61 神学校と魔法協会
「そういえばさ、アリシアは神学校っていうのに通ってたんだよな」
「はい、マスター」
「それってやっぱり信者じゃないと入れないんだよな」
「いえ、信仰心の篤さには関係なく神学校には入れます。異教徒であるとか、冒涜的であるとかでない限りは。なので一般的にはスクールと呼ばれています。もちろん神についても多く学びますが、教養としての魔術理論なんかも一通り学びますし、神官にならずに上級学校で魔術研究を続ける方も多いです」
「なるほどな、みんながみんな神官にならなくてもいいってことか」
前世の宗教系の学校と似たようなものかな。ただ異教徒はダメってあたりは少し厳しいかもしれない。とはいえ神官目指してる同級生にとっては迷惑だろうし、仕方がないのか。
「神官とは別に魔術師っているよな?」
「ええ。ほとんどの魔術師は学校のような場で学ぶことはありません。そもそもあまり人づきあいが良くない人が多いですしね」
陽キャ魔導士ってあまり想像できないな。
「家が魔導士であるとか、あとはコネで弟子入りするとか」
「家庭教師を呼ぶこともありますわ。その場合魔法協会を通すことが多いですわね」
サラが話に入ってきた。なるほどそれも何だかファンタジーっぽいな。家庭教師に魔法を習う貴族の子弟か。
「魔法協会に登録するようなのは、どちらかというと人づきあいできる側の、ごく少数の魔術師です」
そっちがごく少数なのか。それにしても魔法とか魔導とか魔術とか、いろんな言い方があってややこしいな。
「こだわって使い分ける人はあまりいません。魔法はどちらかというと古い言い方で、系統だった魔術理論が成立する前に好んで使われていました。魔法協会は古い組織ですのでその名前を使い続けているようです」
一応使い分けるなら、現代の理論に基づいたものは魔術、と。科学と錬金術みたいなものかな。
「錬金術……」
アリシアが微妙な顔をする。
「ええ、あります。錬金術。錬金協会というのがあって、魔法協会と違って大きな組織です。教育機関もあります。スクールに入らない人や入れない人、スクールでできない研究がしたい人はそちらに向かうようです」
異端異教の類や、冒涜的な研究、か。アリシアはそういうのがあまり好みではないみたいだ。武装神官をぶちのめしてたし、そっち側に近いのかと思ってた。そうつい口を滑らせてしまった俺の目を見てアリシアは言った。
「私に打ち消される程度の祝福、打ち倒される程度の神官、どちらも信仰心が足りないと思うんですよ」
ありがとうございました。なんとか年内毎日更新を継続できました。




