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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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すみません。視点戻ります。

「え、ちょっと!」


セシルが突然馬を降り、駆け出して行ってしまった事で馬上に1人取り残された実菜は途方に暮れる思いだったが、賢いお馬さんはパカパカと実菜を湖畔まで運んでくれた。


「ロイ!!何をしているんだ!」


セシルの声が響く。揉めているのかと思ったがロイとデイジーはキョトンとしている。


「え?師団長?どうしてここへ?」

「あ、あれ?あ〜、ミナが行きたいって言うから……」


まあ!私の所為になっているわ!


「あの〜、取り敢えず降ろしてもらえます?」


1人でも降りられそうだがお馬さんがふるふると微妙に動くので少し怖い。


「あ、そのまま集落まで行きましょう。凄く近いですから」


ロイはそう言うと木に繋いであった手綱を取り、黙ったままセシルに渡すとこちらの馬に近付き実菜の後ろに飛び乗ると「では、先に行ってます」と言い残し馬を走らせる。


「え?え?」


戸惑ったのは実菜だけではなかったようだ。デイジーとセシルも手綱を持ったままポカンとして立ち尽くしている。


「すみません。八つ当たりされるのは嫌なんで」

「ああ、それは面倒ですね」


流石にロイは気付いていたのね。


「じゃあ、デイジーとロイは付き合っている訳ではないのよね?」

「仕事で付き合ってますが、恋人ではありません」

「あ、はい」


『付き合う』にも色々意味がありますもんね。失礼致しました。


そんな話をしている内に、こじんまりとした民家が見えて来る。馬の蹄の音が聞こえたのか家の中から1人の老女が出て来た。


「ああ!良かった。スティックマイヤー様!お待ちしておりました。……あら、孫は?」


出て来た老女は実菜達の周りをキョロキョロとする。実菜とロイは馬から降りロイは老女に声をかけた。


「シシーさんどうしました。我々だけですよ?後から師団長も来ますが、お孫さんがどうかしたのですか?」


それを聞いたシシーの顔は青くなる。

そこへセシル達も到着すると、シシーはロイとセシルを交互に見遣り口を開く。


「湖に異変があったみたいなので孫を王宮まで使いに行かせたのです。ですが2週間近く経つのにまだ帰って来ないのです」


「2週間?おかしいですね。王宮には来ていないです。アガギア領に来ていたのですが、その時も見かけてません。湖は我々も今見て来ました。何があったのですか?水位がかなり減っていましたが」


「それが、よく分からないのです。2週間程前の夜中、物凄い音がしたと思ったらその後すぐ豪雨が来て。次の日に湖の様子を見に行ったら、水が減っていてアガギア領の方は黒い雲が出ているし……あの、変な事を言うようですけど、笑わないで下さいね。あれは豪雨ではなくて湖の水が降ってきたのではないかと」


と言うとシシーはこちらの反応を窺う様に言葉を切る。


湖の水が降ってきた??どんな状況だ?!


「有り得ない話ではないですね。ところでここに住んでいるのはシシーさん達だけですか?」


デイジーがシシーを気遣ってかシシーの話を肯定し、問い返す。


「はい。息子が2人おりましてその息子夫婦達と孫達だけです。他の者はこの地を離れました。あぁ、すみません。何もありませんが、中へどうぞ」


家の周りを見ると奥に2軒、同じ様なこじんまりとした家が見える。あれが息子家族の家なのだろう。


「この地は仕事になるものもないから息子は2人とも出稼ぎに出ているんですよ、だから正確には住んでいるのは女、子供だけですけどね」


家の中に入ると30代位の女性がお茶を出してくれる。その近くには5歳位の男の子と女の子が遊んで居た。


「ねぇ、それ何?」


子供が遊んでいたおもちゃが気になり、実菜は2人に声をかけた。


「オトタマだよ」


そう言って小さな手に持っているそれを実菜に見せてくれる。


これって……お手玉じゃない?!


手の平に収まるくらいの大きさで、布で袋状にした中に詰め物で丸い形になっている。思わずデイジーを見るが彼女もそのオトタマなるものを見つめていた。


「ああ、それね。この辺だけみたいだね、そのおもちゃ。私はこの村で生まれ育ったから当たり前だったけど、嫁達はここに嫁いで初めて見たって言ってたわ」


ここだけ……。聖女ジュアンが住んでいた土地。

もし、ジュアンが日本から来た異世界人であったとしても別に良いんだけど、何故こんなにもドキドキするのかしら。


実菜は思わず胸を押さえてしまった。


「それにしても、アガギア領からこんなに近いのに瘴気の被害は無さそうですね」


ふと、実菜は不思議に思いシシーに聞いてみた。


「それはそうです。この地はジュアン様の加護が有りますから」


「加護?」


「ジュアン様がこの地にお住まいの頃、私のご先祖様が村長を務めておりましてね。その時ジュアン様が湖をそのまま子々孫々ずっと残して置くようにと頼まれまして、そのお礼にこの地に悪い物が入って来られないようにしてくれたという事です。私達がこの地を離れられないのはその約束を守る為ということもありますが、ここにいれば魔物に襲われる事もない安全な場所だからです」


