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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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セシル悶々とする

「ん〜、私、ロイと約束してるから遠慮しとくわ。実菜、適当に選んできてくれない?お金は後で払うから」


デイジーは珍しく申し訳なさそうに言う。


「ロイと何の話があるの?え、そういう関係だったの?」

「違います!」


セシルも意外な組み合わせと思ったのか、驚いている。セシルが知らないという事は仕事関係では無さそうだ。


「約束なら仕方ないわよね。セシル、私だけ連れて行ってくれない?」


デイジーと別れ、セシルと2人で魔導師団用の馬車に乗る。


「こういうのって、職権濫用って言うんじゃないの?」

「聖女の護衛」


……物は言いようよね。



セシルは終始無言だった。それでも知り合いのお店に到着すれば、しっかりエスコートはしてくれる。



でも、この手を取るのって何か意味があるのだろうか。そもそも恥ずかしいし、逆に降りづらい気もしなくも無いんだけど。女性の挨拶の仕方にしたって、あれもかなり辛い。少し教わっただけだけど、基本体幹が必要よね。御令嬢も身体を鍛えろって事なのかしら。


お店をしているのは学生時代の友人だと言う。青年実業家と言うやつね。凄いわ。


「お久しぶりです。卒業以来でしょうか、クリスフォード公爵令息?」


お店に入ると、その友人だろう男性がセシルを揶揄かう様に挨拶した。


「こ、公爵?!」

「将来的には平民だよ。三男だし、そもそも一番上の兄上が実質的にだけどもう継いでるし。ミナ、こいつがさっき言った悪友のニール・ブルック伯爵令息」


セシル……実は高貴なお方だったのですね。


衝撃の事実に驚く実菜に知らなかったの?とでも言う様にニールは片眉を上げ実菜を見る。


「そんな事を言ったら、僕も平民だよ。次男だからね。でもそのお陰で経営者になれて、販売業も楽しいから良いけどね。学生時代はセシルの()()()随分と先生方に目を掛けて頂きまして、とても充実していましたよ。えぇと、ミナと呼ばせて頂いても?」


「楽しそうな学園生活が目に浮かびますわ。ええ、是非ミナとお呼び下さい」


セシルは子供の頃からセシルだったのね。当たり前だけど。


その後、ニールに案内されて店内を見て回るが、本当に色とりどりのドレスが置いてあった。これを一回しか着ないで手放すなんて贅沢な方々もいたもんね。一点物で一度袖を通した、というだけで本来の価格から十分の一程の価格になるというから、こちらとしては助かりますけど。


「ミナ様のスタイルですと、この辺りのサイズですね」


「う〜ん、お茶会服を探しているんですけど、どんな物が適してますか?お恥ずかしい話ですが、あまり分かっていなくて」


それぞれのサイズでコーナーを作ってあるらしい。探し易くて良いですね。しかし、デザインの常識がイマイチなので、ここは素直に専門家に聞いてみる事にする。


「成程…」


茶会服…と呟きながらニールはハンガーに掛かったドレスを掻き分けて行く。暫くしてニールは一着のドレスを手に戻って来る。


「この辺が派手になり過ぎず良いかと」


広げて見せてくれたのは白いワンピースだが、生地がたっぷり使ってあり、ヒダが沢山ある、ワイヤーは入って無いので自然なふんわり感になる様だ。腰にリボンが巻いてありかわいくなっている。


「可愛いですね。これにします」


年齢的にはリボンはどうかと思ったが、そんなに幼いデザインでも無いのでギリ大丈夫だろう。何よりニールは良いと思ってくれたのだ。


「セシル?」


セシルが近くに居ない事に気付き、辺りを見回すが見当たらない。何処へ行ったのか。ニールに先程のドレスを預け、店内をウロウロしてみると、いました。別のサイズのコーナーで、一点を見つめ微動だにしない。


そんな真剣に何を見てるんだろ?


視線を合わせてみると、その先には鮮やかなブルーのドレスが掛かっている。


「セシル、そのドレスがどうかしたの?」

「あ、ミナ。デイジーはこの位のサイズかな?」


忘れてた!そういう事か。


「そうですね、この辺りで大丈夫だとは思いますけど、そのブルーのドレスが良いですか?」

「うん、似合いそうだなって思って」

「確かに。瞳も鮮やかなブルーだから合いますね」


セシルは満足そうに頷くと、そのドレスを手に取る。そのままニールに渡す。


「じゃ、悪いけど先に馬車に乗ってて」


セシルに言われて馬車に乗ってしまってから気付いた。


私、お金払って来てない!!


「セシル!お金!払ってないよ?!」


セシルがドレスの箱を2つ持って馬車に乗り込むなり、声を上げてしまった。


「え?!僕、払ってきたよ?!」

「いや、だから、私の分?」

「いやいや、それは僕に恥を掻かせる事になるから止めて?」



そういうものなの?日本では高価な物を買って貰う、なんて無かったからなぁ。それも、この国の常識なのかしら。


「何か、申し訳ないです。紹介だけしてもらえば良かったですね。有難うございます」


満面の笑みで頷いたセシルだったが、ふい、と目蓋を伏せ、若干の憂いを帯びている


何だろう。店に向う辺りからセシルがいつもと違うわ?慣れ過ぎて忘れてたけど、セシルってイケメンなのよね。黙ってたら良いのに。うわっ、伏し目だと睫毛の長さハンパない!


正面に座るセシルの美顔を横目でマジマジと観察していると、パチッと目が合ってしまった。


ヤバッ、観てるのバレてた?!


「あのさ、ロイと…デイジーって、何の約束だと思う?」

「ふぇい?!」


色々動揺して変な返事をしてしまったが、そんな事には気を止めることは無かったらしい。


しかし、まさかその事が気になって可笑しかったって事?それって…。


「まさかとは思うけどロイの奴、僕を差し置いてデイジーから空を飛ぶ魔法を教えて貰うつもりでは、無いよな?」


違った。思った事とだいぶ違ってた。




セシルはやっぱりセシルだったが、王宮に到着すると2人でデイジー用のドレスを寮に持って行く。寮の管理をしているという寮母の年配の女性が出て来てくれて預かってくれた。


「そう言えばデイジーちゃん、偶に夜中に出掛けていたみたいだけど、お仕事大変だったみたいねぇ〜」


寮母は愛想のつもりで話したのだろうが、実菜とセシルは思わず顔を見合わせる。


「いつ頃だったかな?確かに帰還してから色々ありましたからね〜」

「そうねぇ、デイジーちゃんが寮に入りたての頃だったわねぇ」


セシルが訝しがられないよう、話を合わせるようにして、情報を引き出した。


寮に入りたて、という事は牢から出て直ぐの頃の話だろう。彼女は何処に行ってたんだろう。特に親しい友人がいる訳でも無さそうなのに。


寮母に別れを告げてから、実菜を部屋まで送り届ける間、2人は終始無言になりそのまま別れた。


何となく聞きにくくて無言になっちゃったけど、セシルも何かしら思ったわよね。本当にあの人は謎が多いわ。でも何故かしら、聞いてはいけないような気がするのは。

お読み頂き有難う御座いました!

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