84 観測気球を作りましょう
中央大神殿の襲撃からしばらくたって。俺たちはイビルアイの死骸をいくつか手に入れることができた。
「確かに立派な目玉だな」
洞窟の中で暮らしているからか、目が大きい。そして魔法の触媒としての効果しかない羽は確かにこれだけで飛ぶのは無理そうだ。尻尾はひょろっと長い。
「依頼を受けた冒険者の腕が割とよかったみたいで、目の状態の良いものが多いですね。これならマスターの期待した通りのものが作れそうです」
「下からの魔力で浮き上がらせて、魔力線で視界をこちらに転送、うん。問題なさそう。音は……」
生き生きとしているアリシアとイライザ。生きてないけど。そして姿も見せずにぶつくさ文句を垂れている悪霊姉妹。
「やることなくてつまらないわね……」
「攻めてきた神官の相手は街の人たちだったし、あの不気味な聖女とおっさんの相手はアリシアさんだったしねー」
「ひまよねー」
「ねー」
声はあきらかに俺を意識して聞かせてきている。しかし武装神官の相手をさせるわけにもいかなかったしな……さすがに相性が悪すぎる。
「まあまあ、神殿の連中相手じゃないときに活躍してもらうから」
「本当?」
「ああ、本当だ」
しかし二人は自然発生した悪霊で俺が何か手を加えたわけじゃないんだが、アリシアが連れてきてから普通にここにいるな。アシュも俺は何もしてない。イライザとサラは……
「そういえばサラは?」
「部屋で棺におさまってるか、街をぴょんぴょん徘徊してるんじゃないかな?」
「自由だなサラは……」
なんとなくでキョンシーにしてしまったサラだが案外気に入っているのか、キョンシーらしくしていることも多い。この部屋にいるときは滑らかに動いて話すのだが。本人が楽しそうならいいか。
「マスター、こんな感じでどうでしょう」
そこにはパラシュートのついたイビルアイの死骸があった。もうちょっと手が加わるかと思ってたんだが、まあやりたいことがほとんどこいつの死骸でできるって話だったからな。簡単なのはいいことだ。内部的にはいろいろ魔術回路を組み込んでるはずだけど。
「アシュ、おねがい」
「はーい」
アシュがスクリーンを用意してくれる。イビルアイの目が捉える映像が映し出された。
「音もいけるんだっけ」
「つなぐ?」
「頼む」
うんうんうんうわんうわんうわんぎゃんぎゃんぎゃん
「とめてくれ!」
しまった。素直につないだらそりゃハウリングおこすわ。とりあえず音を出すのをやめてもらった。まあ生身の耳があるわけじゃないのでそこまでひどい目には合ってないが、不快ではある。イライザの耳と、こいつの魔術回路は心配だけど。
「なになになんなの」
「なんの攻撃なの」
「いや、あのな……この部屋って完全に無音なわけじゃないだろ?」
「うん」
「こいつがその音を聞く。アシュがその音を大きくして鳴らす。それをこいつが聞く」
「あっ」
「そういうことかあ」
悪霊姉妹も納得したようだ。しかしそれぞれみんなどんなふうに聞こえてるんだろうな。
「まあ、上げてしまえば問題ないけどな。どうやってテストしよう




