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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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吉報

文中に出てくる「お婆ちゃん」はあくまでも実菜の中でのお婆ちゃんのイメージです。

先に謝ります。全国のお婆ちゃん、ごめんなさい。

ロイがアンドロワ帝国に出発し、一ヶ月が経とうとする頃、その報告は突然やって来た。



「実菜〜!!大ニュースよ〜!!」


バタンッ!!と研究室の扉が開いたかと思うと、静加が飛び込んで来た。


「静加、扉が壊れるから静かに開けてよ。

それにしても、早かったわね。予定では明日帰って来るのではなかったかしら」


静加はアガギア領よりも、更に隣国に近い領地まで視察に出ていた。隣国に程近い場所という事で警備兵等も配置されてはいるが、万が一を考えて今回は実菜はお留守番をしていたのだ。


「何よ、帰るなり文句って。「おかえり」くらい言えないの?」


「じゃあ、「ただいま」くらい言いなさいよ」


「ああ言えば、こう言う」


「どっちがよ?!」


実菜と静加の不毛なやり取りは、今や研究室では恒例となっていた。誰も二人を気にせず仕事を続けている。


「ところで、何がニュースなの?」


「あっ、そうそう!!大ニュース!!ぐふふふっ!」


静加は研究室に飛び込んで来た時の興奮を思い出してか、いやらしく笑っていた。


「だから、何がよ?」


「あのね、あのね!ぐふふ!こんなに早く上手く行くとは思ってなかったわ〜!!きゃっは〜!」


「静加、いい加減にしなさいよ?」


静加は一人で盛り上がっているが、実菜にはさっぱり話が見えない。少々実菜の機嫌が下降気味な事に気付き、静加は内緒話をする様に実菜に近付いた。


「あのね、ロイが……」

「はぁ〜い!シズカちゃん。そこまでね」


その時、リードが割って入り静加の口を手で塞いだ。


「ふぁにふるのぉ〜?」

「ん?今、ロイって言った?」


静加がリードの腕をぺちぺち叩きながら何か言っているが、それを無視してリードが問い返す。口は塞がれたままなので静加がうんうんと首を縦に振るとリードは何か思案するように目を細めた。


「シズカ、ちょっとこっちおいで」


静加の口を塞いだまま抱えるようにしてリードは自身の執務室へと向かった。


「ちょ、ちょっと待って、私も」


このまま話が見えない状態は気持ちが悪い。実菜も二人を追って行った。



「で?ロイがどうしたって?」


静加から手を離し、執務椅子に腰を下ろすとリードが静加に問う。


「その前に、何の話と勘違いしたのか教えて」


静加は執務机に片肘を着き、リードに迫る様にして逆に問い返した。


「……情報交換、という訳か」


「物事は全て等価交換なのよ」


執務机を挟んで対峙する二人は何故か悪そうな笑みを浮かべている。その姿は宛ら悪の組織の黒幕のようであった。


「何か悪い話なの?」


その二人の雰囲気にたまらず実菜が口を挟むと、二人は同時に実菜を振り返った。


「良い話だ」

「良い話よ」


言葉も被った。じゃあ、何故に悪そうな雰囲気を醸し出しているのか問いたかったが、実菜は黙っておく。


「だけど、一応これは今の所まだ機密事項になっているから、他言無用で頼むよ」


リードは急に砕けた態度になり、椅子の背にもたれ掛かった。

これから国の秘密を話すのにこの態度も如何なものかと思うが、リードは気にせず話を続けた。


「レイン第一王子とリリー嬢のご成婚の日程が正式に決まった。今までは妨害の危険性が高かったからずっと先延ばしにしてたんだけど、その懸念が無くなったからだそうだ。

まあ、正式に発表されるまでは黙っていてくれ」


「えっ、そうなんですか!それはおめでたい」


実菜はいつか見た、殿下とリリーの微笑ましい光景を思い出していた。


「で?ロイが何だって?」


リードの情報は開示された。次は静加の番である。


「ロイの婿入りが決まったのよ!」


「え!!ロイも?!でも、いつの間に?まだ帝国から帰って来てないわよね」


実菜は目を丸くした。


婿入りという事は相手が跡継ぎという事よね。


何故か得意気に話す静加も気になるが、いつの間にそんな話になっているのかの方が気になる。

貴族間の結婚はよく分からないが、本人がいない所でも決まってしまうものなのだろうか。それとも前から出ていた話が本決まりになっただけだろうか。


「そりゃ、そうよ。帝国に婿入りするんだもの」


やはり静加は得意気に鼻息を荒くした。


「ロイの奴もやるよなぁ〜、でもシズカ、その話は機密事項だと言われなかったか?言葉を濁されたけど陛下がそんな事を言っていたぞ?誰がシズカに情報を漏らしたんだ?」


「さっき陛下から聞いたけど?」


「へ……」


リードの表情が固まった。その顔には、陛下自ら機密事項を簡単に漏らすなよ。と書いてあるように見えた。


「だけど何でロイの結婚が機密事項なの?」


殿下の場合は、今までの経緯から慎重になるのも分かるけど、ロイは別に重鎮という訳でもないし……。


「そうだよな。ロイは長子でもないし、外国で結婚しても特に実家には影響はないはずだけど……相手の事は何も聞いてないが、婿入りって事は何か事業でもしている家なのか?」


首を傾げた実菜とリードに向けて静加が「ぐっふっふ」と笑う。その静加の様子を見た実菜は顔を顰めた。


「静加……前から……デイジーの姿だった頃から思ってたんだけど、外見と中身のギャップが激しくない?」


「どういう意味よ?でも、そういうのギャップ萌えっていうんじゃないの?」


「いや……萌え、ないかも」


実菜も萌えに詳しい訳ではないが、黙っていれば上品に見えなくもない容姿で中身が下品。というのは萌えではない気がした。


まあ、言動が下品というか、大雑把というか……何というか……お婆ちゃん?

