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はじめまして。
投稿は初めてです。マイペース更新を目指します。よろしくお願い致します。
「ありゃりゃ」
城を出る時に使っていた抜け道が、塞がれてしまっていた。城を囲む城壁の一部が壊れていたのをそのまま放置していてはまずい。見つけしだい修復するのは当たり前だろう…しかし、直すの早くない?
小柄な人間一人通れる程度の穴だったから、その気になれば直すのなんて造作もないだろうけど…。いつかは塞がれるだろうと思っていたけれど、あまり人の通らない場合だったから、見つかってもしばらく放置されると思っていた。現に、今まで大丈夫だったし。一応中に戻るべく、考えられる方法は試してみることにした。
門に向かい、門番に中に入れてほしいと頼んでみた。戻りたくはないが、試してみたけれど帰れなかったという事実は必要だから。
「通してもらえないかしら?わたくし、城から抜け出したのですけれど、同じ道が使えなくなってしまって戻れなくなってしまったの」
普通の街娘が着るよりも少しくたびれたワンピース姿のわたしを見て、門番達が顔をしかめる。
「は?何を言っているんだ?」
「平民が貴族のふりをしたら罰せられるんだぞ。知らないのか?入り込もうとしても無駄だ。見逃してやるから、早く帰りなさい」
やはり信じてもらえない。
「貴族のふりだなんて。わたくし、リレーナ・フォン・ジューテウスと申しますわ」
そう自己紹介すると、門番達の顔が険しくなる。
「よりによって皇族の、しかもフォンの名を冠する方を騙るなど」
「フォンを冠する皇女様はただお一人。第4皇女殿下だが、宝石姫と呼ばれているのを知らないのか?宝石姫様は精霊眼にアメトリンの髪をお持ちなのだ。お前とは別人だろう」
今のわたしの見た目は、この国では珍しくない茶色の眼と髪になっている。変身魔法を使っているのだ。だって、もともとの眼と髪の色では目立ちすぎるから。街で民にまぎれて働くには、わたしの容姿は目立ちすぎる。
黙ってしまったわたしに、門番達がしっしっと手を振る。
「さあ、わかったら帰りなさい」
「今回は見逃してやるから」
わたしは、カーテシーを披露してその場を離れた。通り過ぎざまに門番達の顔を見たら、片方は驚き、片方は呆然としていた。
さあ、城に戻るべく挑戦はした。玉砕したので、心置きなく城を後にしよう。帰らないのではなく、帰れないのだ。よし。そう切り替えると、ギルドに向けて歩き出した。
とりあえず、今日の寝床を確保しなくては。