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死霊王に俺はなる!  作者: 城乃山茸士
死霊王の目覚め
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07 出立の日

 周囲には誰もいない。皆その聖女候補だった彼女を見送りに行った。もちろん見送りに行ったという表現は適切ではない。ただ、この神殿に彼女を止められるような者はいないだろう。アンデッド化してどの程度彼女としての能力が使えるのかはわからない。そして神官は並のアンデッド相手なら十分に戦えるだけの力を持っている。それなりの武器の用意もある。にもかかわらず神官長は何故か、誰も彼女を止められないだろう事を知ってしまっていた。

 実際、彼女の私室から拝廊まで、誰も彼女を止められないどころか、傷一つつけられないでいた。被害も大したことがないのは幸いと言えた。あまりの力の差に吹き飛ばされるだけで済んでしまったのだ。しかし拝廊はそうはいかない。祝福を与えられ強化された正面の扉はそう簡単には砕けない。そこで足止めを目的に戦うなら犠牲は避けられないだろう。そして状況はそのように進んでいた。


「我々が止めるしかないのだ!」


 重武装した神官が列を成している。彼らは普段あまり表に出てこない、実力行使を司る神官隊である。一部の下級神官などは実際彼らを初めて見るため、多少好奇の視線が混ざっているのは仕方がない。が、勿論そんなことを気にしている余裕はないのである。


「来るぞ!」


 いきなり数人まとめて弾き飛ばされた。そのまま重い音が響く。神の祝福の付与された扉が呪われた存在を受け止める。神官たちが聞いたことのない破壊音が響く。扉自体が比喩ではなく叫びをあげる。


「なっ!」

「気にしている場合ではない!囲め!扉に押し付けろ!」


 盾を並べて神官服のアンデッドを押し込んだ、はずだった。その盾もまた神の祝福で強化されていて、折れたり欠けたりすることはおろか、わずかな変形も起りえない、はずだった。それが、粉々に砕け散る。飛び散る盾の破片と、ばらばらになった鎧のパーツ。


「え」


 ばらばらになって落ちている鎧のパーツ。中身はいったいどのように


「まさか」


 先に吹き飛ばされていた武装神官が、魂の抜けた声で呟く。脳が理解を拒絶する。神官服のアンデッドはすでに周囲に散らばる破片や部品に何の興味もない様子で、改めて扉に向かう。枯れた指先に何らかの魔力が宿るのが見えた。そのまま、軽く押した。少なくとも周囲からはそのようにしか見えなかった。にも拘わらず、かなりの重さがあるはずの扉は簡単に開いた。


 そして、アリシアという名前だった少女は、振り返ることもなくそこを出て行った。

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