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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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魔王?

「シェーン、御苦労だったね。後でお客様がいらっしゃるみたいだから相手を頼むよ」


デイビッドがそう言うと、シェーンが頭を垂れ、下がって行った。


殿下、なのに殿下に見えない。纏っている雰囲気がまるで違う。これがアリスの言っていた『怖い殿下』かしら。


「かわいいだろ?良く働く駒なんだ」


シェーンが出て行った扉を見ながらデイビッドが馬鹿にしたような笑みを浮かべる。窓の無いこの部屋には幾つも蝋燭が灯されていてその揺らめきの為かその笑みが歪んでいるようにも見えた。


「あれだけ慕っているのに何て言い方なの」

「はっ!さすが聖女様。チヤホヤされて良い気になっているだけはある。誰からも愛されて?……貴様の様な女は心底嫌いなんだよ!」


地を這うような低い声でデイビッドが唸る。ビリビリと空気が振動するようだ。実菜に緊張が走った。


「ところで、懲りない君に送った私の挨拶はお気に召して頂けたかな?」


打って変わって優しい声で楽しそうに言う。実菜はデイビッドを睨み付けた。


「懲りない?意味が分からないけど、くだらない理由でルルがどれだけ心を痛めたと思っているの!」


「くくっ。その様子ではお気に召さなかったようだね。その顔を見るのは楽しいよ。ウォルももう少し役に立つと思っていたけど期待外れだったな。でもアレを作るのは以外と大変なんだよ?アレクの話では人肉で作るって事だっただろ?だけどそれだと定着し難いし大して言う事聞かない、内臓系だと、まあ、兵隊くらいにはなってくれるか。心臓が一番良かったね、風貌はかなり変わるけど。ウォル以上の魔力を持つ者に試してみたかったよ」


ゴクリと実菜は唾を飲み込む。平然と語るデイビッドが人外の者に見えてくるようだ。ウォルには心臓を使った物を入れたという事だ。他の物に関しても誰の物を使ったのか。『マンガスを処分した』実菜の頭に先程のシェーンの言葉が過ぎる。


「そんな怖ろしい事を……」


「あはは!アレクからその話を聞いた事を最近思い出したが、その時そこに居た貴様は同じ事を言ってたな!」


私も居た?そんな話は聞いた事ないわ。そもそもアレクって誰よ。


実菜は眉を顰めた。今の言葉の咀嚼が間に合わない。殿下と話らしい話などした事はないし、何より話が噛み合ってない気がしてならない。何の話をしているのか実菜には理解出来ていなかった。


「貴方、殿下よね?」


恐る恐る実菜が問うがそれには答えず椅子から立ち上がると後ろにある巨大な塊に近付きその塊を撫でる。


「まあ、積もる話は尽きないが、本題に入ろう。お前にはこれの封印を解いて貰いたい。その為に御足労頂いたんだ。言っておくけどお前に拒否権は無い」


「封印を、解く?」


「貴様が封印して湖に沈めたのだろう?500年前は私もその存在は無くなったものだと思って気付かなかったが、在るのなら折角だからまた使おうと思ってね」


湖って、ハルソナ村の事よね。ジュアンが結界で護ってた物があの塊って事?てことは結界を壊したのはデイビッド……って、ああっ!!操られているのか?!

ん?でも500年前ってどういう事?そこに私がどう関わってるっていうの。そもそも魔王って何者なのよ。聖女の話は聞いているけど魔王の話は聞いた事ないわ。


情報が多すぎて半ば呆然としている実菜にデイビッドが更に畳み掛ける。


「手枷は外してやるが、貴様は今まで私に勝てたことが無い。無駄な抵抗は止めておけ。面倒が増えるだけだ」


吐き捨てる様に言うとデイビッドの目が赤く光る。バチンッと金属音がしたかと思うと同時に両手が自由になった。


「その封印を解いたとして、貴方の目的は何なの」


実菜の言葉に再びデイビッドの目が赤く光りその瞳を細め、ニヤリと口角を上げる。


「時代を繰り返す。というのはどうだ、面白いだろう?」


「時代を、繰り返す?」


「建国の時は狂った聖女が国を破壊するのを私が抑え私が王になる。という筋書きだったが、今回は王国の乗っ取りを企てた聖女を私が抑え私が王になる」


デイビッドがドヤ顔で語る。建国の王は魔物を倒した者だったと聞いた気がするけど、聖女はそこでは聞いていない。聖女が出現したのは500年前ではなかったか?実菜はますます話が分からなくなっていた。


「国王になりたいということ?」


「国王が目的ではない。国を壊し、二度と人間が住めぬ土地にすることが目的だ。その為には貴様が邪魔でね。封印を解いたら消してやろう」


こちらがそれを望んでいるかの様な言い草だ。この辺はデイビッド本人なのだろうか。


「それでその塊は何なの」


デイビッドが訝しげな視線を実菜に向ける。


「貴様……そうか、どうりで今回はやけに大人しいと思っていたが、記憶が無いのだな」


記憶?今回は?私を聖女ジュアンと間違えているだけではないの?


