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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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過去は過去③

実菜の精神状態?の話で場面転換が多いです。

読み辛いのが続きます。ややこしい話ですみません。

宜しくお願いします。


「ジュンコ、どうしたんだい?ボーッとして」


ボサボサの金髪を無造作に一つに纏めた男が声をかけてくる。


「じゅんこ……?あ、ああ。そうね、何でもないわ」


そうよね、私は純子だわ。ふふ、おかしいわね。一瞬自分が誰か分からなくなるなんて。


「ところでアレク。これは何?魔物ではないわよね?」


アレクサンドロスの家に魔術を学びに来た純子は見慣れない物を指差す。

アレクの机の上に手に乗るくらいの黒い火の玉らしき物がぷかぷかと浮いていた。


「また何か召喚したのではないでしょうね?!

この前、手負いのドラゴンを召喚して大変だった事を忘れた訳ではないないわよね!」


普段は穏やかでも致命傷を負ったドラゴンは気性が荒くなっていた。

小さな森が一つ吹き飛んだだけで済んだのは不幸中の幸いだったと言える。


アレクはそれを思い出してか、苦い顔を純子に返す。


「その節はジュンコにお世話になりまして、助かりました。

でもコイツは召喚したんじゃなくて、山でポツンとしてて寂しそうだったから拾って来たんだ。

クラウドって名前を付けた」


「ああ、それなら良い……じゃないわよ!

山って、瘴気の山の事?!

犬や猫じゃないのだから、何者か分からないものを簡単に拾って来て飼わないでよ」


禍々しさは感じられないけど黒い姿に赤い目をしているなんて魔物みたいじゃないの。


純子は腰に手を当てぷくっと頬を膨らませた。

その純子の腰が隣の者の腕に攫われる。


「ジュンコ、アレクはそういう奴だ。今更だろ?」

「ラインハルト、でも……」


不服そうに純子が隣のラインハルトを見上げると、彼の金色の瞳が純子を優しく見下ろしていた。

その様子にアレクも不服そうな声を上げる。


「独り者の前であまりイチャついて欲しくないのだけど」


「イチャつくなんて……」


純子が振り返ると、黒いクラウドの赤い瞳と視線が打つかる。


「お前も独りだ。独り、独り……」


クラウドが純子をその赤い瞳で見つめて、声を発した。

クラウドと名付けたソレが言語を話すとは思っておらず、驚いて「えっ?」とアレクに視線を向けると、彼は無表情に純子を見つめていた。

その瞳は赤く染まっている。


「お前は誰だ?」そのアレクが口を開く。


「……アレク?何を言っているの」


私は、純子よ?


そう言おうとしたが、喉が詰まって上手く言葉が出ない。


「お前は独りだ、お前には誰もいない、いない、独り、独り……」


アレクの言葉がエコーがかかったように純子の頭に響く。


え?え?何が起きているの?


「ラインハルト?!」


ハッと気付くと、先程まで隣に居たはずの彼の姿がない。

それどころかアレクの家にいたはずが、いつの間にか暗い空間に純子は居た。


「どこにいるの?!ラインハルト!!……アレク!」


純子は恐怖を感じ、その暗い空間を闇雲に走り、声を上げるがその声は闇に吸い込まれるだけだった。


「独り……なの?」


何が起こったの?

だって、さっきまで皆でいて……。


嘘よ、だって私にはラインハルトがいて、娘がいて。


……本当に?


「本当に……独り?」


純子が両膝をつき、絶望した様に呟くと「そうだ!お前の様な嘘つきの魔物の手先に仲間などいない!!」と声がし、ガヤガヤとし始めた。

純子が顔を上げると沢山の村人達がこちらを睨んでいる。その中に居た子供達が石を投げつけて来た。


「ガツッ」とその石が純子の頭に当たると温かい物が頬を伝い、鉄の匂いがする。


突然の痛みに呆然としていると、手に石を持った子供達が増えてくる。


「ジュアンは嘘つきー!」「魔物はあっち行けー!!」「気持ち悪い奴ー!」子供達が次々と手にした石を投げると、腕や足にもそれが当たった。


ジュアンて誰?私は、わたしは……?


わたしは……わたしにしか出来ない事があったから……頑張っただけで……。

何でこんな事をされなくてはならないの?


「痛い……ラインハルト、どこ?」


彼に、彼に会いたい。


ふらふらとしながら立ち上がると、左右からぐいぐいと腕を引かれる。見ると先程こちらを睨んでいた村人達だ。


「聖女様、こちらを先にお願いしたいのです」

「何を言う。お前は聖女様を嘘つき呼ばわりしていたではないか」

「それはお前もだろう!」

「聖女様、聖女様、聖女様……」


先程とは手の平を返した様にニコニコとしながら村人が群がり、両側からジュアンの腕を引いている。

聖女様と呼ぶ声が身体に纏わりつくようで気持ち悪い。

村人達の笑っていない瞳も、笑顔の仮面を被っている様に見え、恐怖を感じさせた。


酷い仕打ちをしてきたクセに……。


「やめて!私は彼に会いたいだけなの!」


群がる村人を振り切りその場から走り出す。

暗闇をどこに向かっているのか分からないが走り続けた。


「ラインハルト……」


会いたい、会いたい、会いたいのに……どこに居るの?!


