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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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女帝、宰相と対峙する

明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。

何はともあれ、嬉しい誤算で帝国は目の前なのだが、シャーリンは具体的にこの先どうするつもりでいるのだろうか。

こちらに居る軍勢と、自国に戦を仕掛けるつもりかしら。


内戦……!大変だわ!!

この場合、私達も参戦するのかしら。

あ、それだと、ドラゴニアンも関わってると思われる?じゃあ、駄目ね。


実菜は、あれこれ妄想し、ひとり青い顔をしたが、ふと、気付く。


あれ?えーと、皇帝対宰相……で宰相は親戚?に、なるのよね、そして、そもそも宰相は皇帝を継ぎたくて事を起こしている、という事は、これは……お家騒動?!


継ぐものが、皇帝だというだけに壮大だわ!

国民を巻き込んだ、壮大なお家騒動だわ!!


「実菜、貴女また何か変な事、考えてない?」


実菜が、青くなったり赤くなったりを繰り返しているのを横目に見ていた静加が声をかけてきた。

「へ?」と、振り返ると、眉を顰めた静加が立っている。


「変な事なんて考えてないわよ。

ただ、内戦なんかになったらどうしようって……」

「やっぱり、変な事を考えているじゃん」


静加のツッコミに、実菜は己の妄想が突っ走っていた事に気付き、我に返った。


「そうです、内戦など……ありません」


シャーリンも、実菜を安心させる為にそう言ったようだが、どうにも歯切れが悪い。


「シャーリン様、今の言葉、否定するまで間がありませんでした?」


「気の所為です」


実菜がシャーリンを見返すと、目を泳がせながら逸らされた。


う〜ん、彼女のこの態度を、どう取るべきか。


実菜は、静加を見やった。それに気付いた静加は、何故か海龍を見やる。そして、海龍は……そっぽを向いた。


「陛下!ご指示を!」


そこへ総大将が、シャーリンの前に跪き指示を仰ぐ。

シャーリンは、甲板から見える帝国を眩しそうに見つめた。


「錨泊しろ!お前等はここで待機だ!」


「はっ!!……はっ?!陛下、それは、どういう……」


シャーリンの指示に、総大将は困惑した。

いつまでここに留まるつもりなのか。宰相を捕らえるのではないのか。総大将の表情は、そう訴えているようだった。


「見張り!港の様子は?」


総大将の問いには答えず、シャーリンは帆の上に居る見張り役に声をかけた。


「こちらの存在には気付いた様子です!!」


帆の上から男の声が降って来る。

それを聞いたシャーリンは、ニヤリと口角を上げた。


「ならば、出迎えの準備も出来ているだろう……小舟を降ろせ!!私一人で行く」


「陛下!!お言葉ですが、承服しかねます!万が一……」


「心配するな、宰相と話をするだけだ」


シャーリンは総大将を手で制したが当然、総大将は納得がいかない。


「宰相は、一切信用出来ません!せめて自分だけでも……」

「儂が行こう」


再び反論する総大将の言葉に、被せるように太い声が頭の上から降って来た。

海龍が、シャーリンと総大将の間に入るように顔を近付けて来ると、総大将が思わず後退った。


「儂が一緒に行こう……何か問題があるか?」


「いえ……全然」


総大将に顔を向け、再び口を開いた海龍の迫力に押し負けたのか、総大将は呆けた様子で、何とか言葉を絞り出した。


「はい、はーい!私達も行きます」


元気良く静加が手を挙げた。何故か実菜の手も取り、一緒に手を挙げさせた。


「え、え?私も?……でも、部外者になるし」


と、言いつつ実菜はシャーリンを窺う。


「だって、私達は証人だから!観てるだけ。何もしない……でしょ?シャーリン様!」


静加がそう言うと、シャーリンは硬い表情を緩ませ頷いた。


「んなっ?!何故です!」


驚愕の総大将が声を上げたが、静加がそっと近付くと肩をポンポンと叩き、小声で囁いた。


「貴方達を連れて行かないのは、貴方達の為よ。陛下の気持ちを察しなさい。

万が一の時は、その時どうするか決めればいいんじゃない?」


総大将は困惑した表情で、静加を見つめた。




未だ納得いかない表情の総大将を尻目に、シャーリンは小舟を降ろさせ、三人が乗り込むと陸に向けて漕ぎ始めた。

カントラは上空を、海龍は海の中を、小舟に並走する様について来る。


「申し訳ない。最悪の場合、私は宰相を斬る覚悟でいる。

その時、万が一、私が死ぬ事があれば、彼等は反逆者として仕立て上げられてしまう可能性がある。

あくまでも、私の単独という体を取りたい」


シャーリンが小舟を漕ぎながら実菜と静加に語る。


「考え過ぎな気もするけども……」


実菜の言葉を楽観的だと感じたのか、シャーリンは「そうだと良いのだか」と言って、苦い顔をした。


「これくらいはお手伝いしても良いかしら」


静加が気分を変えるように、明るい声でそう言うと、小舟の後ろに向けて強風を巻き起こした。しかし、その強風がジェット噴射のようになり、小舟が浮く程のスピードが出てしまった。


