第2話 嬉しい言葉
結果発表を気長に待ちながら、僕は今日もバイト中だ。バイトをしていて思うことがあるのだがタバコの番号書いてるのに、あれと言って指さしてくる客。ホットスナックが無くて一個だけ揚げてと言ってくる客。お前らのために世界回ってるわけじゃねぇから!と心に思いつつ平常心で接客していた。
バイトが終わるたびに自分の投稿している小説をチェックして、未だか未だかと期待に胸を踊らした。
そんな中ついに結果発表の時が来た。結論からいうともちろん僕の作品は大賞になるはずが無かった。待っているのは
「ただの○○のパクリじゃん」
「この企画って中学生いけたの?」
「日本語が稚拙」
という心をえぐる感想であった。もちろん分かってはいたが、どこかでひょっとしてと期待していた自分もいた、それは否定できない。全ての感想を読むことさえできないぐらいボロボロだった。
やはり僕には才能が無かった。大賞者の作品を読むと引き込まれるような内容であった。キャラの個性、頭の中にすぐ描かれる光景、展開の裏切り。どれをとっても僕なんかじゃ到底及ばないような。その日はパソコンを閉じ、デイリーも回さず寝てしまった。
翌日になり小説の事は記憶から消してしまおう。これは大人になってからの黒歴史だと記憶に蓋をした。
それから一ヶ月僕はコンビニでのバイトを精一杯頑張った。バイトリーダーと呼ばれるほどに。誰かに期待される、頼られるのに悪い気はしなかった。
バイトの金額も上がり少し贅沢するかとパソコンでお取り寄せを見ていた。酒を飲みながらおつまみを探していると、ブックマークに小説のサイトが残っている事に気付いた。消してしまおうかと思ったが、酔ってたこともありクリックしてみた。相変わらず辛辣なコメントが多かったが、その中にも
「文章は雑だけど嫌いじゃない」
「内容としては好き」
「これからに期待したい」
という感想があった。最初は全く気付かなかった。こんな僕の文章にも応援してくれる人がいる事を知って思わず泣いてしまった。涙がこぼれるとかじゃなく声を出して。
ひとしきり泣いたらアルコールも飛びスッキリしていた。そして決めた、もう一度小説を書いてみようと。今度は1から自分の考えたオリジナルストーリーでいこうと。小説の書き方もネットで調べてきちんと書いてみよう。
僕の小説家の勉強が始まった。