表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/131

2人の密会?再び

ロイとデイジーの視察に行く話です。ロイ視点になってます。


宜しくお願いします。

「師団長?!何ですそれは?ウォル??何があったんですか。瘴気が晴れたから上手く行ったのだとは思いますが」


目の前に現れた光景にロイは驚き瞬いた。


セシルの浮遊術により横たわった状態で宙に浮いているのはウォルだが、その様子はどう見ても絶命している。


「取り敢えずコイツを放置されてた馬車で運ぶ。話はその後」


確かにこの状態での会話は難しい。ロイは黙ってセシルに付いて行く。


「ウォルが、頭や心臓を撃ち抜いても倒れない化け物になって現れたんだ。恐らくこの馬車はウォルが乗って来た物だろう」


「化け物……」


これがデイジーの言っていた『ヤバイ』事か。


「ウォルの身体から触手の様な物も出てきたりして……人間が魔物になるなんて事、あるのか?」


「瘴気により人間が『アンデット』という魔物になる事がある。というのは伝承にはありましたが、あれは既に遺体の場合で……ウォルの場合はもしかしたらデイジーの言う寄生虫の所為ではないかと。でないとウォルだけがこうなった説明がつかないです」


「あの気持ち悪いヤツか。確かにウォルも気持ち悪い感じになってはいたが。それとロイ。マオウって何の事だと思う?」


「マオウ?魔王ですか?」


「ウォルはまともに喋れない状態だったがカタコトで『魔王様が聖女を殺せと言った』みたいな事を言ってたんだ」


「魔王とは初耳ですね。寄生虫についてはあれからデイジーと調べていました。人間の身体を器として成長し巣食う物のようです」


「……僕は、何の報告も受けていないが?」


珍しく怒気を孕んだセシルの語気にロイは面食らう。


「申し訳御座いません。まだ確実な事ではなかったので」


怒っている?事後報告などいつもの事ではないか。いや、普通は良くないが、この人は魔法以外は何にしても興味を示さない。報告したとて聞き流す事が殆どではないか。寄生虫は興味があったのだろうか?確かに魔力を餌に成長するらしいのだが。


「そうか……、デイジーが火葬した方が良いんじゃないかと言っているが?」


戸惑うロイに憮然とした表情でセシルが言う。


「そうですね、伝承によればアンデットは教会で祈りと共に火葬していたようですね。今回も同じ様に対処しますか。今の教会に何処まで伝承されているかは疑問ですが」


何せ魔物達が溢れていたのは500年前のことだ。それにアンデットも数が多かった訳では無いらしい。流石に伝承されているとは思うが念の為に一筆認めるか。



「屋敷まで馬車取りに行こうか〜?」


その時デイジーの呑気な声が響く。


「は?貴女が?それなら他の師団員に行かせますが」

「飛んでったら早いよ」


そうだった。馬車を魔法で運ぶより確かにその方が早く確実だ。


「じゃあ、僕も連れて行って!」

「はあ?!重いよ!私1人だから早いんでしょうが」


どうしてもセシルは飛びたいらしい。根負けしたデイジーは「重くて落ちても知らないから」と言ってセシルの腰に腕を回す。デイジーが小柄な為、抱き着いているようにも見えるのだが、それを嬉しそうに抱き返すかのようにデイジーの首元に腕を巻き付けるセシルを見てロイは理解する。


なるほど。


タッと地面を蹴り飛び上がると屋敷に向かって飛んで行く2人を見送りながらロイは感慨深い思いを感じていた。


女性にも興味が無いのかと思っていたが……ん?デイジー自身に興味があるのか?それとも彼女の魔法に興味があるのか?微妙なところだが、まあ、良しとしよう。デイジー自身だとすれば先程の態度にも合点がいく。


15分程で遠目に馬車がこちらに向かっているのが見えて来た。見知った御者が御者台に座っている。


んー?師団長が操縦している訳ではないのか?本当に何しに行ったんだあの人は?!デイジーに抱き着きたかっただけか?それとも本当に飛んでみたかっただけか?……まあ、良しとしよう。



「デイジー、ちょっと良いか?」


屋敷に戻りながらロイはデイジーに声をかけ、2人で隊列の最後尾へ行く。セシルがチラリとこちらを見たがそれを気遣っている場合ではないのだ。


「話は師団長から聞いた。あの虫の仕業だと思うか?」


「十中八九そうだとは思うけど、そうだとしたら今回のようなことがまた起こるかもしれないわ」


「何故ウォルだったんだろう。確かに不審な人間ではあったが」


「建国パーティーの件はウォルが関わっていると思うのよ、でもあの時の逃げたウォルの怯え方を見ると、もしかしたら何も知らずに関わっていたんじゃないかとも思うの。ロイだったら中途半端に関わって逃げ出そうとした人間を放っておく?」


