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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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魔導具

「……で、何しにいらしたのですか?」


リュートは二人を応接室に案内し、手慣れた手付きでお茶を淹れると、先程と同じ質問を繰り返した。


「……あなたに話があって来たのよ」


静加が神妙な面持ちで切り出すと、リュートもそれにつられてか緊張した面持ちで座り直した。


「あなたがセシルとリードに渡した通信機の事なんだけど……」


静加は例の呼出音のうるさい通信機の話をしたかったらしい。クレームを言いにわざわざ来たのだろうか。しかし、リュートは安堵した様子で「そっちか」と、呟くとソファーに背中を預けた。


「そっち」と言うなら「どっち」もあるのか。実菜はリュートを見つめたままティーカップに口をつけた。


「アレ、呼出音が酷過ぎるんだけど、何とかならないの?それが無ければ便利だって、リードも言ってたわよ」


静加もティーカップに手を伸ばす。


「……呼出音?リードからは特に何も言われなかったけど……酷いとはどういう意味かな」


リュートは顎に手を当て眉を顰めた。本当に思い当たる節が無さそうだ。


「そう言うと思って……ジャーンッ!!」


静加は背負っていたナップサックをゴソゴソと探ると、あの通信機を二つ取り出した。


「二つ?一つはセシルのでしょうけど……リードから借りて来たの?」


「リードの執務室で名簿を確認してたら、机の上に置いてあったのよ」


静加よ。何故に得意満面でいられるのか。実菜は思った。それは恐らくリードの了解は得ていない。黙って持って来たのだろう。いくらお試し品とはいえ、下手をすれば窃盗罪である。


「シズカ、黙って持って来ちゃったの?」


リュートも当然、察している。苦笑いするしかなかった。


「試供品なんだから、良いじゃない。堅い事言わないの!」


二人から責められている気分になったのだろう。静加は頬を膨らませた。


「まぁ……シズカだからね。で、どうするの?」


リュートは色々な事を諦めたのか、話を促した。


「試すのよ。決まってるじゃない。眺めてるだけでどうするのよ?」


そう言うと、静加は通信機の一つをリュートの方へと押しやり、もう一つの通信機のボタンを押した。


「え、ちょ、いきなり?!ちょっと待って……心の準備が」


前回の地獄絵図が脳裏に蘇り、実菜は狼狽えた。


案の定、警告音の様な音が爆音で響き渡る。実菜は急いでリュートの前に置かれた通信機をぶん取ると、ボタンを押した。

それぞれの通信機に静加と実菜がハッキリと映し出されている。実菜は無駄に息切れする羽目になった。

ふと、静加を見ると、耳から何かを取り出している。自分だけ耳栓をしていた様だ。


「静加、あなた……卑怯者!!」


「ごめ〜ん。皆に渡すの忘れてたわ」


恨めしそうな実菜とは裏腹に、静加はけろっとした様子でけらけらと笑っている。


「……はっ!リュートは?!大丈夫?!」


先程の様子では、リュートはこの事を知らないようだった。リュートを見ると、やはり驚いた様子で固まり、ソファからずり落ちそうになっていた。


「……何だ?今の」


いや、それはこちらが聞きたい事だ。実際に先に聞いたのはこちらである。


「うーん。やっぱり、知らなかったのね」


何のダメージも受けていない静加は、したり顔で頷いた。


「……俺が試した時は、常識的な音だったのに」


リュートはソファに座り直すと通信機を取り上げ、しげしげと眺め呟いた。


「それ、自分が受信するのも試した?」


「勿論ですよ。人に渡すのですから、ある程度は完成させています」


通信機を前に、リュートは腕組みをして唸った。


「じゃ、あなたから発信してみてよ」


リュートは眉を顰めて静加を見上げた。また凄い音がするのではないか。リュートが恐る恐る指をボタンへと伸ばすと実菜は耳を塞いだ。

リュートが思い切ってボタンを押した。が、一向に爆音は聞こえて来ない。実菜が「あれ?」と、耳から手を離すと、警告音の様な音ではなく雛鳥の様な可愛らしい音が鳴り響いていた。

