表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/131

帝国の事情②

今回も短めです。

いつも細切れですみません。

よろしければ、続きをどうぞ。

「あら?ロイ、どうしたの?その荷物」


結局、囚人との面会には実菜をはじめ、静加とそれに付随するようにセシル、それを監視するようにロイ、カイルも同行する事となり、今日がその面会日で、一度、セシルの執務室に集合したのだが、執務室に入って来たロイの手には、箱やら包みやら紙袋やらがあった。


「私も、良く分からないのですが、寮からここに来るまでの間に色々な人から頂きました」


そう言いながら、応接テーブルに荷物を置くと、ロイが貰った物だというのに、セシルと静加はゴソゴソと中身を確認し始める。


「ロイ、貴方、今日が誕生日か何かなの?

クッキーとか、チョコレート……あっ、これマフィンよ!美味しそうね」


中身を確認した静加がロイに問うが、ロイは思い当たる節が無いと言う。


「急にモテモテになったのかしら」


実菜の言葉に、ロイは渋い顔で振り返った。


「それはないです。男性もおりましたし、これを渡される時、何故か励まされましたので」


男性でも、ロイの事を好きかもしれないじゃない。と、実菜は思ったが、励まされたと聞いて口を噤んだ。


これは、先日の大捕物の後の出来事の後遺症なのだが、その事実を知る者はこの場には居らず、謎が深まるばかりであった。


「……まあ、美味しいから、良いんじゃない?」


セシルが、口をもぐもぐしながらロイにその箱を差し出す。


「食べたのですか?!毒でも入ってたらどうするんです」


「……実菜がいるから、大丈夫じゃない?」


焦るロイに、セシルは呑気な返事を返している。


おいおい。くだらない理由で人を使おうとしないで欲しいわ。

と、思いながらも、実菜は「お菓子にはお茶よね〜」と立ち上がった。



「おい……何故、茶会が開かれているんだ?」


実菜が、お茶を淹れ終わった頃、ノックも無しに執務室の扉が開きカイルが入って来ると、室内の状況に呆れた顔をした。


「何故かロイが沢山の差し入れを貰って来たから、おやつタイムにしたんだ」


実菜の淹れたお茶を飲み、マフィンを頬張りながら、セシルは視線だけをカイルに向けて答えた。

カイルは、本当に茶会を開いた理由を聞いた訳ではなく、「そんな時間ねーだろ」という意味合いで言ったつもりだったが、セシルには通用しなかったようだ。

カイルは、ちらりとロイと差し入れの菓子を見比べると、ロイの肩に手を置き、ポンポンとする。


「良かったじゃないか、元気だせよ?」


若干、揶揄するような、その言い方にロイの片眉が上がった。


「良かった?元気だせ?

……もしかして、この理由をご存知なのですか?」


「理由かどうかは知らないが……お前が彼女をセシルに横取りされて、こっ酷く振られた可哀想な男。という噂なら知っている」


カイルは、笑いを堪えているような顔で、セシルと同じ様にマフィンを頬張る静加を見やった。


「はぁああぁーっ?!何だそれは?!何がどうなると、そうなるのだ?!」


ロイは、目玉が零れそうなほど瞠目し、絶叫に近い声を発した。

当の本人の静加もセシルも、実菜もこれには目を丸くして驚くしかない。


「ロイ、貴方、私に振られていたのね。知らなかったわ」

「やっぱり……お前、そうだったのか……」


「……あなた方は、少し黙っていて下さい」


好き勝手な事を言う二人に、ロイが抑えた声で一喝すると、セシルと静加は肩をすくめた。

ロイは疲れたような顔をカイルに向けると、カイルの言葉を促す。


「悪い悪い。これは第二騎士団(うちのやつら)が元凶だと思うが、人の口に蓋は出来なくてな。

あっと言う間に、噂になってしまったんだ」


恐らく、蓋をする気もなかったのだろうが、あの日のやり取りを、客観的に見るとどう見えるか、カイルが改めて説明した。


「まさか……あの時のアレが?

話の内容は、全くそんな事では無かったではないか?!」


「話の内容までは聞こえなかったからな。ただの痴話喧嘩に見えたぞ?

