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聖女として召喚されたので、期待に応えてみた結果  作者: 珠音


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魔物討伐ですか?いいえ、入団試験です

魔導師団の入団試験の様子です。ロイ視点となってます。

「ウォル、一体どういう事だ?説明しろ!!」

ロイ・スティックマイヤーは目の前に居る男に強い口調で放つと手に持っていた書類を机に叩き付けた。


この日、ロイは大変苛立っていた。それも目の前のこの男、ウォルによって引き起こされた事案であった為怒りをぶつけるのは致し方なかったと言える。ウォルもそれを覚悟していたのか、神妙に受け止めていた。


「いや、どうしても、って頼み込まれちまいまして……」

ヘラヘラ笑いながらペコペコしている平民出のこの小太りの男をロイは以前から好きになれなかった。

いつもヘラヘラして捉えどころが無く、調子が良くて本心が分からない、だがゴマすり好きのお偉いさんには受けが良い。一応師団員ではあるのだが、ロイは正直この男を信用してはいなかった。良く入団出来たものだとさえ思っている。


その男が魔導師団の入団試験の受験者を勝手に受け入れてしまったというではないか。試験は基本的には魔法学園の卒業式前後に行われる。だが現状、人手不足甚だしい。よって希望者が居れば随時中途採用試験を行っているのだ。

だがしかし今日、だと?!有り得ない。師団長、副師団長に確認する事も報告も無く、だ。こいつは何様だと思っているのか。


「今回は多目に見るが次は無い。上司に従えないなら退団して貰うからな!」


その言葉にウォルは縮こまりながら返事をする。

未だ怒りは収まらないが、致し方無い。通達してしまっているという。手元の書類に目を落とせば受験者の名前が綴ってある。

シェーン・クライマー、18歳。クライマー子爵家の……三男だったか?爵位は高くは無いが最近になって経営している商会の成長が著しいと聞く。


……ウォルの奴、袖の下受け取ったな?


しかし何故突然魔導師団に……?実家を手伝っていれば良いものを。


「師団長は手が空かないから私が試験官をする」


違和感はあったが、ウォルを睨め付け溜息混じりに言葉を吐き出す。

師団長は今、討伐の準備で忙しいからな。いや、帰って来てからの聖女様のお相手をする為の準備と言った方が正しいか??彼は今、魔導書に埋もれている。

一応師団長に頼んだが、案の定「任せる」の一言で済まされた。まぁ、最初から宛にはしていないから良いのだが。


「えっっ?!副師団長がですか?」


ウォルが目を剥いて驚く。まさかと思うが試験官も自分がする気だったのだろうか。ここまでバカだとは思わなかったぞ?……ああ、だからこの忙しい期間にぶっ込んできたのか。それは思惑が外れて残念だったな。


「あ、あの、すみません。よろしいですか?」


師団員執務室に女性の声が響いた。見ると王宮女官が遠慮がちに扉の前に立っていた。


しまった、扉が開いていたか!


「あの、魔導師団の中途採用試験を受けたい。という方がですね、あの、いらしてるのですが、次の日程が出ていなくて、ですね、えぇと、何とお答えしたら良いか、と思いまして」


執務室内の怒気を感じ取ってしまった女官はビクビクしながら要件を告げる。


はっ?!このタイミングで?!


「副師団長!!今日!一緒に受けて貰いませんか?!」


やはりウォルが鼻息荒く前のめりで提案して来た。

『受験者が二名以上いる場合は試験官も二名以上付くこと。』

受験内容が危険を伴う場合があるから出来た条件だ。思わずウォルを睨み付けてしまった。ヒッと態とらしくウォルが身体を縮こませる。小さく嘆息すると、女官にその者ところまで案内する様に促した。願わくばその者が今日は都合が付きませんように。



女官に案内された先には小柄な白いワンピースの少女が立っていた。女官を見遣ると「では、お願い致します」と会釈して下がって行った。と言う事はやはりこの少女が?と改めて向き直る。

するとウォルが私を押し退け今日試験がある、と言う事を伝えている。


おい!!


前のめりで今日受験する事をゴリ押ししているウォルのその勢いに初め引いていた少女だったが最終的に頷いてしまった。


はああああぁ。



***


魔導師団の入団試験は実地試験のみ。今回は一番近くの低級の魔物しか出ない『瘴気の森』で行う。王宮から馬車で一時間程。

いきなり本物の魔物相手の試験とはかなり厳しいとは思うが、それだけ即戦力が欲しい。と言う事だ。勿論、能力は高いと判断されれば仮入団という措置も取られるが今迄一人も居ない。つまり魔法学園を卒業していない者以外の採用者は殆ど居ないということだ。ウォルは数少ないその一人であった。


その後、今日の受験者のシェーンも合流し、四人で馬車に乗り森まで向かう。その間に受験書類を少女に記入して貰う事にした。

少女はデイジー、16歳。平民の孤児だと言う。平民のしかも孤児の場合、文字が不自由な事がほとんどなのだが、デイジーは問題無い様だった。教会ででも教わったのだろうか。

しかし低級の魔物しか居ないとはいえ、この少女は大丈夫だろうか?少量の魔力量の者が王宮の給金に釣られて受験する事は少なく無い。孤児であれば常識等も疎いだろうし、尚更その可能性は高いと思えた。


瘴気の森に到着し、馬車の中で注意事項を二人に伝える。森の入口から獣道に沿って出口から出てくる。その間に出会った魔物は魔法のみで対処する。

但し対処出来ない場合はすぐ試験官に助けを求める事。それだけ。


「ではシェーンから始める」


シェーンは18歳と言うには小柄な体格で青白い顔をしている。病気でもしているのか?デイジーだけでなく、こちらも森の中を歩けるのかと正直心配だった。

そのシェーンを先頭にし、その少し後にロイが付いて行く形だ。


「え、ちょ、ちょっと、副師団長!副師団長が行くんですか?」

焦った様にウォルが縋り付いて来る。ハッキリ言ってかなりウザい。本気で睨み付けてしまった。

「お前、調子に乗るのもいい加減にしろよ?二人共私が付くのが当然だ」

「ちゃんと、ちゃんとしますから。今回だけお願いします!クライマー子爵にも見守るように頼まれちゃってるんです〜!」


本気で泣きながら訴えてくる。……マジでお前いくら貰ったんだ??どうせいくら貰ったところでその腹の肉として貯まっていくんだろうが。


何だかどうでも良くなってきた。いや、良くは無いが、実際入団したとしても実力が無ければ続けていけず、結局辞めて行くのだ。まあ、此処の魔物位ならウォル一人でも大丈夫だろうしな。


「分かった、分かった。本当に今回だけだぞ。先に出ろ。15分程したら私達も出発する」


「ありがとうございます〜!!!」


二人が森の中に入って行くのを見ながら嘆息する。

この森は普通に歩けば一時間程。試験終了まで二時間みておけば良いか……。

振り返ると感情の読めないデイジーのブルーの瞳が見つめていた。


「ああ、すまない、15分したら出発するからな。準備しておけ」

「はい」


突然受験する事になり準備も何も無いものだ、と言うところだが、デイジーは小さく返事をした。

お読み頂き有難う御座いました!

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