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ブラックですか?いいえ、ホワイトです

ブックマーク登録、ポイント有難う御座います!

びっくりと感謝を同時に感じて、おかしな感情になってますが、これからも宜しくお願いします!

「ここは魔導師団第三師団の研究室なんだ」


私が先に部屋に入ると後から入ったリードが言う。

部屋の中はビーカーやら試験管やらに何やら怪し気な液体が入ってはいるが、一言で言えば理科室の様な造りだった。


魔導師団は第一師団が主に戦闘を担っていて、第三師団は魔導具や魔法薬を研究し作っているのだそう。

第二師団も昔はあって、王族警護を担っていたそうだが、今は人材不足の為その時々で第一師団の団員が兼任しているのだとか。


「セシルは魔法が好き過ぎて関連するものは何にでも首を突っ込みたがるから、この研究室にもよく来るんだ」


困るよね〜、とヘラッと笑う。


「師団長、その女性は何方ですか?!とうとう春が到来したんですね?!」


書類やら備品やらに埋もれて気付けなかったが、既に中に居た団員がニヤニヤしながら揶揄う様に声を掛けて来た。


「そうだよ。と、言いたい所だけど違うよ。まったく……失礼の無いようにしろよ!何しろ暫く手伝いに来て下さるんだ……えぇと?」


苦笑しながらリードが私を紹介しようとして言い淀んでこちらに視線を寄越した。


「神倉実菜です。宜しくお願いします」


そういえば、名前言って無かったっけね。


「女性が来て下さるとは!自分はリカルドと言います。気軽にそう呼んで下さい。

それにしても珍しいお名前ですね。何とお呼びしたら良いですか?」


あ、そうか。もしかしたらこの国だと名字と名前が逆なのかな?


「神倉は多分発音し難いと思うので、実菜と呼んで下さい」


リカルドは笑顔で頷いた。


「実は魔導師団は女性の師団員が居ないんだ。何か不都合があったら言ってくれ。一応これでも師団長だから」


兄弟で師団長なのね。凄いわ。

でもこの二人のやり取りを見る限り職場の雰囲気は良さそうで安心した。研究室内を良く見渡すと他にも五名程の師団員が此方を見ていた。

皆、濃い青色の服を着ている。リードもセシルも同じ物を着ているからこれが団服なのだろう。


リードに促され奥の作業台?の方へ行く。途中、他の師団員達に会釈しながら進むと皆笑顔を返してくれたので邪魔にはされてないようだ。

少し安心した。もしもの時の就職先の一つにさせてもらいたい。




「今、必要とされているのが回復薬なんだよね。騎士団も魔導師団も魔物討伐に出てるからさ。一回の討伐に最低100個は持たせてる」


言いながら作業台の上にあった鍋に何種類かの薬草らしき物と水差しの水を入れていく。


「討伐が長引けば支援物資として追加もされる」


コンロに火を着け鍋をかける。


「んで、この鍋で一度に作れるのが10個程」


暫くすると鍋から湯気が上がる。それを様子を見ながらかき混ぜる。


「この作業を透明な液体に成るまで続けると十時間くらいかかる」


「はぁっっ?!」


それでは単純計算で一日10個という事になりますけど?まぁ、隣の作業台にも鍋がありますけど、それでもねぇ……二十四時間体制かしら、リードが窶れてる理由はこれね。


それから私が作業に慣れる迄、リードは世間話をしながら一緒に鍋をかき混ぜてくれていた。



いやぁ、あんな緑のドロドロがこんな透明のサラサラになるなんてねぇ。

リードが言った通り十時間程で透明な回復薬が出来上がった。

作業開始が十一時頃、つまり今はとっぷり夜も更け二十一時過ぎ。後は透明な小瓶に注いで作業終了!!

