戦闘
「………どう??」
「すごく、いいです………」
その後ティアラの為にメイド服を買ったカイ。
着替えは簡易テントの中でしてもらい、いまメイド服を着たティアラが出てきたところだ。
よく見る"メイド服"よりもフリルが少なめだが確かに男心を擽るなにかが確かにある!と思わせる程に、そしてティアラにピッタシなメイド服だった。
そのためカイはその姿にノックダウンしそうになっていた。
可愛すぎてお金を払いたくなるほどに……
「……こんな服、初めて……」
「気に入っては、くれたのかな??」
「………うん。カイも嬉しそうだし……」
「僕を基準にしないで……///」
そんなことを言われると恥ずかしくなる。
自分でも分かってはいたがそこまで態度に出ていて、それもティアラに言われることは本当に恥ずかしかった。
そんなことをしていると小高い丘からこっちを見ているモノがおり、カイはそんなことを気づいてもいないが、ティアラはすでに気づいていた。
「………ねぇ。モンスターと戦ったこと、ある??」
「やっぱりいるの!?」
「……ほら、あそこ……」
ティアラが指差す方を見てみると小高い丘の上に白く頭に長い耳をしたモンスターが……ウサギらしきモンスターがいた。
らしきというのは口からはみ出ている鋭い牙がカイの知っているウサギと違うからである。
「めちゃくちゃ凶暴そうなんだけど!?」
「……あれは"デスウサ"……あったら相手が死ぬと言われるから付けられた……」
「死ぬのッ!?」
「……大丈夫。あれくらいで死ぬのは、レベル1ぐらい……」
そんなレベルとか言われても……
と、慌てて自分のステイタスを確認してみると……
"レベル1"
「レベル1だけど、どうしようッ!!?」
「……それでも、大丈夫……私が、いる……」
すると狙ったかのようにデスウサが一気にこちらに駆け出してきた。
そのスピードは速く、戦闘になれば簡単に懐に入られる。
本当に大丈夫なの!?と心配するカイをよそに平然と、余裕な感じでデスウサを待つティアラ。
するとデスウサが大きく跳躍し、その自慢の大きく柔らかそうな脚をティアラに向けて飛んできた。
それに対してティアラは人差し指をデスウサに向けて
「"ライトニング"」
その一言でティアラの指先から電撃が放たれ、一直線にデスウサの身体を貫いた。「キュッ、キュキュウウウウッッ!!!」と叫びながら絶命したデスウサはそのまま地面ちに落ちた。
「……と、言う感じで…弱いから……」
「いや…僕、魔法持ってないけど……」
「…………」
「…………」
「……いざとなったら……助けるから……」
「もう!!頑張りますッ!!!!」
やっぱり実践しないといけないようだ。
同じ小高い丘の上からデスウサが顔を出してきた。
そして同じようにこっちに向かってくる。
今度はティアラより前に出て自分が戦うことにしたけど、こんなモンスターを倒す。ということをやったことも考えたこともないからどうすればいいのか本当に分からない。
そんなふうにあたふたしていると跳躍したデスウサがカイに向かって飛び蹴りを繰り出してくる。わけも分からずカイは持っていた短剣を振り回すが当たるわけなく、その脚がカイの胴体にクリーンヒットした。
勢いよく吹き飛ばされたカイ。
これは流石に予想外だったのかティアラも慌ててカイの元に駆け寄るが
「………イッタイなーッ!!!こんなに痛いのッ!!?」
「………大丈夫、なの…??」
「痛いよ!!本気で殴られたかと思うぐらいに痛いよ!!」
「…………………」
カイの身体をジロジロと見るティアラ。
本当に心配してくれているようだけど、別に大きな怪我はしてない。
そしてデスウサも手応えを感じていたのだろう。それでも立ち上がったカイを見て慌てふためいている。
今だ!と思いカイは駆け出してデスウサに向けて短剣を振り下ろした。
もちろん素人の動きでデスウサがなんの防御もしないわけがない。
その自慢の脚で短剣を受け取るつもりで振り上げた脚。
しかしまるでチーズが簡単に裂けていくかのように、短剣に触れた脚からデスウサの胴体が綺麗に真っ二つに斬られてしまったのだ。
「……えっ。こんな簡単………なの??」
まさかこんなにも綺麗にモンスターを切れるなんて思わなかったカイ。
それも想像していたようなグロテスクなこともなく、血も内蔵も溢れることもなく、まるで模型が切られたかのような綺麗な断面図になっていた。
「うわぁ……やっぱりエグいな……」
「………なに、これ……」
そのモンスターの死骸を見てティアラは困惑した。
普段なら血も内蔵も飛び出るのは当たり前。なのに、こんな風に留まるなんて現象は見たことがない。
もしかしてカイが持っている短剣に秘密があるのかと思い
「……ねぇ、それ…貸して……」
「いいけど、はいどうぞ」
持ってみたが普通の短剣………ではなかった。
とんでもなく切れ味がいいように付与されている短剣。
そしてそれが普通の鑑定などでは分かり得ないように偽装までされている。
ティアラの持つ"魔眼"はあらゆるモノの"真実"を見抜く。
だからカイがどんな存在なのかも分かってはいる。
勇者。本人は否定しているが話してくれた"天使"がバレないように隠して称号を入れたのだろう。
そしてMOVESと運気上昇スキル、そして願ったことを付与出来るスキルを持っているようだ。
さらにまだ隠しスキルもあるようだが、天使が隠したスキルはこうして何かのキッカケがないと分からない。
改めてカイという存在が面白いと感じたティアラは
「………クリーンヒットしやすくなってる……」
「えっ。クリーンヒットするとこんなふうになるの??」
「………なる。だからとても、珍しい……」
「へぇー」
これは真実を伝えないほうがいいと判断して誤魔化すことにした。
そしてカイは見事に誤魔化されるのだった。