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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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オトモダチ、はしゃぐ

有り難い事に、海龍の協力は得られたのだが、実菜は思うところがある。隣の静加に話しかけた。


「ねえ、静加。海龍の言っていた、鉄槌を下すって、どういう意味だと思う?

カントラが言うのと同じ様に船を沈める気かしら」


今、実菜達は、帝国軍が通るであろう海路を帝国に向かって進んでいる。

もちろん、上空を飛んでいるのだが、海龍に追従する形でカントラがいる。そしてその頭に乗り、実菜と静加。

実菜は「翼が無くても飛べるのねぇ」などと海龍に感心したが、鉄槌の内容が気になる所だ。


「海龍は、確か、海を操る聖獣として祀られていたと思ったけど……うーん、どうするのかしらね」


静加は、目を凝らして遠くを監視しながら、実菜に生返事を返した。


「ねえ、何で静加って、何でも知っているの?」


アンドロワ帝国の信仰のことといい、歳を取ると何でも見通せてしまうのだろうか。


いや、そんな事はない。実菜の祖父も祖母も普通だった。


実菜が、そんな事を考えていると、静加からジト目が返ってきた。


「実菜……貴女って本当に、勉強が()()なのね。

歴史書に載っていたわよ?

そんな過去があって、帝国の紋章が龍なのは分かるけど、ドラゴニアン王国はそういう話が全く無くて、名前にドラゴンが入っているのが不思議だったから調べたのよ。その頃はこの国に居た記憶は忘れていたし。