暗闇の中に人影が浮かぶ。


「ラインハルト!!」


その人影、金髪の男性がゆっくり振り返ると彼の金色の瞳が光っているように見えた。

駆け寄り、近付こうとするがその姿は煙の様に消えてしまう。


「どうして……?」


そこへまた人影が現れる。

ラインハルトと同じ金色の瞳だが、髪は純子と同じ黒髪の幼女だ。


「静加……」


「あなた、誰?」


静加の冷たい金色の瞳が純子を見つめる。


「わたしは……」


「迎えに行くって言ったのに、嘘つき。

……私を捨てたのね?」


静加の口角が不気味にニヤァと弧を描く。


「違う、違う!!嘘じゃないわ!わたしは……」


「嘘つき、嘘つき、嘘つき……」


「違うのよ!!」


頭の中に響いて来るような静加の声から逃げるように再び走り出す。

もう前に進んでいるのか、止まっているのか訳が分からなくなっていた。


違う、私は静加を捨てたんじゃない!

だって、あの時は……危険だったから……。


熱いものが頬を伝い、足を止める。

涙で視界が歪んだはずだか、暗闇ではどちらでも同じだった。


ふと、純子は気付く。

暗闇にも関わらず、視界が開く様な、鮮明になる様な、不思議な感覚だった。


違う、違うのは先程の静加だわ。


「あの子は……あの子はそんな事は言わない!!」


何故だが頭がクリアになっていく様に感じると、行く先に微かな光りが見えた。


出口だわ!!


直感でそう思うと、夢中でそちらに向かって走る。途中、いつの間にかどこかの森の中を走っている事に気付いた。


『貴女は誰ですか?』


突然、姿は無いが静かで優しい声が響いた。

どこかで聞いたような声だと感じたが、誰だかは気付けなかった。


「私は、神倉実菜よ!!」


誰だかは分からないが、その声の主に向かって走りながら実菜が叫ぶ。


『ふふ。では、そのまま真っすぐ走り抜けなさい。後ろを振り返る必要はありません。

もし、振り返る事があったとしても、その時にはもう既に過去は癒やされています。

そして、貴女に必要なものはこの先にあります。

貴女ならそれを見つける事が出来るでしょう』


実菜は木の枝や草に足を取られそうになるが構わず走った。

こんなに走っているにも関わらず、身体が軽くなっていくようにも感じていた。



そうだった。私は純子だった、そして……ジュアンだった。

でも、今は違う。違う人生を歩んでいるのだわ!



森の木々が開かれ、そこから眩い光が射し込んでいる。

実菜はその光りの中へ、迷う事なく飛び込んだ。


『ミナ、有難う。あなたがあなたとして、幸多き人生を送れますように……』


実菜に向けられたその声は、風を纏う光りに掻き消され、その中に飛び込む実菜の耳には届かなかった。



光りが眩しく思わず目を瞑っていた実菜だったが、再び目を開いた時には、元いた病室の床にへたり込んでいた。


「わっ!!びっくりした!」


超至近距離に静加の顔があり、びっくりして思わず後ろに仰け反る。


「ちょっと!意識が戻って来た途端、それは無いでしょ!」


静加がぷぅ、と頬を膨らませた。


先程の事もあり、実菜の心拍数は上がったが、外見は変わっても何も変わらない、ということを感じる。

彼女はデイジーの姿を借りていた静加だったのだ。

最初から静加だった。

だから、何も変わらない。


それはそうか、と気付くと何となくおかしくなって「ふふっ」と実菜が笑うと、それを見た静加もホッとしたように破顔する。


ハッとして周りを見ると、皆、実菜に注目していた。

それに気付くと急に恥ずかしくなり、今更ながら顔が熱くなる。


どのくらい、この状態でいたのかしら。

物凄く長くも感じたし、短かったような気もするし……。


「んー、何が起きたのか詳しい事は良く分からないけど、やっぱり時期だったんだろうねぇ〜。

……という事で」


沈黙を破る様に、アロンが静加を見つめながら口を開いた。

注目がアロンへ向く。

皆が注目したのを確認すると、アロンは満足したのかニコリとしてみせ、徐に使用人が持っている包みを解いた。


白い布の中から出てきたのは、一枚の肖像画だった。


「これは、本来の建国当時に飾られていた、初代王家の肖像画だそうです」


実菜の身の丈はあろうかという大きさで、金の宝飾がされた額縁に収まるそこには、頭に王冠をのせ、白いドレスを着た黒髪の女性と金髪の男性、そして男性に抱かれた小さな女の子が描かれていた。

女の子の瞳は金色で二人の子供であることが窺える。


「ジュアンによると、この女性がジュンコだそうです。

そして夫のラインハルト、娘のシズカ」


懐かしい……。

そういえば、この時のティアラって、陛下から頂いたティアラと似ているわね。

上手く記憶を融合出来たのか、不思議と色んな事がすんなりと受け入れられた。


「これは静加が3歳になった時に描いてもらった物です」


肖像画の説明してくれたアロンに、つい懐かしくて、実菜が補足すると、アロンが片眉を上げ実菜に視線を向ける。


「と、言うと?」


セシルやロイも不思議そうに実菜に注目した。

陛下は静かに事の成り行きを見守っているようだ。

静加が心配そうな顔を実菜に向ける。


大丈夫よ。


そう意味を込めて静加に頷くと、実菜は、静かに深呼吸をしてから口を開いた。



「私はこの国が出来る前に、アレクサンドロスによりこの地に召喚された、九条純子の生まれ変わりです」


「では、彼女は?」


実菜の言葉に、アロンは静加に視線を向け問うた。


「彼女は私の……いえ、純子の娘の静加です」

お読み頂き有難う御座いました。

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