森の女のコ
一体、この女のコは……なんだ??
真っ黒な髪が肩まであり、とても綺麗な顔でまつ毛も長い。
まるでお人形みたいなのに着てる服はボロボロでその布と呼べるか怪しいもの一枚しか着ていない。
そしてなによりその女のコの頭の周りがキラキラと何かが光っているのが見えている。
なんだアレは?と観察していると女のコが
「……なんで、いるの??」
「なんでって、この森にってこと??」
「……そう」
「えーと、迷子…みたいな、感じかな」
流石に異世界から転生してきました。とバカ正直には言えない。
こんな森だから迷子が一番かと嘘をついてしまった。
すると首を振りだした女のコはこう答えた。
「それは…ない。ここは求めないとこれない…から……」
「求めるって、何を??」
「みんな、違うから……だから、教えて……」
「違うって……そう言われても……」
何かを求めないと来れない場所。そしてみんな違う……
願いみたいなものがあれば来れる、的な場所なのかな??
いかにもファンタジーだなーとは思うけど、女のコがなにか嘘をついているとは思えないし……
「えぇーと、素直に…話したほうがいいかな?」
「………それ、聞く??」
首をかしげる女のコ。いや、全くその通りです。
でも、なんかこの子には嘘を付きたくない気がした。
だから包み隠さず話した。前世でどう死んで天使とあって転生したか。
きっと笑わられだろうと思いながら話だけど、表情を動かさずに最後まで聞いてくれた。
そして少し考え込む仕草をみせたあとに
「………なら、こっちでいう"稀人"だと思う」
「稀人??」
「勇者召喚じゃないなら……あとは、稀人にあたる」
「稀人ね……」
勇者召喚があるから信じてくれたようだ。
まぁ、その勇者とか他の稀人の監視をするためとは流石に言わなかったけど………
それでもここに来た経緯を話せただけでも女のコの警戒心?のようなものは解けたようで
「………でも、貴方は他の稀人より、もっと稀人……」
「なに、それ??」
「稀人より、稀人してる……から……」
「迷い人…じゃなくてだよね??」
この問いに対して首を傾ける女のコ。
なんか急に会話が成り立たなくなってきたなー
その稀人になんか含みがあるんだろうけど……
「………帰る……」
と、急に方向転換していくものだから稀人について聞くことを忘れて女のコを引き留めようと声をかけた。
「待って待って!もう暗くなるのに危ないよ!」
「……大丈夫。庭、だから……」
「森が庭って……」
やっぱり感覚がズレているのかなんとも不思議な女のコだ。
ぼぅーとしているわけではないけど、何を考えているのかイマイチ読みにくい感じだし……
「と、とにかく…せっかく会えたんだからもう少しお話出来ないかな?」
「………構わない……」
「あまりおもてなしするものがないけどね。あるのは水とまんじゅうぐらいだし」
そういって女のコに説明したスキル"MOVES"を使ってまんじゅうを買った。掌に現れたそれを女のコにあげようとしたら急に僕の手を掴んで
「………これ、なに……??」
「あ、あぁ。さっき言った歩いたポイントで手に入るまんじゅうだけど……」
「……食べ物……ッ!」
「う、うん。………食べる??」
(コクコク)
なんか今までの中で一番リアクションをした女のコ。
そんなにお腹が減っていたのかな??
手渡したまんじゅうをジィーと見つけたあとに小さな口を空けてかぶりついた。
するとさっきよりも表情が変わり驚きと幸せそうな表情をする女のコが
「……んんッ!…はぐぅ…ううんんん!!」
「感想は食べ終わってからでいいから」
口に咥えたまま喋ったらダメだよ。
小さな口を動かして食べ進め、全部食べ終わってもまだその表情は崩れずに
「……これは、美味!………まだ出せる!?」
「出せるけど…」「…出して!」
「食いついたね……」
まさかまんじゅうでこんなにも前のめりになるぐらいに食いつくなんて。
それから「出して」「出して」と言われる度にまんじゅうを出し続けたけど………
「……出して!」
「待って待って!…もうポイントがほとんどないんだよ……」
「ッ!!!??」
「そんな絶望した表情しなくても……」
漫画に出てくる"ガーン!!"というのが見えそうなぐらいに落ち込んでいる女のコ。
そこまで気に入ったなんて……この世界にはまんじゅう……は、ないだろうけど甘いものが少ないのかな??
「……ならポイント、貯めて」
「いやいや。もう暗くなったから明日じゃないと……」
「明日なら……ポイント貯めれる?」
「貯めれるけど……えっ、もしかして、付いてくるの??」
するとまたコクコクと首を縦に振るう女のコ。
……まさかまんじゅうで女のコが釣れたなんて……じゃなくて!!
「いやお母さんの所に帰りなよ!」
「……いない。親と呼べるのは…もういない……」
「ご、ごめん……」
「だから、付いて行く……まだ食べたい……」
この森が庭っていっていたけどこんな所を一人なんて……
そう考えると放っておけないと感じたカイは
「……分かったよ。じゃ一緒に行こう」
「うん」
「僕の名前は朝霧 海。カイでいいよ」
「………名前つけて……」
そんな、僕が名前を……そんなにセンスないんだけど……
でもそのキラキラした視線で見られると、嫌だなんて言えないし…
どうしようか……そんな簡単に決めれるものじゃないしな……
と、ぐちぐちと悩んでいるとフッと目に入った女のコの頭の上でキラキラ光るものを見て
「……ティアラ、みたいだな……」
「………ティアラ……うん、ティアラ……!」
あ、あれ…??もしかして名前…決まっちゃった!?
そんな!フッと言葉に出しただけだよ!!
「まっ、待って!!いいのそれで!?」
「…うん。気に入った……」
「そ、そう……」
本人がいいならいいけど……
そんな安直で言ってしまった名前で良かったのかな……