女帝、覚悟を決める
今更ですが……強引な設定だなぁ。と、改めて思う、今日、この頃。
細かい事は気にせずお読み下さると助かります。
陛下に呼ばれ、実菜達が向かった先は、王宮の会議室だった。
小さめの部屋で、セシルが言うには、密談に使われる部屋なのだそうだ。
部屋に入ると、陛下は既に奥の椅子に座っていたが、入って来た実菜達を見てギョッとした顔をした。
もしかしたら、実菜とシャーリン、若しくはシャーリンだけを呼んだつもりだったのかもしれない。と、実菜は思ったが、気付かぬ振りをした。
全員、座れる広さだし、大丈夫よね。
「……まあ、問題なかろう。皆、座ってくれ」
案の定、皆、その場を追い出されることなく、着席する事が出来た。
「陛下、今日は御前会議だったはずでは?」
着席するなり、ロイが陛下に問う。陛下は、テーブルに両肘を付き、両手を組み合わせた姿勢のまま、視線だけをロイへ向けた。
「ああ、先程、終了した」
時間としては、少し早い気もするが、陛下の表情からは何も読み取れなかった。
しかし、次第に顔が曇り、溜息の様な息を吐くと、シャーリンへと視線を移す。
「危惧していた事が起きてしまった。
今日、アンドロワ帝国より、書簡が届いた。
……宣戦布告、という事だ」
シャーリンは、目を見開いた。
「それは……ドラゴニアンが私を拉致した、という事にでもなっていると?」
陛下は、シャーリンの問いに、苦い顔で頷く。
「そんな?!こちらには、向こうの悪事の証人もいます!」
ロイが、椅子を鳴らして立ち上がり、訴えた。
「まあ、落ち着けよ、ロイ。
……しかし、早過ぎませんかね〜。
まるで、彼女がここに居る事を、最初から知っていたみたいな早さですよね〜」
珍しく、セシルが真っ当な事を言った。ロイもそう思ったのか、恥じ入るように椅子に腰を下ろした。
「もしかして、書簡を持って彼女の乗った船を追ってきてたんじゃないの〜?
そして、頃合いを見て書簡を持って来る」
何故か楽しそうに静加が言う。クスクスと笑い出しそうな雰囲気だ。
「その、相手側はいつ攻めてくると言っているのです?」
カイルが詳細を聞き出そうと、身を乗り出した。
「……もう既に、こちらに向かっているようだ」
「んなっ?!」
「順調に進んで来たなら、早くて明後日頃であろう」
そんなに早く……戦争が、始まる?!
「どちらにせよ、口を塞げれば……勝てば良い、と帝国は思っているのだろう。
我が国は……随分と、舐められたものよのう」
そう言うと、いつも穏やかな陛下が、今まで見た事のない目で空を睨み付けた。
「私、そういうの大嫌いなのよね。
そういう奴等は……返り討ちにしてやりたくなるのよ」
静加は笑顔だが、目が笑っておらず、不穏な空気を醸し出している。
と、そこまで黙っていたシャーリンが、突然、立ち上がった。
何事かと、皆の視線がシャーリンへと降り注ぐ。
「……私は、今まで、何をしていたのか。
臣下に、死にたいと思わせてしまうなど……身近な者でさえ、幸せにしてやれない。
……私は、甘えていたのだ。突然、戴冠する事になり、若い私は何をしても、無理だと。
頑張っている振りをして、何も出来ていなかった。
覚悟が……女帝としての覚悟が足らないどころでは無い……最初から無かったのだ」
時折、シャーリンの言葉が震える。独白とも思えたが、皆、黙って聞いていた。
「私は女帝なのだ。帝国は、私の国だ……この始末は、私の手で終わらせる」
シャーリンはそう言うと、空を見据えた。
その瞳は強い光を宿していた。
「……水を差すようで悪いけど、貴女だけでは無理だと思うわ」
申し訳なさそうに、静加が口を挟んだ。
「しかし……」と、シャーリンは返そうとしたが、静加の言う事が、尤もなので口を噤む。
「甘えるのと、頼るのとは、全然違うよ?
