86 冒険者の店を誘致しましょう
気球を上げるつもりで考えてたし、実際いまのところ真上に上げることしか考えていないけど、イビルアイを使った観測機って機能的にはドローンだよな、と思いつつ。そういえば。
「アシュは城に関しては目玉がなくても映して見せることができるよな」
「できるわよー。アシュ自身だからねー」
「地下ダンジョンと街は目玉を操れば映せるよな」
「そうね、キリタチの街はダンジョンみたいなものだから、そちらも少ない魔力と簡単な魔術で目玉と視界をつなげられるわね」
ということは、街の中やダンジョンなら、ちゃんと飛ばしてやればここでそれを見ることができる、と。そういえばお子様ボディの行動範囲も同じことか。
「なるほどなー。ダンジョンって広げられるのかな」
「条件はあるけど、広げることはできるわよ」
おお、それは面白そうだ。
「条件って結構大変かな」
「そうでもないけど、魔力と、魔力を持ったもの、意思をもったもの、命を持つもの……そういった“存在”をある程度囲い込んでおくことで、領域の“強度”が上がって、拡張しても破綻しにくくなる感じね」
「魔力はともかく意思をもったものと命を持つものは……いまのところ少ないな」
「キリタチの街はもともと私とのつながりがあったからダンジョンの飛び地みたいに扱えてるけど、あまりちゃんとした管理はできないのよね」
「たまに客は来るけど、あそこの生きた住人って、神殿の元アサシンだけだしなあ」
「あの状態で生きた人間として数えられることにびっくりだけどね……」
失礼だな。あの子は人間だぞ。そのように作ったからな。
「住んでなくても、短期的に来る人がある程度いてくれるだけでもいいけどね」
「なるほど、それなら冒険者が少しいてくれるほうが便利かもしれないな……」
「では冒険者の店を誘致すればいいのですわ」
サラ、聞いていたのか。っていうかいたのか。外で跳ねてるんだとばかり思っていたぞ。
「あやしすぎないか?」
「冒険者というのは、少々あやしい位の方がホイホイ釣られるものだと聞きましたわ」
どこ情報だよ。でもそういう傾向はありそうな気がするな。
「以前支店の話はあったのですが、治安の悪化の懸念があったのでお断りしたのですわ」
なるほど、まあ最近まで黒王の棺も特に動きがなかったわけだし、地下ダンジョンももとはただの抜け道だし、冒険者側にもここに支店があってもそんなにメリットはなかったかもしれないけどな。いや、そうとも限らないか。周囲に冒険者が好みそうなものがあるかどうか、俺知らないしな。
「建物は幸いあまってるし、考えてみるかな。他にも必要な店があるだろうから商会にも話してみるか」




