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悪役令嬢の終わりは歌  作者: 夜乃 凛
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24/45

わかっているけどさ

 壇上には既に、審査員四人がテーブルの前の椅子に座っている。リーダー格と見える老人は、落ちついていた。微動だにせず、頬杖をついている。

 決勝が始まる前の、ざわめきと静けさ。会場では、コーラルが暖かく、フィゲルが冷たく壇上を見上げていた。

 そして、パトリドも会場に辿り着いていた。周りの者たちの会話から、セリアが決勝に進出したことがわかった。それを知ったパトリドは、言い表せない感情に襲われた。

 感謝。その言葉が相応しかった。彼はセリアを全力で応援しようと誓った。そして、決勝が終わったら、必ず直接礼を言うのだと。



 着衣部屋で決勝への準備をしていたセリア達は、出来ることを全て終わらせていた。やはりドレスの染みは目立ってしまうが、セリアの容姿は美しいことに変わりはなかった。

 そろそろ、決勝戦が始まるだろう。


「二人共、ありがとう。私は必ず勝って戻ってくるから、見守っていてね」


「当然でございます」


 深く頭を下げるノイフ。それに続くソイル。その姿を見てセリアは、つくづく、恵まれているな、と感じた。

 仕えてくれる人間がいる。前世では考えられないことだったが、この世界では、それがまかり通っている。そして、セリアは仕えてもらう側の人間だ。だから、彼女はなんらかの形で恩返しをしたいと思っていた。まずは、目の前のコンテストに集中しなければならないが。


「お父様も、ノイフも、ソイルも応援してくれたけれど、ごめんね。譲れないの」


 セリアは目を伏して言った。

 わかっている。このままのドレスで出る。その結果は、わかっているのだ。

 だが、わかっていたとしても。


「セリア様……」


 心配そうにセリアを見つめるノイフ。

 ノイフは考えた。セリアの発言は、そう、負けという現実に歩いていくだけだということを理解している。美しさを決めるコンテストで、身嗜みがしっかりしていないなど、論外であることを、理解している。だが、ノイフは考えるのをやめた。


「セリア様、人生は一度きりでございます。そして、勇敢なセリア様には、必ず女神が微笑んでくれるでしょう。私はそう思います」


「ノイフったら」


 セリアは微笑んだ。つくづく、ノイフがいてくれて良かったと思う彼女。


「そろそろ時間かしら?私は勝つわ。勝てるかもしれないでしょ?やってみなきゃわかんないでしょ?」


 相手はリーリエ・ストライドである。フィゲルに気に入られ、美しい容姿を持った、決勝まで残った人物。

 黒服の男が、セリアを探すように歩いてきた。


「セリア嬢、もうすぐに決勝戦が始まります。セリア嬢の健闘をお祈りしております。おや?まだ準備は終わっていないのですか?」


 黒服の男はセリアのドレスの染みを見たのだ。それ故の発言だった。


「準備は終わりました」


「え?」


「終わったのです」


 セリアは悪魔のような微笑みを見せた。彼女の赤い瞳は魅惑的だ。


「そ、そうですか……では、壇上の前まで、お連れいたします」


「お願いします。ノイフ、ソイル、行ってくるわね」


「ご健闘を」


 ノイフ達は深く頭を下げた。



 リーリエ・ストライドは控室に居座っていた。壇上へと続く控室は二つあり、その片方の控室を使っている彼女。その部屋から、壇上に上がるのだ。セリアは反対側の控室から出てくるのだろうと予想したリーリエ。

 汚れたセリアのドレス。そして、それで勝負すると言ったセリア。本来、絶対的に有利な状況なのに、リーリエは謎の焦燥感に駆られていた。それは、セリアの持つ威圧感に起因するものだった。

 勝てるはず。

 負けないはず。勝って、自分のほうが優れていることを証明するのだ。負けて悔しそうにするセリアを嗤うのだ。フィゲルだって見ている。リーリエはフィゲルにアプローチするためにも、負ける気はなかった。


「たかがドレス一着に執着するなんて、馬鹿馬鹿しい」


 リーリエは呟いた。セリアなど、汚いドレスで惨めに負ければいいと彼女は思った。

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