「湖周辺に加護は無かったのですか?」


デイジーの言葉に再びシシーの顔が青くなる。


「森を含めた範囲だと聞いておりました」


この地は森に囲まれている。元は森の中に作られた村だったのだろう。


「成程、話は分かりました。アガギア領の瘴気も払いましたから大丈夫だとは思います。お孫さんの事も、出来る限りの事はします」


ロイはそう言うと椅子から立ち上がる。

これで切り上げようということなのだろう。実菜達もそれに倣い立ち上がる。

未だ青い顔のシシーと嫁であろう女性に見送られ、その家を後にし、湖を横目に森を出た所で「ちょっと止まって」とデイジーが声を上げた。「ちょっと降りたい」と後ろのセシルに言う。帰りは実菜とロイ、デイジーとセシルのペアで馬に乗っていた。


「何かあった?」


そう言いながらセシルがデイジーを降ろしてあげている。彼女はセシルの問いには答えず大きな木の根元に走り寄った。キョトンとしている3人をそのままにし、掘り起こされたように土がこんもりとしているその根元でデイジーはその土を触ったりキョロキョロした後戻って来ると、何事もなかったかのように馬に乗せてもらっている。


「あの、デイジー?どうしたの?」


実菜は何も言わないデイジーにもう一度聞いてみる。


「結界が壊されてた。多分ジュアン様が施した結界だと思うけど、土の感じからして壊されたのは最近だから湖の水を降らした者が壊して侵入したんじゃないかな」


「え?!何の為に?」

「……それは分からないけど」

「直さないと不味いんしゃない?!」

「護る物がなければ、もう大丈夫だよ。魔物も暫くは出ないだろうし」


実菜の問いにデイジーが言い切ると暫くパカパカと蹄の音だけが響く。


護る物?何の為に侵入したのか分からないのに、護る物があったのは知ってる。しかもそれが今は無いという事よね。それに態々結界を壊してって事は、壊さないと入れない者って事だよね。デイジーは何か嘘をついている?私、信用されてないのかしら。


実菜は寂しい気持ちを感じていた。


屋敷までの間、誰も喋らず沈黙の時間が続いたが領地の様子はゆっくり見る事が出来た。未だ真っ黒い畑だが、領民達が畑仕事をしている。


良かった。動けるようになったのね。


屋敷に戻り厩に馬を入れてあげると、どこからか賑やかな声が聞こえてきた。


「ジョンとトイの声がしますね」


ロイが声のする方へ様子を見に行く。楽しそうな声だったので何となくそれに付いて行くと、領地で働く者を泊めているという宿舎の前で領民数人と酒盛りをしているジョンとトイが居た。


「わ!!師団長!副師団長!……お、お帰りなさい」


2人は怒られると思ったのかビクビクしながら立ち上がった。


「怒りはしない、怒りはしないが羽目は外すなよ?」


ロイは苦い顔で言うと「部屋に戻ります」と言って屋敷の中に入って行く。


「師団長!師団長も一緒にいかがですか?」

「すまない。僕はお酒が呑めないんだよ」


領民の陽気な誘いにセシルが情けなさそうに答える。


「ふふ。皆さん元気になったようで良かったです」


「俺等は元々瘴気当たりが軽かったんす。他の奴等はまだ頭痛に悩まされてますよ」


それなのに自分達は酒盛りをしてるのね?

でもそうか、そうだよね。辛い人も居るんだよね。明日にしないで今日浄化して回った方が良かったんじゃないかしら?


「浄化する側の体調も大事よ?」


実菜が自己嫌悪に陥っていると実菜にだけ聞こえる声でデイジーが囁いた。本当にデイジーは……。


「でもこの屋敷内くらいなら大丈夫な気がしない?」


囁き返す実菜にデイジーはジト目を向けてくるが「まぁ、良いんじゃない?」と言ってくれたので、早速実菜は目蓋を伏せる。酒盛りの楽しそうな空気に当てられたのか実菜の気持ちは高ぶっていた。


光りに満ちた実菜はその光りを両手に集めると、フワッと空に放つ様に両手を空に上げる。放たれた光りは金色にも虹色にも見えキラキラと煌めきながら空へ舞い上がると屋敷の敷地内に雨の様に降り注ぐ。その間にも実菜の両手からは光りが溢れ出ていた。


……もう良いかも。


実菜はそう感じ溢れ出る光りを止めると目蓋を上げ、そして驚く。屋敷に続く並木道が虹色の花を咲かせた様に煌めいている。それだけでなく敷地内全体が煌めいていた。互いにほっぺたをつねり合って固まっていた領民達は、次第に光りが弱まり消えていった事で互いを放し、実菜を拝む様な姿勢を取る。


「あ、貴女様が聖女様でいらっしゃいましたか!!!」


へへ〜、とでも言いそうな勢いで平伏す領民達。10人は居るだろうか。


「何があったんだ!今、凄い綺麗な光りが……」


宿舎から続々と領民が出て来ると「このお方が聖女様だ!」と平伏したまま1人が言う。「じゃあ今突然身体が楽になったのは……」と宿舎から出て来た者達まで実菜の前に平伏し始める。


「止めて下さい!!」


……凄い出て来るじゃん。


30人程の領民を前に実菜は少しだけ浄化した事を後悔した。

お読み頂き有難う御座いました。

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