静加が自分の持っている通信機のボタンを押すと、静加とリュートがボンヤリと映し出された。


「……やっぱりね」


相変わらず、したり顔で静加は頷いている。


「やっぱりって、何よ。自分だけ納得してないで説明してよ」


製作者であるはずのリュートも首を傾げて通信機を持ち上げると、ボタンをもう一度押して通信を終了させた。


「リュート……もしかして、自分で試した時の相手って……ミハイルじゃない?」


「えっ?!」


静加の口から突拍子もない名前が飛びだし、実菜は我が耳を疑った。しかし、リュートはというと、目を見開き静加を見つめたまま固まっていた。


「……リュート?」


実菜が声を掛けた事でリュートは我に返ると、手にしていた通信機を取り落とし、とても分かり易く動揺をみせていた。


「いや……ああ、まぁ、どうせ誤魔化せませんよね。その通りですよ。どうして分かりました?」


「あは。カマをかけただけだったんだけど、当たっちゃった?!」


「……それは、嘘ですね」


リュートは落とした通信機を取り上げ、壊れていないか確認するとテーブルに置いた。


「うーん……本当にカマをかけただけなんだけどね。ミハイルとリュートには繋がりがあるだろうな。とは思っていたから」


「二人が知り合いだなんて、どこで気付いたのよ」


全くの当てずっぽうではなく、何かしらの確信がある物言いだ。リュートもそれには興味があるらしく、挑む様な表情で静加を見つめている。


「ソフィアの屋敷よ」


「……ソフィアの?」


「そう。あの屋敷に魔導具がいくつかあったでしょう?」


あの屋敷には防犯カメラの様な物や、魔力で動く壁があったが、実菜は知らされてはいなかった。故に実菜は静加の話に首を傾げるしかなかったが、代わりにリュートが口を挟んだ。


「その魔導具を俺が作ったと思ったの?簡単な魔導具であれば道具屋で売ってたりもするのに?理由は?」


リュートは面白い物を見る様に静加を見つめ、小首を傾げた。


「魔力は人によって違うのよ……微妙にね。固いとか、柔らかいとか……微かに匂いがある人もいるわね」


いつか静加から聞いた事があるような、無いような。兎に角、人によって違うなんて性格みたいだ。実菜は「へー」と、素直に関心しながら聞いていた。


「私は、一度でも感じ取った魔力は誰の物か覚えていられるのよ……ほとんどね」


「……で、その魔導具から俺の魔力を感じた。という事かな?」


「まぁね。波動っていうのかしら……ほとんどがミハイルの物だったけど、微かに……残り香みたいな物が感じられたのよ」


静加の話にリュートが笑い出した。


「本当に……君って凄いよね!魔力の違いなんて量だけだと思ってたけど、そんな繊細な事まで分かっちゃうのかい?」


「勿論、リュートが作った物をミハイルが偶然手に入れた。とも考えられたけど、彼は友人が作ったと言ったのよ」


リュートは「はぁー」と、息を吐きながら天井を仰いだ。


「何よ。知られたら不味い事でもあるの?」


「いや!何もないですよ!アイツが本気で彼女との思い出に浸りたいんだと思っていたから、手を貸しただけで……ただ、あんな事だと分かって、俺が仲間だとでも思われたらと思うと……」


確かにミハイル自身もソフィアの事は知られない様にしていたと言っていたので全貌は知らなかったのだろうが、静加につっこまれたリュートはテーブルを叩きつける勢いで前のめりに言い返した。


「あ……もしかして、昨日リュートが審判の棟にいたのって、ミハイルに会いに行ってたの?」


「……昨日?」


ぽんっ、と手を叩いた実菜に静加が眉を顰めて聞き返す。リュートは目を泳がせた。


「あー……いやー、自分の事を誤解される様に伝えられてたら困るなぁ、と思って様子を見に行ったのだけど、逆に怪しまれそうだと思い直して途中で引き返した所にミナさんが居てね」


リュートは頭を掻きながら言い訳がましくしているが、実菜は静加から「何で言わないのよ」と、睨まれた。静加も実菜に言わない事があるのに勝手である。


「まぁ、良いわ……そんな訳で話を戻すと、通信機の着信音は魔力量の問題だと思うのよね」


そういえば、その話をしていたのだった。実菜はすっかり忘れていたが、それはリュートも同じだった様で「その話だったね」と、呟いていた。


「この魔導具は発信する側の魔力を使っていて、魔力量が多い者が発信すると映像も鮮明だわ。着信音もそれに比例しているんじゃない?」


確かに先程リュートが発信した時は映像がボンヤリしていた。リュートも「なるほど」と、頷いている。


「俺もミハイルも魔力量は多くないから気付かなかった。というより、君等が規格外に多いんだよ。そもそも魔導具なんて物は魔力を増幅させる為の物がほとんどなんだし……でも、まぁ、音を変えれば問題はなさそうですね」


手直しの構想が見えているのか、リュートは天井を見つめながら顎を擦っていた。

そんなリュートを見つめていた静加だったが、ゆっくりとお茶を口にすると静かにカップをテーブルに置き、口を開いた。


「……で、ここからが本題なんだけど」


最初と同じ様に神妙な面持ちの静加に、リュートは意表を突かれた様子で静加を見返した。


「本題……とは?」


リュートが掠れた声で問い返すと、静加はリュートを見つめたまま微かに小首を傾げた。


「あなた……本当に何も知らなかったの?」


静加の問い掛けに、暫し沈黙が流れた。静加の問う「知らない」というのは、通信機の着信音の事なのか、それとも別の事なのか。


「静加、何が言いたいの?」


静加は言葉が足らないのである。実菜は問い返したが、リュートは唾を飲み込んで静加を見つめ返していた。

お読み頂き有難う御座いました。

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