はぁ〜、疲れた。単純作業も長時間だと疲れるのよね。


そういえば食事も取ってないじゃない〜!なんか既視感があるんだけど……何処の世界でもブラックってあるのねぇ…ふぅ。



「初日から大変になっちゃってごめんね。食堂があるから行こうか、団員は夜勤もあるから夜中でも厨房に誰かしら居て何か作ってくれるんだ」


一緒に食堂に行くと、やはり数人の団員がいて厨房に向かって何か注文しているようだった。


魔導師団は青色の団服だが、其処に居たのはデザインは同じでも、赤色の団服だ。もしかしたら、騎士団なのかもしれない。


「日勤の騎士団かもね。独り者だと此処で食べて帰るのが多いみたいよ」


リードは心の声が聞こえるのか?!私の疑問に的確に答えてくれた。



「……そういえば、私は何処に泊まれば良いんでしょう?何時までもあんな豪華なお部屋をお借りするのは申し訳ないです」


サンドイッチなら直ぐに出せると言われたので二人でそれを頼み、口に運びながらその疑問は口にしてみる。流石に何時までも王宮にいる訳にもいかないだろう。


「良いんじゃないの?陛下も文句は言わないでしょう」


良いのかなぁ。まぁ、陛下の謁見とやらもまだだし、沙汰が出るまではお世話になりますか。部屋を借りるとしても資金がないし。



部屋に帰るのに迷子になりそうだ。と心配したけどリードが王宮の部屋まで送ってくれたので、事なきを得ました。ふぅぅ。

王宮って迷路みたいで兎に角広過ぎなんですよ。



やはりメイドさん達が出てきてあれやこれや世話を焼いてくれましたが、お風呂は一人で入る事を死守しました。




***


あれからひたすら回復薬を作る日々が続いた。

初日は此処でもブラックかぁ、と思っていたけど次の日には17時にはリードが作業を交代してくれて部屋に帰れる様にしてくれた。

それからも時間には誰かが交代してくれたので、私はしっかり休めた。お陰で空いた時間を王宮の図書館に行ったり、王宮の敷地を出なければ良いということで散歩したりと以外と充実した毎日を送り、気付けば此処に来てから二ヶ月が経とうとしていた。





「回復薬は今何個ある?」


無愛想な低い声が研究室に響いた。声のした方を見ると騎士団の団服を纏ったガタイの良い短髪の男性がリードに話し掛けている。


「カイル。支援物資か?」

「ああ、そうだ。有れば有るだけ良い」


「ミナ、在庫はどの位残ってた?」


「えーと、30個程だったと思います。確認して来ますね」

「頼む」


リードが私を振り返った事でカイルと呼ばれた男性は、初めて私の存在を認識した様で微かに目を見開いた。

回復薬を保管している棚に向かった私の後ろで「女がいるのか?」などと声がした気がする。


うん。やっぱり30個だわ。


「リード、やっぱり30個です」


振り返ってリードに答えるとカイルと目が合ったが、直ぐに逸らされた。此処に女性が居るのが珍しいのだろうけど、あからさまなのは少し傷付くわぁ…。

研究室の師団員達とは大分打ち解けて来てただけに。

女性蔑視まではいかないが、団員でもない私の存在が不思議だったのだろう。研究室以外の廊下等では初めの頃はかなりジロジロ観られたものだ。




「全部貰いたいのだが」

「カイル、全部は厳しいな、せめて20個にしてくれ」

「仕方無いな、じゃあ、それで頼む」



棚から20個出して籠に入れてカイルに渡そうとしたが何故か顔を逸らされているので中々カイルに籠が渡らない。ふざけてるの?ラチがあかないんですけど?

仕方ないのでカイルの手を取って籠を持たせたが、急にカイルがビクッと肩を揺らして籠を落としそうになったので此れにはかなり肝を冷やした。これだけ作るのかなり大変なんだからね!



カイルはガタガタと机や棚にアチコチぶつかりながら部屋を出て行く。

あまり周りを見ないタイプの方なのかしら?


「グファッ!」


騎士なのにそんなにオッチョコチョイで大丈夫なのかと心配しながら見送っていると、後ろから変な声がした。


見るとリードが肩を震わせている。


「どうしたんですか?!」


朝は何でも無さそうだったけど具合でも悪くしたのだろうか?手で口を覆っているけど、顔が赤いのが分かる。


「も、ダメ、カ、カイ、、が、フフ」


え……?


「ぶっ!!ハハハハハ!」


その時逆方向にいたリカルドが突然笑い始めたのでビックリして振り返ると身体をくの字にして大爆笑している。


「アハハハッ!こら!リカルド!せ、折角、我慢してたのに!フハハハ!」


リードまで笑い始める。


「な、何ですか二人とも?何かあったんですか?!」


一人置いてけぼりでついて行けない。リードは涙まで流してる。




「いや、何時も無表情で澄ましてるあのカイルが動揺してるのが面白くてね、それにしても、、意識し過ぎ……ふふ」


少し落ち着いてからリードが説明してくれたが、話しながら思い出してしまったらしく、またヒイヒイ言い始めてしまった。


「良いもの見せて貰いましたよ、冷血漢と言われている彼も人間だったんですね〜。

そうだ!今度騎士団へのお使いはミナに行かせましょうよ!絶対面白い事になりますから!!」


リカルドは何やら興奮している。

要は先程のカイルが何時もと違うのが可笑しかった。と言う事らしい。



「ヒィヒィ……。ああ、そうだな。じゃあ、早速お使いを頼むか。ミナちょっと待ってろ、これを第ニ騎士団団長カイル・マスタングまで持って行ってくれ」


リードは便箋に何やら認めると封筒に入れ封をする。


「いいか、これを直接彼に渡してその場で読ませるんだ。そして返事を貰うまで帰って来るなよ」


「え、う、うん。分かったわ」



大爆笑の余韻が隠し切れない顔でリードから封筒を受け取る。

流れが良く分からないがこの位のお使いなら問題ない。騎士団の場所も分かっているし。

散歩しておいて良かった〜。

お読み頂き有難う御座いました。

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