表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/131

オトモダチ

気付けば、年末……。

忙しいのは、ご時世的に有難いのですが、いつもより更新が遅くなってしまいました。

いつも訪問して下さっている方にはすみません。

よろしかったら、続きをどうぞ。

静加の結婚の件は、納得いかない所もあったが、今はカントラの協力を得るのが先決だ。

実菜は、演習場でカントラを呼び出した。


「ごめんね、呼び出して。今日はお願いがあって……」


「まあ、落ち着け。また面倒事であろう?」


『今日は』ではなく『今日も』だろう。と、カントラは思ったが、それには口を出さず、鼻先を実菜に押し付けた。


「ふむ、なるほど。海から来る者にこの国が攻められるという事か」


実菜から顔を離すと、カントラは事態を把握していた。


「何で、何も言っていないのに分かるの?!」


「我は、記憶を読み取る事が出来るのでな。

ミナの記憶を読んだのだ」


そういえば、よく顔を近付けて来る気がするわ。そういう事だったのね。匂いを嗅いでいるのかと思っていたわ。


「しかし、空から防ぐとは、どうするのだ?船を沈めれば良いのか?」


「えっ!沈める?……そんな事をしたら、皆、死んじゃうじゃない!」


カントラの不穏な発言に、実菜は驚いて両手を振って反対した。


「何故だ?攻めてくる者は殺しに来るのだろう?ならば、その者達が死ぬのは、良い事なのではないのか?」


カントラは、不思議そうに首を傾げた。


「私は、死んで欲しいのではなくて……」


「実菜、戦争ってそういうもんよ?血を流さずに終えるつもりでいたの?」


振り返ると、静加が呆れた顔で立っている。


そうか……そうだよね。戦争するって、そういう事よね。深く、考えてなかったわ。

経験無いから分からないけど。

でも……私には、人を殺すなんて出来ない。


「何か……良い方法はないかしら」


実菜は、思わずカントラを見上げた。

そんな事を言われても、カントラも困るというものである。暫し思案するように首を捻っていたが、ヒョイと頭を持ち上げた。


「ふむ、海といえば、奴が居たな。

少しクセがあるが、穏やかな奴だから会いに行ってみるか。何か策を持っているかもしれん」


カントラは、同意を得たいのか、実菜の顔を覗き込む。

誰だかは分からないが、助けて貰えるのであれば、行ってみる価値はある。実菜は肯定する様に、コクコク頷いた。


「よし、では乗れ」


カントラは、地面に伏せをする様にしゃがみ込む。

しゃがみ込んだとて、乗るというより、よじ登る感じだが。


「ジュンコの子よ。お前はどうする。ここで待っているか?」


こちらを見上げている静加に向かって、カントラが問いかけた。


「私は飛べるけど……」


「これから行く場所は、異空間だ。ついて来るなら乗れ」


それを聞いた静加は、いそいそとカントラの背をよじ登って、実菜の隣りに来る。


「うーん、二人だと座りが悪いわね」


馬などと違って、安定する乗り方が分からない。

実菜は、カントラの背から、その頭の方を見上げると、立派な角が二本ある事に気付いた。


「これに掴まれば良いんじゃない?お誂え向きに二本あるし」


大きな角に抱き着き、背と言うより頭に乗る感じにはなるが、先程より心許無い感じは無い。


「少し、くすぐったいが……何にせよ、落ちないでくれよ?異空間は色んな場所と繋がってもいるからな」


「「はぁーい」」


異空間とは、どんな場所なのか。実菜と静加は、遠足にでも行く気分で返事をした。


「それにしても、静加が純子の娘だって良く分かったわね」


会った事があったかもしれないが、幼い頃だったはずだ。


「我は何でも知っている。ミナがジュンコだったという事も分かっていた」


実菜が、感心したように言うと、得意気な声が返ってきた。


「へー……」


ここからは見えないが、実菜には、カントラがドヤ顔をしているような気がした。



「では、行くぞ」


カントラが、空を爪でなぞると、何も無い所に切れ目が入り、パックリと開いた。そこに、こことは別の景色が覗く。

カントラは躊躇なくその空間に入り込んだが、この入口どうなるんだろう、と、実菜が振り返ると、空間の切れ間が塞がれていくのが見えた。


凄い、自動なのね。これなら、誰かが間違って入って来る事もないわね。


実菜は、感心したところで正面に向き直ると、そこで驚愕した。

目の前には海底が広がっていたのだ。


何これ、海の中なの?でも濡れてもいないし、呼吸も出来てる。


カントラが海の中を飛んでいるような、泳いでいるような、よく分からない状況だった。


「ねぇ!ここって海なの?!」


状況を説明してくれないカントラに、痺れを切らした実菜が尋ねる。


「海であって海ではない。少なくとも、ヒトの言う海ではない。裏側、とでも言っておくか」


謎掛けか、哲学か?……難しいわ。


大きな岩が幾つもあり、それを住処にしている魚が群れをなして目の前を行き交っている。陽の光が届いている事から、そこまで深くはないのだろう。


しかし、ここに住んでいるとは。カントラの知り合いは何者なのかしら。


実菜は周りを見渡すが、それらしき者は見当たらない。カントラも探しているのか、同じ場所を何度も旋回している。


「おーい!来たぞ!居らんか?」


カントラが大きな声で呼びかけた。