……まあ、人の噂など直ぐに消える。気にするな」


そう言うとカイルは、ロイの背中をバシバシと叩いた。



永遠に面会時間が許可されている訳ではない。

ショックが抜け切らないロイと、カイルに追い立てられ、セシルが重い腰を上げると、一行は地下牢に向かった。

向かう途中、ロイが「あ、そうそう」と実菜を振り返る。


「ミナ、お願いですから、余計な言動をしないで下さいね。

……シズカもです。先走るのは止めてくださいね」


目を泳がす実菜を見据えながら、ロイが念を押す。


もしかしたら、もう、遅いかも……。実菜は思ったが、口にするのは躊躇われた。


そんな実菜の様子に、訝しげにしていたロイだったが、諦めたように歩を進める。

 

地下牢か……。


何度行こうと、決して気持ちの良い場所ではない。薄暗いし、カビ臭いし……しかしその先に、面会を希望しているという男は居た。


無精髭に、やや窶れた感じはあるが、あの日、実菜を迎えに来たあの男だった。

実菜を認めるなり、その男は必死の形相で、鉄格子にへばり付く様にして叫び出した。


「聖女様!お願いです!自分は処刑されても仕方ありません。

ですが、お願いですから……シャーリン様を、皇帝陛下を、お助け下さい!!」


窶れた顔ではあるが、瞳が濡れているのか、目だけはキラキラとして見える。


「……どういう事ですか?」


実菜の前に出ようとするカイルを手で制し、実菜は静かに男に問うた。


「我が国では、今……流行り病が……シャーリン様が……このままでは、宰相に見殺しにされてしまう……そしたら、そしたら我が国はもう……」


伝えたい事は沢山あるようだが、嗚咽が混じり何を言いたいのか、いまいち的を得ない。


「あなた、お名前は?」


実菜は、先ずは落ち着かせようと、彼の名前を聞いた。


「……イーサン」


イーサンは、名前を答えながら息を吐くと、肩の力が抜けたようだ。袖で涙を拭うと、もう一度息を吐き、実菜を見据えて口を真一文字に結んだ。

実菜も、彼の瞳を見返すと口を開いた。


「イーサン、貴方の言いたい事は……シャーリン皇帝陛下が、流行り病に侵された事で、帝国の乗っ取りを企てている宰相に、陛下は病気で死んだ事にして殺されてしまう。

そうなったら、帝国は完全な独裁国家となってしまう。

……そういう事かしら」


実菜が、イーサンの紡いだ言葉を纏めると、彼は目を見張った。


「そう、です。今は、陛下が止めていますが……宰相の拷問理由は、酷いものです」


「属国の民を先ずは拷問するところから始めるとか……」


「そうです!収容所に集められ、帝国に忠誠を誓わなければ、死ぬまで……それを他国に知られぬよう、国中に監視役が居ます……少しでも帝国に対する暴言や、怪しい言動があれば、また、収容所に……」


その光景を思い出したのか、イーサンは顔を歪め、俯く。


その時、地下牢の入口の方に人の気配を感じ、実菜はそちらをちらりと見やる。イーサン以外の者はそれに気付き「誰だ?」と言いたげな顔で、身構えた。


「聖女様は……ご存知だったのですね。

……本当は亡命したい。でも、シャーリン様をお護りしたい。せめて、病気だけでも、治して差し上げたいのです。

自分の命と引き替えでも構いません。いや、自分の命と釣り合うとは思ってはいませんが、それでも、お願いします。シャーリン様を助けて下さい!」


「イーサン……帝国の事を教えて下さった方が居まして……その方が、貴方達に会いたいと。

……イーサンはこう言っていますが」


実菜は、そう言うと背後からやって来た者を振り返った。イーサンは実菜の言葉を不思議に思い、顔を上げ実菜の視線を辿ると、その先にはドラゴニアン王国の警護を連れ、旅人用のローブを纏った者が立っていた。フードを目深に被っているので、顔は分からない。


「そんな……まさか?」


イーサンはそう呟くと瞠目し、その者を凝視したまま二の句が継げずにいた。


「イーサン」


その者がフードを外すと、ポニーテールに結った銀髪がローブにこぼれ落ち、奥二重で少しつり目の瞳が、イーサンを見つめていた。


「……シャーリン様?!」

お読み頂き有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