そうか!!お婆ちゃんだわ!……じゃあ、仕方ないわね。中身がお婆ちゃんなんだもの。


実菜は納得する答えに辿り着き、ひとり頷いた。


「あのさ、その……萌えの話はよく分からないけど、シズカはロイの一件で何か知ってるの?」


話が脱線して理解出来ない方向に向かってしまったと思ったリードは、話を元に戻した。


「もちろん!相手はシャーリン様よ!!」


「………」


静加が口にした名前に、実菜もリードも口をぽかんと開けて固まった。


「ああ……帝国にも同じ名前の人間は、何人もいるよな」


我に返ったリードが、うんうんと頷きながら誰にともなく言い聞かせるように呟いた。


そうか、そうよね。同じ名前なんて珍しくないわよね。びっくりした〜。


「何よ!ロイがシャーリン様の皇配になるのよ?もうちょっと驚きなさいよ!」


実菜とリードの反応が不満だったらしく、静加は頬を膨らませて鼻息を荒くしていた。


「えっ!!本当にシャーリン様なの?!」


「最初からそう言ってるじゃないの!」


「同じ名前の人かと思ったわ。まさか、と思うじゃないの」


「シャーリン様以外の人に様を付けて呼ばないでしょうよ」


まあ、確かにそうなんだけど。


「まさか、シズカお前、妙な魔法を使ったんじゃないよな?」


リードも些か信じられないらしく、眉を顰めた。


「何よそれ!私は、あの二人なら合うだろうと思って、シャーリン様の相談役にロイを推しただけよ!」


ロイが言ってた、陛下に進言した師団員て静加の事だったのね。


ロイが何故、静加を睨んでいたのか今更ながら実菜は気付いた。


「て事は、その時から仕組まれてたって事かぁ〜」


リードが腕組みしながらしみじみと頷いた。


「ねぇ、さっきから私を悪者みたいな言い方してるけど、私はねぇ、ロイの幸せを願って帝国に送り込んだのよ?

……まさか、こんなに上手く行くとは思ってなかったけどね」


「幸せをねぇ、本当かなぁ〜?」とリードが苦笑いすると、静加は肩をすくめた。


「本当よ。幸せを願うこの気持ち、分かるかなぁ〜?分っかんないだろうなぁ〜」


「何よそれ」


急に戯けた静加の台詞に、実菜は思わず吹き出した。


「兄貴が王配だった頃、弟は平民だった。って感じ?日本の昔のギャグよ」


静加も笑いながら言っているが、ジェネレーションギャップだろうか、実菜にはギャグの事はよく分からなかった。

しかし、リードは静加の言葉で思案するように考えるポーズを取り、視線だけを静加に向けた。


「それって、建国の……?」


ぽつりと呟いたリードに静加が目を丸くした。


「リードって、侮れないわね!!」


「まあ、その頃の話はミナやシズカの他に父上からも聞いていたからね。でも、もっと褒めて貰っても良いんだけど?」


リードも戯けた言い方をしたが、何かに気付いた様に目を見開いた。


「いや、待て待て。その話がここで出て来るって事は?んー?」


リードは腕組みしたまま天を仰ぎ目を細めた後、視線を静加に向け睨む様に見つめた。


「シズカ……まさか、ロイって……?」


静加もリードを黙って見つめ返した。

二人とも無言で見つめ合っていたが、リードが「ふっ」と小さく笑うと静加も少し笑った。


「リードがこんなに鋭いとは知らなかったわ。セシルとは大違いね」


「アイツと一緒にしてくれるな……まあ、そう考えると、色々としっくり来る事もあるけど……だから何だって話だしな」


そう言うと、リードは何かを咀嚼するように頷いた。


「ロイが、どうしたの?」


ひとり話が見えていない実菜が二人に問い掛けると、リードから不思議な物を見る様な視線が返って来た。


「確か……ミナは前世の記憶があるんだったよね?」


そう言ってリードが首を捻った。


「そう……だけど、今は殆ど思い出せない感じよ?」


「母様の心残りが解消されたから、その記憶に執着する必要が無くなったのよ」


なるほど。そういう考え方もあるのか。


実菜は静加の補足した言葉を感心して聞いていた。


「ふーん?そんなもんか。でも、もし自分に前世の記憶があったら。と想像すると、随分とややこしくなる気がするな」


想像したのか、リードが苦い顔をした。


「でも、力の使い方は思い出したんだよね?」


「まあ、大体は」


実菜もその事は驚いていたのだが、浄化とか力を使った簡単な攻撃の方法は思い出していた。


「都合が良いよな」


そう言ってリードが笑った。


「……都合の良い女」


「静加、その表現は激しく誤解を招くから止めて頂戴」


ロイの何かしらの謎は謎のままだったが、実菜はロイとシャーリンとの馴れ初めの方が気になっていた。

お読み頂き有難う御座いました。

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