76 分室メンバーが依頼を受けたようです
ヴィム、パメラ、アレクの三人は冒険者の店で依頼を受けて北東の森の奥の洞窟に来ていた。
「イビルアイってのを集めればいいんだよな」
「失敗しても供託金を失うだけだし、それもウトバムさんのお金でしょう、気楽にいきましょう」
アレクの力を確かめるため、冒険者として少し仕事を受けてみる、という名目でウトバムに供託金を出させたのだ。
「なので依頼が成功しても失敗しても私たちとしては問題ないの」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
当たり障りのない返事を返すが、アレクとしては少し心外でもある。わざわざ説明していないが、魔法協会で魔力だけでなく様々な技術において、対外的な依頼を受けても問題ないと認められたものにだけ与えられるバッジを彼はつけている。ランクこそ銅だが、それでもその辺の冒険者に劣るとは考えていなかった。
「そんなに力まなくてもいいって」
アレクの語気の強さを緊張と勘違いしたヴィムが軽口を叩く。
「大丈夫です」
洞窟の中は当然だが暗い。明かりの魔法で照らしながら三人は奥へと進む。
「確かイビルアイってギョロ目で小さな羽がついてるんだよな」
「細長い体をしてるのよね。尻尾はヘビみたいだとか。そんなに大きくはないそうだけど……」
「王国の方では聞いたことがない魔物ですね。薬になるとか何か役に立つのであれば話を聞いたことがあっても良さそうなものですが」
「まあ、依頼人には依頼人の理由があるんだろう。ペットにするとか」
「依頼は死骸でかまわないって話だし、ペットはなさそうねえ……それに」
パメラが盾を構える。
「これを飼いたいとか、ちょっと趣味を疑うわぁ」
「いやいや世の中にはグロいペット飼ってる貴族も結構いるもんだぜ」
ヴィムが剣を抜く。
「あの、私のテストなのでは……?」
アレクも杖を構えた。攻撃魔法でも補助魔法でも問題はないが、すでに戦うつもりでいる前衛を無視して使うわけにもいかない。
「テストっていうかまあ、歓迎会だな」
「は?」
意外な言葉にアレクが間抜けな声を上げる。
「協会魔導士で、護衛依頼も受けてたんだろ?」
話しながらも、しっかりイビルアイに斬りかかる。ただ、イビルアイは身軽でなかなか攻撃が当たらない。
「実力を確かめるってのはウトバムさんに金を出してもらうタテマエってやつだよ……ちっ、あたんねーな」
「風の魔法で飛んでいるので、剣の動きに沿った風の流れに合わせて避けてしまうようですね」
「魔法なら当たるか?」
「やってみます。つぎ斬りかかったらすぐ下がってください」
「おう!ほいっ」
イビルアイに斬りかかった刃をそのまま鞘に納め、アレクの正面を開けるようにヴィムが下がる。そこに
「炎の矢」
一言で三本の炎の矢が放たれ、二本が当たる。空中でバランスを崩したイビルアイにパメラが素早く反応し、盾で殴りつけた。そのまま地面に叩きつける。耳障りな悲鳴が上がり、イビルアイの蛇のような尻尾が力なく垂れた。
「まずは一匹、だね」




