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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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実菜、喧嘩に巻き込まれる

現場は焼肉パーティーどころではなくなっていた。取り敢えず目隠しにとシーツを繋ぎ合わせ壁の穴を塞ぐ事にし、寝室でその作業に没頭する事となった。


「まったくもう!悪い事はしないって約束だったでしょ!」


文句を言いながら静加がシーツを縫い合わせていると、そこへメイメイがトコトコと呑気に顔を出し、実菜と静加の作業を眺めている。


「シズカが旦那に私の事を内緒にしておくのが悪いんじゃ〜」


メイメイは何故か拗ねた口調だ。


「何であなたが怒ってんのよ。怒りたいのはこっちよ!巷の幽霊騒ぎもあなたが犯人じゃないでしょうね?!」


メイメイは怒る静加を無視するようにプイッと顔を背けると、トコトコと穴の空いた壁際に歩いて行く。


「昔、何処かの国で物を作り出す術を使う人間を見たんじゃが、魔法というのは壁は作れんのかいのぅ」


「物を作り出す?」


メイメイの話に反応したのは新しいシーツを持って寝室に入って来たセシルである。


「それって、錬金術ってやつじゃないの?」


静加は具体的に錬金術がどんな物かは知らないが、チクチクとシーツに針を刺す作業は止めずに思いついた事を口にした。


「そう言ってたかもしれんのぅ……シズカは物知りじゃなぁ」


メイメイは静加のご機嫌を取ろうとしているのか、知ったかぶりの静加をおだてる様に「ふぉっふぉっ」と笑う。


「そう言えば、前にシズカが土から矢を作ったよね。あんな感じで壁が作れないかなぁ」


セシルは持って来たシーツを実菜に渡しながら上の空で呟く。


「あれは魔力を通し続けないと形を保っていられないわ」


「そっか……あ、そうだ。今、思い出した。何かを構築する魔法陣が確かあったような気がする」


セシルはそう言うと、一目散で書斎に向かって走って行った。


「いや、それは明日にして……って、もういないわね」


静加は開けっ放しの扉を見やって肩をすくめた。


「……まあ、もう直ぐ終わるし、そしたらお肉ね!」


静加はそう言って実菜からシーツを受け取るとガッツポーズをしたが、とんでもない事件が起きていた事が次の瞬間判明する。


「ああ、あの肉は中々の美味じゃったぞぇ」


ペロリと舌舐めずりしているメイメイを見て静加は目を見開いた。


「あんた……まさか!!……全部食べたんじゃないでしょうね!!」


「あんな所に置いておくのが悪いんじゃ〜」


メイメイはプイッと顔を反らすと、居心地悪そうにして壁に出来た穴を熱心に見ている振りをしていた。


「それにしたって、1キロはあったのに……もう……もう!頭にきた!!」


食べ物の恨みは怖ろしい。静加は怒りのあまり、縫い合わせたシーツを力任せに左右へと引き伸ばした。

刹那、「ブチブチッ」と音を立てて折角一枚にしたシーツが二枚へと戻る。「短気は損気」を体現した瞬間であった。

しかしそれでも怒りが収まらない静加は「フーッ、フーッ」と、鼻息荒くメイメイを睨み付けた。流石のメイメイも静加のその圧に悪い事をしたらしいと感じたらしく、静加の機嫌を取る様に小首を傾げ、上目遣いで尻尾を微かに振っていた。メイメイの考え得る可能な限り可愛く見える仕草であった。


「もうあんたなんてウチのコじゃない!!出て行け!!」


しかし静加にはそんな小細工などは通用しない。はらはらと見守る実菜の前で怒号が飛んだ。


メイメイは一瞬ぽかんとし、尻尾も垂れ下がってしまったが、直ぐに気を取り直したようにしゃんとした。


「ふんっ!!元々ここのコなどではないわ!!」


そう言うと、トコトコと扉へと向かって歩き出した。


「メイメイ、何処へ行くの?」


「実菜、放っておきなさい!」


なんだかんだ言って良い関係だと思っていたが、突然の喧嘩に実菜は戸惑う。

廊下に出たメイメイを追って様子を窺うと、階段の前でちらちらとこちらの様子を窺っている様に見えた。


「……呼び止めて欲しそうなんだけど」


「放っておきなさいってば」


コソッと静加に報告すると、先程と同じ返事が返ってきた。

暫くするとメイメイは諦めたのか、ゆっくりと階段を下りて行き、玄関の扉まで来るとまたこちらをちらちらと窺っている。


「静加、また呼び止めて欲しそうだけど……外に出て行っちゃうみたいよ?」


「好きにさせなさいよ、どうせ直ぐケロッとして帰って来るんだから」


メイメイがこの屋敷に棲み着いてからそんなに経っていないはずだが、静加の言い方ではこれまでも同じ様な事があったのだろうか。項垂れた豆柴は玄関から出て行ってしまったが、取り敢えず実菜は様子を見る事にした。


しかし、メイメイは壁の穴を隠し終えた後も、取り敢えず屋敷にある食材で夕食を取った後も帰っては来なかった。


余計な仕事をした所為ですっかり遅くなってしまい泊まっていく事にした実菜が、静加と客間のベッドにもぐり込んだ後も帰っては来なかった。


「客間にベッドは必要無いと思ってたけど、備えあれば憂いなしって本当ね」


欠伸混じりにそう言うと、静加は直ぐに寝息を立てていた。セシルはというと、ひとりソファで寝る羽目になり、深く長い溜め息を吐いていた。


「メイメイ……寂しかったんじゃないかしら」


実菜は誰も聞いていないが、暗くなった部屋の天井に向かって呟いた。


「……そうかもね」


「やだ!起きてたの?!」


すっかり寝入っていると思っていた静加から返事が返ってきて、実菜は必要以上に驚いてしまう。


「起きたのよ……寂しいからイタズラするって、子供じゃないんだから……実菜も早く寝てよ?」


そう言うと静加は、実菜の返事を待たず再び寝息を立て始めた。



静加、器用すぎじゃない?こっちはそんな簡単に寝られないんですけどっ?!