「ははは!!貴様に記憶があろうがなかろうが私には問題では無い。封印くらいは解けるだろう?解けなければここで貴様を消すだけだ。別にどうしてもコレが必要な訳ではない。そうだ何か衝撃を受けたら思い出すのではないか?私が手伝ってやろう」


そういうが早いかデイビッドの赤い瞳が光ると刹那、実菜の身体が吹き飛ばされ「ドカッ」と激しく壁に叩き付けられた。ドサッと床に倒れる。「ゔ、ぐっ。ゴホゴホッ」一瞬呼吸が出来ず激しく咳き込み実菜の口の中に血の味が広がる。


本気で私を殺す気なのね……。


何とか立ち上がった実菜は突然の衝撃に初めて死への恐怖を感じて手が震えていた。


「ああ、すまない。加減はしたのだがね、どうだい記憶は戻ったかな?」


ニヤニヤと楽しそうな声で実菜に問いかける。


「そうか、まだ戻らないか仕方ないなぁ」


再びデイビッドの目が光ると同時に実菜が見えない壁を作る。力が打ち当たり衝撃音が鳴るがデイビッドの攻撃を相殺するには至らず、またも実菜は壁に叩き付けられる。


先程よりは衝撃は弱められたけど、呼吸すると背中と胸が痛い。肋骨折れてたりしてないわよね……。でも駄目だ、ここで痛そうな顔なんかしたらコイツを喜ばせるだけだわ。


「だから言ったじゃないか、無駄な抵抗はするなって」


案の定、デイビッドは楽しそうに笑っている。


「仕方ない、ここで嬲り殺すことにする……」

「は〜い!!そこまでよ〜!!!」


突然扉が開き、デイビッドの言葉に被せるようにデイジーの声がその部屋に響いた。


「どうやって入って来た!外の者はどうした」


ヒーローの如く突然現れたデイジーにデイビッドも一瞬固まっていたが、すぐに声を上げる。


「私を誰だと思っているの。みんなには眠ってもらったわ」


「誰だ貴様は?!」


「え、いや、誰でもないけど、あ、いや、デイジーよ!!」


デイジー……彼女が居るとふざけた感じになってしまうのは何故なのかしら。あ、今のうちに回復(ヒール)しとこう。


訝しげな視線をデイジーに向けながらデイビッドが口を開く。


「貴様が誰であっても貴様らはここで最後だ」


「それはどうかしらね。私はその封印の解き方を知っているわ。でもそれには貴方に消滅してもらう事が必要なのよね」


「はっ!出任せを!」


「本当よ〜。そういえば貴方、手下に魔王だなんて呼ばせてるらしいじゃない。笑っちゃうわね。私、思い出したのよ貴方の名前を。クラウドでしょう?貴方の大好きなアレクが付けた名前よね」


デイビッドがデイジーを凝視し「誰だ……貴様」と呟く。


「あと貴方が聖女を嫌いな理由も知っているわ。貴方の大好きなアレクが聖女の事を愛していたからよね?」


鬼の形相のデイビッド、いや、クラウドか、に対しデイジーはニッコリと微笑んで「ねっ?」と首を傾げる。


「何を、馬鹿な事を!!」


動揺しているのかクラウドの瞳が不規則に赤く点滅するように色が変わる。


「聖女は鈍感だから、アレクの気持ちに気付く事もなく目の前で別の男と愛し合い結婚して……アレクが聖女と幸せになるのも嫌だけど聖女に蔑ろにされてるのも嫌。自分は誰からも愛されないのに聖女は誰からも愛されている。早い話が嫉妬だね」


「違う違う!黙れ黙れ黙れー!!!知った風な口を利くなー!!!」


淡々と語るデイジーにクラウドが肩を怒らせ怒鳴り散らすと壁や天井に激しい衝撃音が走る。


「やれやれ、子供の癇癪だな」実菜にしか聞こえない声でデイジーが呟いた。


「貴方が誰からも愛されないのは、大好きな相手でも平気で殺すような奴だからだよ」


更にデイジーが畳み掛ける。


デイジー、私も色々突っ込みたい事満載だけど少し煽り過ぎではないかしら、この建物ごと私達も木っ端微塵になりかねない勢いなんですけど。


実菜は色んな意味でガクブルしていた。


「知った風な口を利くなと言っただろうがぁー!!」


案の定、空気が振動する程の低い声でクラウドが怒鳴る。最早大声と言うより爆音だ。


「ふふっ……もう人間(おまえら)に合わせてやるのは止めだ。このまま皆殺しだよ。喜べ、完全体は中々お目にかかれない」


そう言うとデイビッドの身体から黒い靄が溢れ出てくる。靄が抜け切るとデイビッドがその場に崩れ落ちた。黒い靄は竜巻の様に渦を巻き建物の外からも入って来た黒い靄も巻き込み、次第に真っ黒な人影が黒炎をまとっているような形に変化していった。


何、あれ。あれがデイビッドを操っていたの?もしかしてこの黒い物がクラウド?この距離なのに瘴気の強さが半端無いわ。凄くビリビリして気持ち悪い。


「はーっははは!!後悔ならあの世でしてくれ」


野太く獣の唸り声の様な声でクラウドが高笑いをしている。


ふう、とデイジーが息を吐き「貴方が単純で助かったよ」と極々小さく呟くと片膝を付き床に手の平を押し付けた。クラウドの唸り声で聞こえないが、デイジーが何か呪文を唱えている。唱え終えると床から五芒星の形で白い光りが浮き上がってきた。


「うっ、ぐあっ?!何だこの光りは?!」


クラウドの動きが止まり、高笑いを止める。


「見様見真似だったから正直不安だったけど、上手くいったみたいね。これは結界よ」


「いつもと違う結界みたいだけど、いつの間に」


「この部屋に入る前にこの建物を囲むように仕掛けて来たの。いつもの結界だと手が離せなくなるからさ。お待たせ、実菜の出番が来たわよ」


そう言ってデイジーが実菜にウィンクするとクラウドに向き直る。


「さあ、覚悟するのは貴方の方よ!!」


デイジーの声が部屋に響いた。

お読み頂き有難う御座いました!

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