自分の出来る事、その限界を知る事も能力。いざという時、助けてくれる……頼れる仲間を作れる事も、能力の一つだ。
寧ろ、どんな人間を仲間に持っているか、というところが重要。それが、本人の価値にも繋がる。
……どんな人間と信頼関係を築ける人間なのか。
どうでも良い人間には、同じ様な人間が寄って来る。
……だから、卑劣な手を使うのかもね。
あ、勿論、それを見極められる目も重要!」
静加は、最後に人差指を立てて、言葉を付け加えた。
静加の言葉に、シャーリンが微かに頷く。
「しかし、全面戦争は避けたい。
シャーリン、現状アンドロワの軍事力はどの程度だ?」
陛下も、迎え撃つ事を選んだようだ。
「病気により、半減しましたので、今の軍勢は5千程です。
大型船は10隻、小型船は50隻。
恐らく、全軍は出さないでしょうから、進軍は千程とみて良いでしょう。
先ず、港を占拠し、大型船が入れない所から小型船で侵入し、制圧していくと思われます。
大型船が積んでいる大砲の射程距離は100メートル程なので、海戦でなければ威嚇程度にしか使われないはずです」
シャーリンは、淀みなく答えた。それに対し、カイルが顔を顰める。
「我が国は、騎士団……魔導師団も含めても、2千が精々……上陸させたくはないですね」
かといって、海戦も厳しい。カイルの表情は、そう語っていた。
「なら、海上で何とかすれば良いのよね?」
静加の、まるで「何でもない事」のように言う台詞に、皆が注目した。
「静加、何か策があるの?」
勿論、ドラゴニアンの騎士団も、訓練はしているはずだし、戦争経験もあるはずたが、場数が圧倒的に違う。
百戦錬磨のアンドロワと、どう勝算のある海戦をするというのか。
実菜は、その場の者を代表して尋ねた。
実菜の問いに、静加はニヤァと口角を上げ、人差指を実菜に向ける。
「私達は、空から防ぐのよ」
「「空?!」」
シャーリンは、戸惑い、陛下を見やった。陛下は、セシルとロイに「何を言っている?」とでも言いたげな視線を向けた。
「でも、静加!貴女は空を飛べるけど、私は飛べないわよ?!」
静加の言う、私達とは誰を指しているのか。実菜には静加の意図が読めなかった。
「何を、素人みたいな事を言っているのよ。
実菜には、空中戦が得意な、恐ろしい程頼れるオトモダチがいるじゃないの」
「へ?オトモダチ?……あっ!!」
カントラの事か!!確かに、恐ろしい程頼れるわね。
実菜やセシル達は、合点がいったが、陛下とシャーリンはキョトンとしている。
「陛下、以前、報告しましたミナの、空を飛ぶ友人の事のようです」
「む、そういえば、今回もそれで、早い浄化対応が出来たのであったな」
ロイが説明をしてくれて、陛下も頷いた。
「もしかして、港で噂になっていた、大きな鳥の事ですか?」
シャーリンにも、何となく伝わったようだ。少し違うが、大差無い。と、実菜は詳細は語らなかった。カントラが聞いたら怒るところである。
「そうね、後は……協力してくれるか、お願いしてみましょう」
一度、呼び出して……やっぱり、演習場が良いかしら。
ならば、早い方が良いわよね。
「陛下、今からお願いして来ても良いですか」
実菜は、お許しを貰い、演習場へと向かう。何故か静加も付いて来ると言う。
彼女が来るという事は……と、実菜は思ったが、案の定、セシルも付いて来ようとした。
しかし、ロイが引き止め、流石のセシルも陛下の手前という事もあり、大人しく引き下がった。
「しかし、セシルは本当に、静加といつも一緒にいたいのね」
静加と演習場に向かう途中、実菜が半ば呆れて、思わず口に出した。
「あ〜、それな〜」
静加は、迷惑そうに言っが、口元が綻んでいたのを実菜は見逃さなかった。
なんだ、静加も満更でもないのね。
「そうそう、私達、結婚したのよ」
「へー、そうなんだ、それは、おめで……と、う?!」
一瞬、何を言われたのか理解しきれず、実菜は聞き流しそうになったが、何とか踏み止まった。
「ご、こめん、静加、何か私、聞き間違えだと思うんだけど、結婚、て聞こえたんだけど?」
「うん、正解。結婚したって言った」
あまりに、サラッと言うので、冗談なのか、本気なのか、実菜は、軽く混乱した。
「あ、あの、差し支えなければ、いつしたのか聞いても良いかしら?」
「えーと、3日前になるのかな?」
「えーっ?!そんな雰囲気無かったじゃない。何で何も言ってくれなかったのよ?!」
「急だったからさ〜、実菜は浄化しに飛んでっちゃってたし」
そうだ、3日前といえば、その日だ。そして、急だったという事は……。
「もしかして、おめでた……」
「ちがぁーーーう!!」
実菜がびっくりする程、静加が反論する。「今回は、順番を守るって決めたのよ」と、何やらモゴモゴ言っているが、実菜には意味が分からなかった。
「あの人はねぇ〜、自分に自信が無いのよ。
だから、私が他の男と、自分がついて行けない話をされるのが不安なのよ。
私との繋がりが確固たる物になれば、不安も無くなるっていうから、仕方なく、ね。
まあ、そういう人は、考え方を変えない限り、どこまで行っても不安が付き纏うものなんだけどね〜」
どことなく遠い目をして、静加が経緯を説明した。
「えーと……結婚て、そんな風にするものなの?」
「そもそもの発端は、実菜なんだからね!」
「えー?!どういう事よ!言いがかりだわ」
3日前のあの日、実菜繋がりの話をロイとしていた所からの流れでこうなったのだが、静加は説明するのも面倒くさくなり、プンスカしている実菜を放置する事に決めた。
お読み頂き有難う御座いました。