その時、視界の端に動く物が見えた気がして、実菜はそちらを凝視した。


何かしら……丸太?いや、もっと太いわ……良く見えないけど。


「ねぇ!あそこ、何かあるわ!」


実菜が、カントラの頭の上で「あそこ」と言った所で、カントラにはどこだかは分からない。カントラは海底に降り立った。


陽の光が射し込んでいるとはいえ、少し薄暗く、はっきりとは見えない。


「あの、岩と岩の間を何かが通り抜けた様に見えたの」


カントラの頭から、滑り落ちる様にして海底に立つと、実菜は何かがいた場所を指差した。


その時、また何か動く物があった。

ゴワゴワした壁の様な物が、横に動いているように見える。思わず、実菜はそこに近付いて行った。


「待てミナ、勝手に動くでない」


カントラが制止しようとしたが、時既に遅く、実菜はその壁に触れていた。


「何かしら……鱗?の……壁?にしては、少し丸みがあるかしら、緑色っぽいし」


実菜が触っていても、実菜の身長程の鱗の壁は尚も動いて行く。

実菜は、岩間からその壁が動いて行く方向を覗き込んだが、その先は岩に纏わり付くような感じになっていて、岩に隠れてしまっている。


「カントラ〜!これ、何かしらね?」


実菜は、壁を触りながら背後のカントラに話しかけた。


「それは、儂の身体だが?」


背後の、しかも上の方から、カントラではない太い声が降って来た。

驚いて実菜が振り返ると、カントラと静加も声の方を振り仰いでいた。


「騒がしいと思えば……久しい顔だな」


龍?!


そこには、カントラとはまた違うドラゴンがこちらを見下ろしていた。


カントラは、西洋ドラゴンという感じで翼を持っているが、目の前に現れたのは東洋ドラゴンとでもいうのか、翼は無かった。


「久しいな、海龍」


海龍は、蛇の様な動きで身体を引き寄せる。実菜が、先程の岩間を見ると、尻尾の様な物が通り過ぎる所だった。


「千年振りか?しかし、遊びに来た訳でもなかろう。何しに来た」


海龍は、実菜と静加と交互に見ながら、カントラに問いかけた。


「おヌシに知恵を借りたくてな。ヒトの世界で戦が始まるらしい。それもおヌシの住処である、この海域でだ」


海龍にカントラが、事態を説明すると、海龍は口を閉し、再び実菜と静加を順繰りと見やる。


「ヒトの世界には干渉せん」


海龍は静かに言い切った。


「でも、戦争が始まってしまうんです!」


実菜は、思わず叫んでいた。


「勝手に殺し合えば良い」


「でも、殺したくないんです!」


「では、殺さなければ良い」


「………」


どうしよう。会話にならない。カントラがクセがある、と言っていたが、このことだろうか。


「海龍、そう言わずに力を貸してはくれまいか」


「ホーリードラゴンよ、おヌシはそのヒトの子と主従を結んでいるようだが、儂には関わり無い事だ」


そう言うと海龍は、フゥーッと息を吐き出した。


「ヒトの子は、己の事しか考えられぬ、勝手な生き物よ。

当たり前の様に海の生き物を殺し、海を汚す。海が荒れれば、儂が怒っているからだという。

海の生き物を殺すのは良いが、己が殺されるのは嫌だという。

海が荒れるのは、儂の所為だと、儂を責めるだけだ。一方的に贄を放り込んできたこともある。

何が儂を怒らせたのか、伺う事もしなければ、考えもしないのだ」


海龍は、実菜を見据えた。


「戦争するも、しないも。互いに我を通そうとした結果だろう」


「でも、一方的に、強引に仕掛けてきたんです!」


再び、実菜は叫んだ。


「そして、困った時だけ、一方的に助けを求めるのか。助けなければ、こちらを悪にするか」


「………」


確かに、実菜達が海龍にしている事は、帝国と同じ事だ。強引に我を通そうとしている。それが、善悪どちらであっても、海龍には関係ない。

海龍が人間の思い通りになるか否かで、善か悪かを押し付けられて来たのであろう。そう感じた実菜は、二の句が継げなかった。


それまで、黙って様子を見ていた静加が前に進み出た。


「海龍様、お伺いも立てず、押し掛けて申し訳ございませんでした。確かに、人間は自己中心的で感謝の意を忘れ、傲慢になりがちです。

勝手に神に仕立て上げ、崇めたかと思えば、勝手に信仰をやめ、石を投げて来る。なんて事もあったかもしれません」


海龍は、黙って静加の話を聞いている。


「アンドロワ帝国は、信仰する事を禁じましたが、今でも帝国の紋章は龍です。

禁じられても尚、隠れて信仰している者も在るかもしれません。

だから、どうしろ、という理由ではないのです。

ただ、ここにいる者、ドラゴニアン王国は、帝国の理不尽を正そうとしているだけです。

帝国の民達を助けたいだけなのです」


「海龍よ。ここにいるミナは、汚れた海を浄化した。受けた恩を返さぬのが、海龍の道理か?」


静加とカントラの話を黙って聞いていた海龍だったが、深く息を吐くと、頭を擡げ、遠くを見るように瞳を細めると、ふっ、と笑ったように見えた。


「確かに……突然、海が澄んだように感じたが……そうか。

ならば、恩は返さねばなるまい。

それに……理不尽な帝国に鉄槌を下すというのも、かつて神と崇められた、儂の務めだろうて」


そう言うと海龍は、長い尻尾を大きく振り回した。

すると、薄曇りだった視界が明るくなっていく。それはまるで、海龍の気持ちを表しているようにも感じた。

お読み頂き有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