表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/131

貴女が聖女ですか?いいえ、違います

セシルとカイルを伴って彼女の元に向う。


「ところで、彼女は今何処にいるの?」

「王宮の牢屋だよ」

「ろ、ろう…?!」

「あ、貴族用だから普通の部屋とあまり変らない。鉄格子は付いちゃってるけどね。あと、念の為魔法は使えない様にはしてある」

「処罰されちゃうって事?!事態を収拾してた様に見えたけど?!」

「落ち着いて。結果そうだけど、彼女の目的が分からない今は拘束しておくしか無いんだよ」

「酷い……」

「いや、だから今ミナを連れて行くんだよ?!分かってる?」


なるほど。


「それにあんな能力高そうな人間、ほっとく方が罪だと思わない?!」


あ、そっちが本命?


彼女が入っているという牢屋に近付くと、男女の話し声が聞こえてきた。

「うわ、何で…」「…まあ、落ち着きなって」みたいな感じで、なんか揉めてる?


声の主達は件の彼女と看守の様だった。


「何をしている」


カイルの低い声が響く。こういう時はセシルよりカイルの方が威厳があって良い気がする。


「助けて下さい!アイツ俺の手に負えないっス!!」

看守が縋る様にカイルに泣き付いて来た。

「あ、アンタ今私の事アイツって言ったわねー!」


何故、件の彼女が牢の外の廊下で仁王立ちになっているのか。謎である。


私達に気付いた彼女は「あっ!」と言って自ら牢に入り内側から鉄格子を閉めた。


鉄格子の前に行き中を見ると、彼女はベッドに腰掛け足をプラプラさせながら明後日の方向を向いて口笛を吹いていた。


この古臭い惚け方はなんなの??ふざけてるの?


そしてさも今気付きました的な顔でこちらを見て立ち上がる。


って、誤魔化されるかぁ!!


「まぁ、茶番はこれ位にして貰って」


流石のセシルも苦笑いで鉄格子を開くと中に入る。躊躇なくその部屋の丸イスに腰を掛けるとニッと口角を上げた。


「で、どうやって結界を破ったのかな。結界の外、詰まり牢から出られ無い様にしてたんだけど?」


結界?魔法を使えない様にしてると言ってたけど、それに関係してるのかしら。

私もカイルも牢の中に入ったが、四人入ってもまあまあ余裕がある程部屋は広かった。


「これ、良く出来てるよね。魔力の磁場って言うのかしら、それを狂わせて不安定にさせる様になってる」


そう言って彼女はサイドテーブルの上に置いてある女性の拳一つ分程の黒い石を指差した。


「但し、これに魔力を付与した者より魔力量が低い者に対して、だけみたいだけど?」


ベッドに腰掛けたまま脚を組み、自身の膝に頬杖を着いて面倒臭そうに彼女が続けた。


「つまり、付与の上書きをした。って事かな?」

「それは私の推測が正しかったということかしら?意図した訳じゃ無いけど、結果そうなった。結界もそう、別に破るつもりは無かったわ」

「結界も魔力量の差が物を言う。魔力量のテストではそれ程では無かったと思ってたけど?」


あ、あの水晶試験したんだ。


「あー、あの水晶のこと?あれさぁ、多分意味無いよ。少なくとも私には。多分自分の意思で変えられる」


この言葉にはセシルもカイルも目を見開いた。


「それより聖女様と話をさせてよ。私の名前はデイジーよ」


痺れを切らした様にデイジーと名乗る彼女が好奇心の混じる視線を私に向け、名を名乗る。

聞きたいことが沢山ありすぎて何から聞いたら良いか分からないが、でも先ずは自己紹介よね。


「神倉実菜と申します。実菜と呼んで下さい。あの、えぇっと…デイジーさんは日本人?では、ない?ですよね……?」


彼女の外見はこの国の人と変らない。日本の知識を持っているだけなのか、何なのか。どう尋ねるべきか迷ってしまい妙な問い掛けになってしまったが、彼女の方もどう答えるべきか考え倦ねている様に見えた。


「うーん、勿体付けるのは好きじゃ無いけど確認したい事があるからその質問には私の質問に答えて貰ってからでもいいかしら?」


デイジーは身体を起こし、私に問う。別に断る必要も無いので頷くと、彼女は「じゃぁ」と口を開いた。


「実菜さんは召喚されたと伺いました。それは日本の暦で言うといつだったか覚えていますか?」


え?召喚された日?えぇっと…あ!


