71 おもてなししましょう
俺たちはいま、アシュが投影してくれた地図と侵入者達の様子を皆で眺めている。すごいエンターテインメントだ。
「そう?すごい?エヘヘ」
アシュが照れている。褒められ慣れてないんだろうか。そういえば色々してくれてるけど褒めてないかもしれない。
「ああ、すごいぞアシュ」
反応が声だけなのが残念だな。体があれば頭をなでることもできるのだが……
「じゃあ撫でてもらう体についてはまた考えるとして!」
考えるんだ。
「魔物を生み出すにはちょっと材料が足りなくて、今回は街の人にがんばってもらうことにしたんだけど。ゆくゆくはちゃんとしたモンスターも配置したいわね」
ちなみにどうやらこの侵入者の様子を映してるのも、街の人の目玉の再利用らしい。それっぽいゾンビやらスケルトンやらを作ったときの余りだとか。てことは侵入者の後ろや前、あと斜め上とかを目玉が追いかけてるのか……なかなかシュールだな……
「音が拾えないのが残念だけど、小さくて単機能のほうがこういうときは扱いやすいのよね」
◆◆◆
スケルトンやゾンビといった人型のモンスターばかりが出てくる妙なダンジョンをアサシン達は何層か攻略していた。
「こういうのは冒険者共の仕事だろう?」
「見せてもらった地図が間違ってたから俺たちには無理です、冒険者に頼んでください、って言うのか?」
「言えるわけないじゃんそんなの」
「無駄口を叩くな」
「いいじゃん聞いてる人もいないんだし。ほら、何やら意味深な扉が見えてきたよ」
彼らが見つけたのはアシュの用意した、最初の中ボスフロアだ。
「ちょっと難しくしすぎたかな」
ここまで来るのも結構ギリギリだった。確かに彼らは傷をほとんど負っていない。でもそれは彼らの戦闘スタイルがアサシンだからで、きわどいシーンも何度もあったし、実際かわし切れないこともあった。見ている分には見ごたえがあったが、正直浅い階層はもう少し軽々とこなしてくれてもよかったように思う。何か精鋭っぽい雰囲気出してたから期待していたのだけれど。
「じゃあボスをちょっと作り替えてもう少し」
「あ、扉あけちゃったよ」
「え、ちょっとま」
◆◆◆
扉を開けて、一応連中的には気配を消して入ったその先にいたのは、五対の腕を持ち、頭が二つある合成人間だった。それが手のひらを花のようにあわせているのをアサシンたちは認識し、反射的に避けようとして……
彼らの回避は勿論、アシュのボス組み換えもどちらも間に合わなかった。せっかく8人いたアサシンは、端にいた女アサシンの体の一部を残して霧になった。
「あー」
「ええと……」
「……微妙に残ってるみたいだから、拾いに行ってくるわ」
アリシアの退場で、第一回ダンジョン攻略観戦大会は幕を閉じたのだった。




