野宿
「………だれ……??」
深い森の、光もほとんど入らない場所にポツンと一人の女のコ。
何かを感じ取ったように誰もいない方角へ視線を向ける。
覇気もなく虚ろな瞳に微かに光が…、
「まだ、出れないのかよ……」
あれから半日。本当にこの方角で合っているのか迷うほどに未だに森の中にいる。
途中で休憩して水とまんじゅうで腹ごしらえをしながら歩き続けているが
「これは…今日は野宿になるかな……」
日も暮れてきて辺りが暗くなってきた。
これ以上進むと危ないと思いカイはとにかく開けた場所を探すことにした。
幸いにもすぐに開けた場所は見つけたので背負っていたバックを降ろして中から簡易テントを取り出した。
そのテントを広げようとすると自動的に広がりだして一人用のテントが完成した。
「あぁーキャンプで使うあのテントね〜」
よくテレビで見る簡単にテントが張れるやつだ。
まさかこんな所でお目にかかるとは思わなかった。
それでもなにもなく野宿よりはマシだ。
これがあれば寝るぶんには困らな……
「マットレス…ないのかよ……」
そう。テントの中を見れば、というか嫌な予感がしていたがあるのはテントだけで、眠るのに必要なマットレスがない。ついでにいえば焚き火をするための火を付けるモノもない。
これはマズイともう一度ポイント交換欄を見てみることに。
すると回復薬の下に新たな商品が追加されていた。
·火起こし器具
○木の棒と板"5ポイント"
○マッチ"20ポイント"
○チャッカマン"100ポイント"
·寝具
○藁"5ポイント"
○薄いマットレス"20ポイント"
○寝袋"150ポイント"
どうやらその時に欲しいものがこうして追加されるようだ。
しかし……シュラフ高くない!?そんなポイントないよ今!!
半日ぐらい歩いてやっと20キロ、合計240ポイントしかない。
一時間に4キロぐらいは歩いているはず。休み休みだからそんなに距離数は稼げなかったけど、それでもやっと貯めたポイントをシュラフで消すのは………
「いや、まて食料はどうなってるの??………出てこい!!」
念じてみたが、どうやら食料に関しては駄目らしい。
なにがオッケイで表示されるのか…よく分からないが、とにかくあるものでどうにかするしかない。
とにかく火起こしも寝具も2番目のものを買うことにした。
これで残りが200ポイント。もう前世のポイントを使い果たした。
こんな感じで果たしてこの先やっていけるのか……
少し不安になりながらも薪木を集めて小枝にマッチで火をつけ……
「………付かない、なんで付かないんだよ!!!」
いくら乾燥している小枝でも、マッチ一つじゃ火は付かない。
そういえば、こういうときって燃えやすい木の皮って…
と、短剣を取り出そうとしたときマッチ箱からマッチが大量にこぼれ落ち、それを拾おうと慌てたために火がついていたマッチをそこに落として……
「…………ついたけど、これじゃない……」
マッチを大量投入することによって小枝に火はついたが半分以上がマッチ箱から消えてしまった。
しかし凹んでいても仕方ない。そう切り替えてポイント交換欄から水とまんじゅうを買って夕食にすることにした。
昼も同じメニューで少し味気ないがそれでもお腹は膨れる。
4個と水を購入してあとは180ポイント。
「これは、地道にポイントを集めるしかないか……」
歩いた分だけもらえるポイント。
この異世界で生きていくにはとにかく歩くしかない。
そうすれば最低限の食料はある。
とはいえ、明日は別の者が食べたいなーと思い焚き火を見ながら思っていると
ガサガサ…ガサガサ…
なにやら物音が聞こえてきた。
そういえばここは異世界。全然魔物とかモンスターとか会わなかったけどやっぱりこの世界にもいる!
ってか、この防具も"ボアの革"だから少なくとも"ボア"というものはいるのだ。
そう考えると急に不安になってきたカイは短剣を手にして、そして焚き火を盾にするかのように回り込み物音がする方へ警戒をする。
ドンドン近づく音に緊張が高鳴る。そしてもう目の前に来たと思った瞬間、
「………、いた」
「……え??」
そこに現れたのは女のコ。それも十歳ぐらいの小さな女のコだった。