「節分の日!!二月二日!一日早かったから覚えてる。あ、違うわ。次の日の朝だったから三日だわ」


「124年ぶりだったかな、節分が二月二日は。例年とは違ったからね。記憶に残りやすいか……三日の朝か」


私の答えを咀嚼するかの様にデイジーはふむ、と顎に手を当てた。

何年ぶりかなんて、私知らなかったわよ。これが日本人でないなら何なの?とも思うが。


「結果から言うと私は日本人で間違い無いと思う」


思う……?妙な言い回しね。自分の事なのに。


「実を言うと、前世が日本人でその記憶を思い出しただけなのではないか。と自分でも判断しかねていたの。実際私は日本では死んでいる、と思う。だけどこの身体、デイジーも死んでいる、と思う」


「え!!って、ええぇぇっっ??」


どういう事なの?!し、死んでいるって?じゃあ、今目の前に居るのは何だと言うのだ??前世というのも聞いたことがあるにはあるけど。


思わず叫んでしまった。セシルもカイルも静観していたが、これには流石に驚いた様に二人共が口をポカンと開けてデイジーを穴が空くかというほど見つめている。


「私の死亡時刻と貴女の召喚された時刻はほぼ同時だと思われるの。これは私の憶測でしかないのだけど、デイジーの死亡時刻も同じなのではないか、ということ。そして理由は分からないけど私の魂も貴女と一緒にこの世界に召喚され、魂の抜けたデイジーの身体に入り、そして定着してしまった、ということ」


誰も何も言えなかった。是とも否とも。偶然が重なった話としては辻褄が合わないとも言い切れ無い。


「日本人としての私の意識、記憶の方が極端に強いことを鑑みてもこの考え方が合点がいく、と思う」



この話に関して誰も突っ込むことが無かったからか、デイジーとして意識を取り戻してからこの世界に馴染むべく独学で魔法を学んだ事、人伝に異世界の日本という国から聖女を召喚したという事を聞き、会ってみたくてパーティー会場へ潜入した事を話してくれた。


「そしたら可笑しな流れをした奴が騒いでいたから、それを正した。そして今に至る」

デイジーは肩を竦め、そう締め括った。


「可笑しな流れ?」


この間ずっと難しい顔をしていたセシルが口を開いた。


「何て言ったら良いかな……自然じゃない、日本人なら気の流れって言うとお凡そ理解してくれたりするんだけど、それが強引に狂わされてた。つまり操られてたって事」


デイジーの言葉に私含め、その場に居た者達は静かに目を見開いた。


「あの気持ち悪い物体が操ってたのか?」


信じられないと言うようにセシルが問う。


「調べてみないとそこまでは断言出来ない。が、私の知識の範囲内で言わせて貰えば、あれは寄生虫だ。恐らく身体に入った時はかなり小さかった筈だよ。今日発見したのは四体だったけど、意図的に入れられた物であれば虫に何かしらの術を掛けていたとも考えられるし、まだ虫が入っている者も居るかもしれない。どちらにしても今後も注意する事をお勧めする」


そう言ってデイジーは見透かした様な、意味深な視線をセシルに投げ掛けると、それに対してセシルは苦虫を潰して返した。


四体?あの男性の他にもいたのだろうか、それとも一人に四体入っていたのだろうか。


「実菜さんは魔法が使えないんじゃない?」


聞いてみようとしたところ、こちらに向き直ったデイジーに唐突に話を変えられてしまった。


「そうです!何で分かるんですか?魔力はあるらしいのですが。って言うか、色々知り過ぎじゃないですか?!この世界に馴染み過ぎというか……」


私はデイジーに率直な驚きと疑問を素直に告げる。


「それは機会があれば追々、ね……」


と、彼女は困った様な弱々しく感じる顔で言った後、ふぅ、と小さく息を吐くと横目でセシルを捉えた。


「第一魔導師団団長セシル・クリスフォード様とおっしゃいましたか。何も知らないこの娘を囮にするのであれば、守り抜くおつもりだったのでしょうね?今回は命に関わる事にはなりませんでしたけども?貴方でしたらどう対処したのでしょうねぇ。傀儡にされてる事ぐらいは流石に気付けたとは思いますから?拘束して男を処罰するだけでは無かったとは思いますけども?」


嫌味たっぷりと言った物言いでデイジーがセシルに言い放つと、セシルは額に手を当て項垂れた。隣でカイルが何とも言えない苦い顔をしている。



え……?おと、り?囮って何?どういう事?

突然の予想外の言葉に頭が真っ白になった。

お読み頂き有難う御座いました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