42 アシュケローン城
戻ってきたら、ヒカルが何かと戦ってました。
「何かじゃない!アシュケローン城じゃ。アシュちゃんと呼ぶことを許すわ」
言いながらまだ戦ってる。城と戦ってるって意味がわからない。ヒカルなにしてるの。
「せっかくその人の子供時代の記憶に混ざって妹ポジションゲットできるチャンスだったのに!戻ってきて、『君は……もしかして』『そうよ!あなたの妹のアシュよおにいちゃん!』『アシュ!会いたかった!』『私もよおにいちゃん!』『おいでアシュ」
「うるさい」
ヒカルがよくわからない何かのどこかを殴りつけたみたい。ここからは見えないのだけど、すごい音がして声が止まる
「妄想に入り込みすぎだ」
「あーでもその手があったのね」
「イライザちゃんも落ち着きなさい」
アリシアさんもあきれている。何してたんだっけ。
「で、アシュだっけ?マスターも帰ってきたことだし一旦落ち着かない?だいたい消えたって怒ってた割にちゃっかりマスターのところにも顔出してるの、おかしくない?」
「お、おかしくはないわよ。取り乱したのは事実だけど、よく見たらちゃんとつながってるのわかったし、覗いたら面白そうなことしてるじゃない?せっかくだからお邪魔しようと思って、でも気づかれたら邪魔するでしょ?」
「当然ね」
「だから、そっちの子」
「ヒカルだよ」
「いいのよ名前なんて。その子と遊びながら、ちょっと、ね」
「……器用なのね。それはともかく、アシュケローン城?」
「……あなたたちねえ……その人は仕方ないけど、みんなは知ってるはずでしょう?」
私たちは、少なくとも私は“黒王の棺”という名前しか聞いたことがない。イライザさんも知らないって顔してる。サラさんは……よくわからない。アリシアさんはちょっと難しい顔をしている。
「アシュ、ええと、それは自称ってことでいいの?」
「しつれいね!人々は皆私のことをそう呼んでたわ!ここに普段からいる人達だけでなく、遠くから来た人たちも私の名前は知ってたわ!」
アリシアさんとイライザさんが、彼女たちの知ってる黒王の話と、さらにその前のこの城についての話を始めた。アシュの言ってるような、ここに普通の人が住んでいて、そこに遠くからも人が訪れるような時代は、はるか昔のことらしい。そしてそのころの名前はもう誰も知らないんだとか。
「あなた、マスターが現れる前のこと、または現れた時の事って覚えてる?」
「もちろん、忘れるわけがないわよ。その人が玉座に座って……あれ?ええと?」
「その前の記憶は?玉座には誰が座ってたの?」
「レイダー王よ」
「「「「誰?」」」」
「何故みんな知らないのよ!ばかなの?」
「悪霊二人とサラちゃんはともかく、こっちの二人は普通の人よりは色々知識詰め込んでる方だと思うんだけど……」
よくわからない話になってきました。あとさらっと知らなくても仕方ない側に分類されました。確かに学のあるほうじゃないですけど……とりあえず、アシュがもう暴れてなくて、みんなが普通に話をしてるので、もう大丈夫なんでしょう。
……あ、マスターは?




