91 おニューのボディー計画
新型ボディーは、設計思想としてはVRというよりは意識そのものを移すものらしい。らしいというのは、相変わらず俺には説明がちんぷんかんぷんだったからだ。なんかこう転生とか召喚ボーナスでこっちの世界の知識がまるっとインストールみたいなことにはならんかったんだろうか。ならんかったからこうなんだろうな。すげえ魔術知識はともかく、この世界の一般常識とか地理の知識ぐらいは欲しかったなあ。
「知識のインストールが必要ですか?」
イライザが聞いてくる。まあ、ないよりあったほうが便利だと思うけど。イライザは起動前に色々な知識をインストールされてて便利だろう?
「マスターのお役に立てるのはうれしいです。でもマスターも同じだけの情報を持つのであれば、私は不要になりませんか?」
「そんなわけないだろう?」
そもそもイライザを連れてきた理由なんて、なんか変な術で俺がチクチクして困ってたからアリシアが元凶つぶしに行ったついでに拾ってきただけだし……ってひどい経緯だな。
「知識があるから連れてきたわけじゃないぞ」
嘘はついてないぞ。あとイライザは触り心地が良いぞ。そして君たちが知識と能力を注ぎ込んでくれる俺の新しい体が楽しみだ。
「ええそれはもう。素材は街にいくらでもありますし」
「天眼ちゃんの残りの素材も使えますしね」
「なんならダンジョンにも」
「そういえばダンジョンに流す魔力を増やしたので、色々生まれてはじめてるんですよ」
ちょっと待ってそれは聞いてない。前のボスだけでも人間相手にはかなりえげつない攻撃してたと思うんだけど……まあもっと強い冒険者が次々に来るようになったら問題ないか。
「アシュちゃんが張り切っちゃって」
「階層も少し増やしたって言ってましたよね」
「深くしたほうが魔力がいい感じに溜まって色々いい感じの魔物が湧くのだとか」
「私たちはダンジョンのことは良く知らないので、アシュちゃん任せなのです」
「でも魔物の素材が使い放題になるのは良いことだと思いますよ」
ええ。アリシアもイライザも楽しそうなのだから何の問題もない。しかしそうなると、今後どんどん俺の体は人間離れした素材で構成されていくことになるのかな?それはそれで……かっこいいとは思うけど。
「顔については不自然にならないように、美形の若者の顔をそのまま使っています。どうしてもつなぎ合わせると人の目には不自然に映るんですよね」
「イライザちゃんみたいに目だけ入れ替えるのはアリなんですけどね」
「ヘテロクロミアとかオッドアイとか、あこがれがないとは言わないがわざわざ作ってもらうほどのものでもないだろう。イライザの目はそれぞれにいい素材選んで魔術回路刻んでるんだろ?」
「そうですね。わざわざ別々の人のものを使っていますね。素材が良かったので書き換えも問題なく行えました」
「ではいくつか強化素材に入れ替えて、あと感覚の拡張と、魔力の伝達増幅ぐらいでしょうか」
「自分の身を自分で守れる程度にはしておいてほしいが……あまり突飛な機能はつけないでおいてくれると嬉しいかな」
「なるほど。サプライズということですね」
「違う!断じて違う!」
なんでそういう結論になるんだ。不安になってきたじゃないか。