まあ、それを調べてた時に帝国の事も読んだんだけどね」


「あ、あれれ〜?……ははは」


うーん、確かに勉強はしてないわね。図書館で読んでたのは料理本とかマナー本が少々だったから。

そういえば、前に紋章がどうとかって言っていたわね。


「前に帝国の紋章を見たけど、あれって、龍の顔だったのね。私、ヤギかと思ってたわ。

でも、結局、ドラゴニアンは何でドラゴンと剣なのかしらね。

レオンハルトが作ったのかしら」


純子だった頃の記憶は、もう朧気になってはいるが、紋章を作ってはいない気がするのだ。国の名前だって、どうだったかしら……。

いくら、カントラが私と関わっているとはいえ、国名にしたかしら。

……こう考えると、随分と雑な女王よね、純子って。


実菜は、そこに思い当たると、ヘコんだ気持ちになった。


「あ〜、……レオンハルトだろうね。カントラに乗って浄化して周ってた純子と、騎士だったラインハルトを表したんでしょうね」


純子とラインハルトをモチーフにしたのか。


「なるほど……でも、何でかしら、とても切ない気持ちになったわ」


「国名にまで反映させたんだから、余程の覚悟よね。本当にレオンハルトって真面目よね〜」


「覚悟って何のよ」


実菜には、何が何の覚悟かは理解出来なかったが、彼が真面目だという事は知っている。つまり、そういう事だろう、という事にし、それから暫くは海上の監視に集中した。


どれくらい、経っただろうか。そもそも、王宮の会議室を出てからどれくらい経ったのだろうか。

一度、報告してから海に出た方が良かったのではないだろうか。


実菜に不安が過ぎった頃、遠くの海上に黒い点がいくつか見えて来た。


「あれではないか?ここから見えるだけでも、十隻はありそうだ」


カントラが、自身の頭の方に向かって声を上げた。ドラゴンは視力が良いのか、実菜には黒い点にしか見えない。が、少し頭が傾いた事で、実菜と静加がフラついた。


「わわわ、急に動かないでよ」


「無茶を言うでない。しっかり掴まっていてくれ」


そんなやり取りをしている間にも、軍勢は近付いて来る、否、近付いて行く。


とうとう軍勢の上空まで来てしまった。


カントラの角をしっかり掴み直し、実菜は下を覗き込む。


大きな船がニ隻、小さいのが……十隻。紋章も帝国の物だし、間違いない。

ここまで来てしまったけど、海龍はどうするつもりなのかしら。

ん?あれ?こんな近付いてしまって大丈夫なのかしら。


実菜は、もう一度、下を覗く。甲板に出ている兵士もいるが、こちらには気付く様子が全く無い。


「ねえ、カントラ。私達って見えていないの?」


こんな巨体がニ体も空を飛んでいるのだ。気付かないはずがない。


「アチラ側からは見えん」


「私達もしかして、姿を消しているの?」


「違う。異空間からまだ出ていないだろう?我々は裏側から表側を見ている」


確かに異空間を出るアクションは無かったけど、これは一体どういう状態なのだろう。ますます異空間というものが何なのか、実菜には分からなくなった。


「ミナとやら、おヌシはこの者達に危害を加える事を望まぬのだな?」


前を行く海龍が後ろ向きに向き直り、その金色の瞳の中の縦長の瞳孔が実菜を捉え、実菜の意思を確認する。

実菜は、何かを試されているような、変な緊張を覚え、頷く事しか出来なかった。そして、今後の事については、ノープランである事は言えなかった。


「では、一先ず、足留めしておくかの」


海龍はそう言うと、垂直に海に向かって行き、軍勢の手前辺りで海に潜ると、その勢いで船体が大きく揺れた。突然の事に、甲板に出ていた兵士達が船体にしがみついているのが見える。

そして、海龍がその軍勢の最後尾から上空へ飛び出して来ると、また手前の方に大量の海水を従えながら飛び込む。その光景は、まるで、船が大波にのまれるようだった。


凄い、コチラ側からは干渉出来るのね。アチラ側からはどうなんだろう。攻撃されたら、当たるのかしら。


そんな事を考えていたが、次の瞬間、実菜は自身の目を疑った。

暫くして波は落ち着いたが、軍勢を包む様に海水が球体となり、被っていたのだ。


「風船の中に紙吹雪入れて、膨らませてみました〜、みたいになったわね」


戯けた様に、静加が言った。


「こんなものを呑み込んでどうするのだ」


カントラが、上空に戻って来た海龍に問う。海龍はというと、自身の尻尾を海面につけたままで、その尻尾をバシャリと海面に叩き付け、飛沫をその球体にかけている。その度に球体が揺れ、中に閉じ込められた船体も大きく揺れる。兵士達がコロコロ転がっているのが見えた。


海龍が遊んでいる様に見えるのは気の所為か。実菜は思ったが、静加も同じ様に思ったらしく「ドSね」と呟いていた。


「いや〜、すまんすまん。久しぶりだったのでな。少し、遊んでしまった」


海龍が、尻尾も引き上げ、実菜達と向き合う形になると、微かに頭を下げた。


やっぱり、遊んでたのね……。


実菜は、絶句した。……カントラもそうだが、龍の表情は分かりにくい。が、この時の海龍は笑っている様にも見えた。


「今、下の者達は儂が拘束した。アチラ側からは見えん状態でな。

……さて、どうする。このまま放置しても、良いと思うが?

どう足掻こうが、そちらの国まで行けん。それどころか、ここから動く事も叶わん。

おヌシが殺す事なく、誰にも気付かれる事なく勝手に朽ちていく」


海龍が挑む様に実菜を見据えた。


やっぱり、海龍は私を試しているのね。誰も傷付けずに、戦争をどうにかしたいなんて言っているから。でも、私がしたいのはそういう事ではないのよ。どう言ったら良いのかしら、大本を何とかしないとなのよ。

……さて、どうしたもんですかね。


「では……シャーリンを……皇帝を連れて来ます。彼女がいなければ、話を進める事は出来ません」


そうだ、これは私達だけの問題では無かったのだ。彼女とも相談しなければ。寧ろ、彼女がメインなのだ。


「ほう、今は女帝であるか」


海龍が、その言葉に込めた感情は測りかねるが、楽しんでいるように実菜は感じた。



何はともあれ、海龍にはその場に残ってもらい、一度、実菜達一行は王宮へと戻って来た。

戻って来たのだが、実菜は違和感を感じていた。


「静加、確か会議室を出たのが、お昼を少し過ぎた頃だったわよね」


「そうね」


「海龍との海の旅も結構な時間をかけたと思うのよ」


「そうね」


「どうして、会議室を出た時間と変わらないのかしら」


「分からないわ」


静加も演習場の中央の柱にかかっている時計を見ながら、呆けた様子で実菜に返事をした。


「二人共どうしたのだ。異空間とヒトの住む空間は、時間の進みが違うのだから当然だろう」


二人の会話を聞いていたカントラが、不思議そうに首を捻りながら、当然の事のように言った。


「そんなこと知るかい!!」


静加が、激しくツッコミを入れた。

お読み頂き有難う御座いました。

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