実菜は頭まで布団を被ると目を瞑った。





すっかり寝入っていたのか、何かの気配で実菜が目を覚ました時には薄っすらと外が明るくなりはじめていた。


「あ、ごめん。起こした?まだかなり早いから寝ていて大丈夫よ」


静加はもう支度も済ませている。実菜は静加の目の下に薄っすらとクマが出来ている事に気付いた。



もしかして、メイメイを待って起きていたのかしら。



実菜がそんな事を考えていると、玄関の方で「ドサリ」と大きな物が落ちる様な音が聞こえた。


「何かしら」


二人は眉を顰めて顔を見合わせると、急いで玄関まで下りていく。慎重に玄関の扉を開くとポーチには大きな猪が転がっていた。


「何これ?!……死んでる?」


どう見ても投げ込まれた感じだ。もしかして嫌がらせかしらとも思ったが、この屋敷の門には警備員もいるのだ。こんな物を持っていたら、先ず入って来られないだろう。


「……メイメイ」


静加は呆れた様子でポーチの先に声を掛けた。見ると、まだ薄暗くて気付かなかったが白いもふもふとした壁があった。その壁が動き、ポーチの屋根から大きな狐が顔を覗かせる。ブンッとその顔を振ると口から何か塊の様な物が飛び出し、ドサリと猪の隣に落ちた。


「……鹿?」


眉を顰めて目の前の猪と鹿を見つめたが、理由が分からない。再び、恐らくメイメイだろう狐に目をやると、そこには白い豆柴がいた。

豆柴はトコトコと近付いて来ると、ちょこんと座り尻尾を振っている。まるで「褒めて」と言わんばかりである。


「これ……捕まえて来たの?」


立派な大人の鹿と猪でかなり大きい。これを咥えていたメイメイもかなり大きかったが。


「どうして、こんな……捌けないんだけど」


「肉じゃ」


「……そうね。ありがと」


静加は迷惑そうに言うが、嬉しそうでもある。


「素直じゃないわね」


実菜の言葉は無視された。


「何かあったの?!……って、あー……メイメイ……帰って来たんだ……って、何だこれっ?!」


物音で起きたのか、慌てた様子でセシルが玄関にやってくると色々と状況把握に忙しそうだが、メイメイが帰って来た事に関しては未だ警戒しているのか残念そうであった。




急遽「この肉をどうするか会議」がリビングで行われた。


「そのままかぶり付けば、ええじゃろうが」


というメイメイの提案は秒殺で却下される。


「まあ、料理人なら捌けるんじゃないの?家に聞いてみるよ。家にはリードがいるし……丁度良いや、アレを試してみるか」


アレとは何の事か分からないが、セシルは鞄から手の平サイズの木箱を取り出した。

皆が注目する中、セシルは徐に箱の蓋をスライドさせた。


「あ、そういう開け方なんだ。でも何それ?」


蓋を開けた木箱には水晶がはめ込めてあり、ボタンの様な物まで付いていた。


「うん、リュートから試作品を渡されてさ。実験を頼まれてたんだよ。確か、これを押すんだったよな」


そう言うとセシルは、その箱に付いているボタンを押した。


しかし……。


「……何も起こらないわね。私、お茶淹れてくるわ」


よく分からないものに飽きたのか、静加は席を立ちキッチンへと向かう……と言ってもアイランドキッチンなので見える所にはいるのだが。

この国ではこの造りのキッチンは珍しいらしいのだが、静加の譲れない要望の一つだったらしい。


その時。木箱の水晶の部分が仄かに光り出した。


次第にその光りが箱の上に人影を映し出す。


『おい!!セシルお前!今、何時だと思ってんだよ?!心臓が止まるかと思うほど驚いたぞ!!』


その光りはリードを映し出していた。


「あ、リード。公爵家の料理人を何人か家に寄越して欲しいんだけど」


『……お前には人を思いやるという気持ちがないのか?せめて謝れ。そして何故、料理人が必要なのか述べろ』


明らかに不機嫌なリードにセシルは「ごめん、ごめん」と、軽い感じで手をひらひらと振る。

このままでは話が進まないと感じた静加が「ドンッ」と、セシルを押し退け箱の前に出た。


「リード、ごめんなさいね。今朝、猪と鹿が届いたんだけど、捌けなくて……だから、捌ける人を貸して欲しいのだけど、お願い出来るかしら」


『ああ、シズカ……って、猪と鹿?!丸々届いたって事?う〜ん、まあ、聞いてみるけど……出勤前でも良いか?俺はまだ眠い』


午前中に料理人をこちらに向わせるという事に決まった所で通信を切った。


「何かこれ、テレビ電話みたいね。リュートったら、こんな物が作れたのね」


「テレビ……?でも確か、ニホンには電話があったよね。あんな感じみたいだなぁって僕も思ってた。でもこれ、呼び出し音が警報音みたいな凄い音がするんだよね。魔力がないと作動しないし」


まだまだ改良の余地あり、とセシルが頷いているが、静加がそのセシルの頭を叩く。


「それを知っててこの時間に呼び出しちゃ駄目でしょう?!」


どんな音かは分からないが、リードは相当驚いていたようだ。何故そんな音にしたのかリュートに是非聞いてみたい。実菜はそう思いながらお茶をすすった。

お読み頂き有難う御座いました。

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