68 街の将来を考えましょう
とりあえず、まとわりつく視線を放置して街に向かう。
「そのうちこの森も迷宮にしたら面白いかな?」
サラたちが命を落とした森だ。相変わらず色々なモノが棲んでいる。このままでもいいが整えてやるとそのうち来るかもしれない視線の主へのおもてなしにちょうどいいかもしれない。
「でもなあ、街と城の位置関係がなあ……」
城の周りに街があった方がそれっぽいんじゃないか、そう思ったのだけど、ちょっと落ち着いて考えると、これはこれでいい気もしてくる。
「俺がラスボス的にあの城に居て、城を攻略する手前に街があって、実はこの街の住人は仮初めの命で動いている……うん、なかなか王道っぽいんじゃないかな」
ラスボスダンジョン手前の最後の街。ちゃんと盛り上げてあげたいよね。討伐されるつもりはないけど。だんだん楽しくなってる自分がいる。
「マスター、この街は辺境とはいえそれなりに人の行き来がありますわ。マスターの思う“お約束”に近づけるためには、マスターを討伐に来る人たちだけが苦労してたどり着くように周辺を整えた方が良いと思いますわ」
「一方であまりにも人が来ないのも、素材的にはおいしくないわね……まあそれはそのうち考えましょう」
「宿屋もあるし武器や防具を扱う店もある、神殿もある。他にも大抵の店はあるし、馬車の駅もあるんだな」
「一応辺境伯領の首都ですわ」
「それもそうだな。でも……もっと小さくしてしまってもいいかもしれないな。せっかくだから森に呑まれた感じにできないかな」
「植物を扱う魔術とか、成長を促す魔術とかですね。私も多少は扱えますが、イライザちゃんのほうがうまく扱えそうですね。あるいはそういうのが得意な人をマスターの力で取り込んでもいいかもしれません」
そういえば俺の力でアンデッドに作り替えることができるんだよな。どうやってるのかよくわかんないけど。アリシアも仕組みはわかってなさそうだったけど。そういえば吸血鬼に近い能力かもって言ってたっけ。そのうち吸血鬼にも会いたいな。
「じゃあ将来的には街の中心部だけ残して、住宅地なんかはだいたい森に呑ませてしまいましょうか。生きてるように動かす街の人も減らせますし、森の中の家に白骨死体なんて演出もマスター好みなのでは?」
よくわかってるなあ。でもまあ今はそこまではできないから、一通り見て回ったら街の名前きめて、街の入り口と馬車の駅に衛兵立たせて街の名前言わせるぐらいにしようかな。
「ああそうだ、霧で街を覆うぐらいならできるかな?」
「そのぐらいならアシュに言えばすぐだと思いますが」
「じゃあ戻ったらそれは頼んでみよう」
朝も昼も夜も霧に包まれた街。キリタチの街。安直だけど、わかりやすい特徴のある名前。うん、これでいこう。




