……しかし、味方をしてくれというのは、難しい申し出なのではありませんか?」


「その通りだ。何か大きな餌を与えるしかない。そうでなければ動かない。ゾルドは、芸術に対して大きな関心を寄せている。美術品、絵画、音楽……超一流の物を提供できれば、それと交換条件で、手を差し伸べてくれるかもしれない」


「なるほど。しかし、そのような物があるかどうか……」


 リーリエは俯いてしまった。それなりの美術品は家にあるが、超一流の物があるかというと、自信が無かった。

 一方、フィゲルの考えでは、問題解決の糸口があった。


「大きな餌が、我々のユニットに存在する」


「本当ですか!?」


「歌唱だ。セリア・フランティスの歌唱力。あの歌の力で、ゾルドの心を引っ張れるかもしれない。あの歌の力は計り知れない。リーリエ、君にもわかるはずだ」


「それは……はい。セリア嬢の歌は素晴らしいと思います」


 リーリエは悔しいながらも、現実を直視して言った。この判断の素早さは、評価されるべき言葉だった。セリアの事を敵視していながら、現実的な方法がそれしかないと判断し、即座に私情を切り捨てたからだ。


「コーラルに、ストライド家に出向いてもらうように手紙を出そう。当然、セリア嬢も一緒にだ。四家が集まり次第、話し合いを始めたほうが良いだろう。とにかく、セリア・フランティスがいなければ話にならない。リーリエ、一ついいか」


「なんでしょうか」


「諦めるな。最善を尽くす」


「ッ……!」


 リーリエは息を呑んだ。フィゲルの言葉。それのなんと心強いことか。なんと男らしいことか。セリアに対する敵対心など、吹き飛んでしまうほどだった。フィゲルは、自然に振る舞っているだけかもしれない。しかし、リーリエはこんな状況でも、彼のおかげで笑顔になれた。


「はい!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。