89 吸血鬼の噂
使者殿によると、俺の関わる噂に吸血鬼に関するものがあるらしい。前に吸血鬼がいると聞いてテンションが上がった覚えはあるが俺は今のところ吸血鬼に会ってないんだけどな。
「ユーグゼノの吸血鬼の里で、反乱があったらしく。里の吸血鬼は滅ぼされてはいないものの一人の吸血鬼に悉く倒されたとか」
なにそれこわい。俺知らないよそんなの。そもそも俺その場所知らないし……
「で、なぜ俺が関わっていることに?」
「理由というのは特にないのでしょう。強い力を持つ者がいて、その意思や意図がわからないとなれば、あれもこれも関係を疑いたくなるというものです。権力を持つ皆さんは特にその傾向が強いのではないでしょうか」
権力者って大変なんだな……
「そういえば、やはり悪霊の一件にも関わられていたのですね」
「ん?どういうことかな」
「先ほど、私が悪霊についてお話ししたとき、閣下は名前を言われたでしょう?」
「ああ、確かに」
やはりと言われても困るんだが。もとはといえばアリシアがサラを連れて実家に帰ったところにどこかの調査員が来て、そこで話を聞いたアリシアが面白がって連れてきただけだし。俺が何かしたわけでもないし。っていうかこの吸血鬼の話も流れは同じじゃないか。
「流れは今と同じだよ。たまたま話をしてた相手が、こういう件があるのだが関わってるんじゃないか?って聞いてきて。俺としては初耳だが興味を持てば見にも行くし場合によっては連れて帰るかもしれない。そういう感じでヒカルとホタルは今はここに居る」
「……この話は私が持ち帰っても?」
構わないから話してるんだが、というか何か気になることでもあったんだろうか。向こうの都合はよくわからんな。
「で、話は戻るんだが。吸血鬼の里で一人の吸血鬼が他のすべての吸血鬼を倒した。で、どうなったんだ?」
「興味がおありですか?」
「吸血鬼には興味があるな。まだ会ったことないし」
「では次は吸血鬼も連れてこられるのでしょうか?」
うーん、それはわからないな。正直なところ吸血鬼というものには興味がある。前世でも好きだったしな、吸血鬼モノ。だけどここに連れてくるのかと言われると……成り行き次第としか言いようがない。
「今のところ連れてくると決めてはいないな。連れてこれるかどうかもわからないし。気が向いたらここに吸血鬼が増えている、ということもあるかもしれない」
「……なるほど」
使者の男が何を考えたのかはわからない。ただ俺はこの瞬間、ちょっとだけ面倒なことになりそうな気がしてきていた。
すみません、投稿設定ミスってました……




