63 対策分室の新拠点
カルドへの入国も冒険者の店での一部のメンバーの出禁解除もウトバムがいろいろな伝手を使って何とかなることになった。神殿での制約は分室の仕事を考えるといざという時役立たずになる可能性があるのでウトバム自身が隷属の対象となることで保証とすることになった。
「面倒がまた増えた……」
本来ならウトバムはあまり自分の責任範囲を増やしたくなかったのだが、時間をかけずに解決する手段がほかに思いつかなかったのだから仕方がない。
「まあまあ、その分カルドで本業だけでなく副業でバンバン稼げば良いじゃないか」
「どっちが本業でどっちが副業だぴょん?」
「それは難しい質問だねぇ」
冒険者達が軽口をたたき合うのをウトバムは眉間にしわを寄せながら聞いていた。
「ところでウトバムさん」
「うん?」
「なんかもう一人魔術師が合流するんだって?」
「ああ、その予定だが」
「どんなやつなんだい?」
「ラッシャ商会の護衛で辺境伯領についてった奴だな。例の、神殿に駆け込んだってやつ」
結局彼も対策分室に合流することになった。他の魔術師より周囲の気配に敏感なようなので、今後黒王勢力と関わる上で役に立ちそうに思えたのだ。
「何もできずに逃げてきたやつなんだろ?大丈夫なのかい?」
「懸念はわからなくもないがな。よく言えば危機に敏感で、余計な騒ぎを起こさずに情報を持ち帰ったやつとも言えるだろう?」
「良く言いすぎのような気もするけど、言いたいことはわかったよ」
◆◆◆
カルドの冒険者の店は、国教会から離れたところにある。対策分室はそこからそう遠くないところに数人で寝起きできる家を借りて、それを拠点にすることになった。
「じゃあ全員集まったところで自己紹介でもしようかな。次はいつ全員集まるかわからないしな」
「分室長が召集かけたら集まるんじゃないかな?」
「気づいたら、だろう?それぞれに役目を持って動いてたらそれを放り投げてまで集まるのは難しいだろうしね」
メンバーはウトバム以外冒険者なので荷物らしい荷物はない。必要な家具の類はある程度は分室の予算で買うつもりだが今はまだ何も買っていない。結果としてガラガラの家の中に冒険者達が集まっている。
「確かにみんな集まってるのは今日ぐらいかもしれないぴょん」
「まあでも寝泊まりするのはここでいいんだろう?」
「一応それぞれの部屋は用意するつもりだけど」
「それは助かるね。宿代もバカにならん」
「ここで寝泊まりしなきゃいけないわけじゃないんだよね」
「勿論。それは好きにすればいい。最低限屋根と壁は用意させてもらうから仕事に支障の無いように過ごしてほしい」
「わかったぴょん」