「ひ、ひえぇえ〜っっ!!」


実菜とシャーリンは、小舟から振り落とされないよう、必死で縁にしがみつく。

小舟は舵を失い、すっ飛ぶと海面を数回バウンドしてから止まった。


「ちょっと〜……静加!!」


と、静加の方を振り返ると、彼女が居ない。

海に落ちたか、と実菜が心配して辺りを見渡すが、波がちゃぷちゃぷしているだけだった。


「嘘でしょう?」


実菜が呆然としていると、頭上から静加の呑気な声が降って来た。


「ごめん、ごめん。大丈夫〜?」


ハッとして振り仰ぐと、静加がカントラの隣でぷかぷか浮いていた。


「自分だけ逃げたわね〜!!」


「まあまあ、落ち着いて。ほら、もう到着だよ」


静加は、肩を怒らせた実菜の許に舞い降りると、正面を指差した。

シャーリンを見ると、ポカンとし魂が抜けかけていたが、静加の視線に気付くと我に返り口を結び直した。


「大きな港ね……」


実菜は呟いていた。


ドラゴニアンの港も大きいが、漁港も兼ねているという帝国は、その倍ほどありそうだった。


何隻もの船が碇泊しており、大きな船舶に挟まれる様に小舟用の係留所があり、そこに船を付けると、帝国の地に足を降ろした。


「妙だな」


緊張を孕んだ声で、シャーリンが呟いた。


妙とは、何がだろう。と、実菜が周囲を窺う。


「人が居ないわね。……まるで、人払いされているみたい」


静加も周囲を窺いながら、呟いた。


確かに。いくら病気が蔓延しているとはいえ、こんな大きな港に人が一人も居ないなんて……。


「申し訳ありません。念の為、お二人は離れていて貰えますか?

……出来れば、空にでも」


シャーリンが正面を見据えたまま、実菜と静加に声を掛けた。


「シャーリン様、まさか生きていらっしゃるとは……図太いですね」


シャーリンの視線の先を辿ると、正面の小さな建物の影から男が現れた。

声と共に姿を現したその男は三十代くらいだろうか、厳しい顔つきにいかにも軍人といった体格で帝国の紋章の入ったローブを纏っている。

顔を顰めたその男の後ろには、更に軍人らしき男達が数人続いて来た。


これって、ヤバイやつじゃない?!話し合いとか通用しなそうな雰囲気ですけど?!

カントラも海龍も姿が見えないけど、いるのよね?近くにいるのよね?!


実菜は、己の考えが甘かったと、祈るような気持ちで立ち尽くし、その場から逃げ遅れていることにも気付かずにいた。


「最早、繕うこともしないか、宰相よ?この短時間で大層な出迎えだな。

だが、しかし、残念だが神は私に味方したのだよ」


「はは、神、ですか。それは頼もしい。後ろに控えている者達が神だとでも?

しかし、味方を海の上に置いていらっしゃるとは、やはりお嬢さんですな。……詰めが甘い」


シャーリンの言葉を笑い飛ばすと、宰相が片手を上げる。

刹那、いくつもの爆発音が上空で炸裂した。

何事?!と、実菜が音のした方を見ると、左右の碇泊している大きな船の上で銃を持った兵士達が数人、呻いてうずくまっているのが見えた。


どういう事?手を怪我しているようにも見えるけど?


実菜は、状況を把握出来ずにいたが、それは実菜だけではなかった。シャーリンも訝しげに兵士達と宰相を交互に見やる。宰相でさえ、動揺しているようだった。


「銃が暴発しちゃったみたいだね〜。ちゃんと手入れはしている?」


兵士達の呻き声が響く中、静加が呑気な声を発した。

静加の言葉に、宰相が改めて静加を見やると「なるほど、これが魔女というやつか」と、舌打ちをした。

お読み頂き有難う御座いました。

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