「そうだな。実験台みたいなものか?」


「どうだろ?最初がこの領地というのが気になるけど。ねぇ、この分だとこの近くの集落にも余裕で行けそうね」


「聖女ジュアンが住んでいた村の事か?まぁ、明日はミナを休ませるだろうから様子を見に行くか」


どちらにしろ定期的に訪問している場所だ。こんなこともあったし様子は見に行くべきだろう。

ロイはそんなことを思いながら屋敷の門をくぐった。




朝、朝食を終えるとデイジーがトコトコと近付いて来る。


「まさかもう行くつもりか?」

「早い方が良いじゃない。ゆっくりしてると邪魔が入りそうだもの」


ちらちらとこちらを窺うセシルが視界に入った。


確かに彼が入ると話がし難いな。


「分かった。すぐ出るか。ただ昨日の場所も様子を見に行く」


そして厩に行った所で彼女が馬に乗れない事が判明した。意外過ぎる。何でも出来そうなのに。


「日本では移動手段は馬じゃないのよ」


昨日の森に向かう途中、言い訳の様に彼女が言う。どうやらこの人は負けず嫌いな性分のようだ。


「誰にでも欠点はあるものですよ」


わざと煽るような言い方をしてみる。案の定、フーッという猫の威嚇の様な息を吐いて「馬くらいすぐ乗れるようになってみせるわ」なとど呟いている。


面白い。


森に到着してみると黒かった木々から新たな芽が伸び枝となり、昨日は黒い森だったのが今はしっかり緑の森に見える。


「昨日これでもかって言うくらい浄化してたからねぇ〜、あの子」


「改めて凄いな」


これならば何事も無ければ問題ないだろう。


「では、ご希望の集落に向かうか」


馬から降りることも無くそのまま方向を変えると、ロイは疑問を口にする。


「図書館の書物にあった禁術は完成していたということなのか」


立ち入り禁止エリアの書物。デイジーと探しに行ったが見つかったのは『魔術―アレクサンドロス著―』という書物で、内容は理論だった。その中に今回の虫もあったのだが飽くまでも理論だけで臨床は行ってないようだった。その作り方が人肉を使うという恐ろし気な物だけに記述した者も倫理的な観点から臨床実験を行わなかったと思いたい。


「自ら考え出したのか、それともあの書物を見て作り出したのか。だとしたらあの場所に入れる人間に絞られるのだが」


ロイの言葉をデイジーは黙って聞いている。


「それにあの状態のウォルが発したというマオウという言葉。今まで魔王など出てきた事はない」


暫く蹄の音だけが響く。「アレクサンドロス……」集落の入口へ続く森が見えてきた頃、不意にポツリとデイジーが呟いた。


何だ?アレクサンドロス?……『魔術』の著者の事か?


「アレク……そうか!アレクと呼んでいたから直ぐに結び付かなかった。後は、何だ?何を忘れている?思い出せ……」


突然ブツブツ言い始めたデイジーに戸惑うロイを他所に彼女は頭を抱えてブツブツ言い続けている。


「おい!どうした?そろそろ到着するが」


ロイのその言葉にデイジーはハッと顔を上げると同時に「湖!」と声を上げた。


「湖?もう見えているぞ?」

「確認したいの、寄って!」


こういう人間には慣れている。ロイは短く嘆息すると、森が開けて湖の湖面が現れた所で馬を降り丁度良さ気な木の枝に手綱を結ぶ。


「何が、あったんだ……?」


デイジーは湖を見つめ呟く。ロイも遅れて湖を見遣る。


「え……?」


湖の水位が通常より2m程低くなっている。旱魃?いや、報告は来ていない。何かあれば報告するように伝えてある。


隣に立つデイジーが地を蹴り飛び立つと上空から低空飛行で湖面の中を覗き込む様にしながら湖を一周し、苦い顔をして戻って来た。


「不味い。封印していた物が無くなっている」

「封印?」


デイジーがロイに訝しげな視線を向ける。


「知らない……?湖に沈めてあった物を?貴方達には何処まで伝わっているの?」

「逆に君は何を何処まで知っているんだ?」


「クリスフォードとスティックマイヤーは聖女を守護する家でしょ?ここの物も守るように言われてたんじゃないの?瘴気で大変な事になったら聖女に……聖女を召喚するように、とも……言われてたんじゃないの?」


少し興奮気味のデイジーがロイの質問は無視し、捲し立てるようにロイに詰め寄り、それを抑える様にロイがデイジーの二の腕を掴む。


「君は、本当に……誰なんだ」


その事は昔は特に秘密でもなかったが、聖女が伝説伝承の人物になった今、知るものは殆ど居ない筈だ。クリスフォード家は当主だけに伝えられる事になっている為、セシルでさえ知らされてはいない。

今回の聖女召喚も第二王子が陛下に進言した事になっているが、実際そう仕向けたのは私だ。


「ごめん。取り乱した。あれの封印は解けないはずだから大丈夫だとは思う。それと、勿体付けるのは好きじゃないんだけど言いたくない事があって、と言うより知られたくないことがあって……全部話すとそれを言わなくてはいけなくて…言うと辛くなるかもしれない人がいて…」


そう言ってデイジーは心底苦しそうな顔で遠くを見つめる。


「……分かった。敵ではない事は認めよう」

「ああ、それと、あの化け物を作り出した奴はアレクサンドロス本人から話を聞いていたのかもしれない」

「本人から?!どういう事だ。あの書物は建国当初に書かれた物だぞ!」


デイジーの話にロイは目を丸くして彼女の腕を掴んで問い返す。


「あ、時間切れかも」


そう言って、デイジーが視線を森に向ける。釣られてロイも振り返った。


「ロイ!!何をしているんだ!」

お読み頂き有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