表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死霊王に俺はなる!  作者: 城乃山茸士
死霊王の目覚め
25/142

25 サラの帰還

 辺境に生きる者には辺境に生きる者の生き方があり、覚悟がある。それは人の世界そのものである中央と違い、人の世の果てに生きる者の在り方でもある。森に出なければ安全なのではない。必死で維持している安全な範囲の外が森であり、人の世の果ての向こう側であり、人ならざるものの領域なのである。そして時には人ならざるものの訪問というのもある。地方によってそれは竜種であったり、吸血鬼であったり、あるいは邪妖精の類であったりする。境界を侵し人を貪るような類の訪問が一般的だが、時には何の問題もなく、あるいは多少の家畜の被害などを伴う程度で終わる。それはいわば災害である。明確な世界の敵に対しては抑止力としての勇者が現れるようだが、災害は人の手で備え、あるいはやりすごすより他にない。それは辺境の人々にとって“そういうもの”なのだ。


「では、伯は正しい判断の結果として、あくまで結果としてそのようになったのだと?」

「正しいとは言わん。だが、ここは辺境なのだ。人の対処が常に期待通りの結果を生むわけではないし、いかなる判断も変えられない結果というものもある」


 辺境伯は積極的に娘を死に追いやったわけではない。死なせるつもりで救援を出さなかったわけでもないだろう。辺境特有の覚悟あるいは諦観が、いわば冷静な損切りが、親子の情を上回った、つまりはそういうことだったのだろう。それは中央から来た調査官には理解しがたいものだった。しかし、そういった関係者の様々な思いや疑念をまとめて吹き飛ばすものが、辺境の地に訪れる。


◆◆◆


 鈴を鳴らす神官服を着たミイラと、妙なポーズで跳ねる謎の服を着た死体。歩みは遅い。それを見た民は直接目を合わせることを避けた。きっとそれは見てはいけない何者かなのだと、辺境に生きる者の本能のようなものが告げる。ただ見張りだけが領主のもとへと知らせを届けた。知らせを受けて衛兵たちが守りを固めていたところに、それらが現れる。それらを見やったアリシアがつぶやく。


「ああもう、面倒ねえ……」


 そして、それなりに正しい礼の形をとる。マスター相手ではないのであくまで、今は敵意がないことを伝える程度の雑なものである。サラは動かない。


「使者というわけでもないのだけど。こちらのお嬢さんがお話したいそうよ」


 衛兵たちがざわめく。彼らはサラの顔を知っていた。辺境伯に話が伝わるのを待つ。すこしあって、彼女たちは離れに通された。

(予告BGM)

訪れた使者、父と子の対面。そして、調査本部長の打つ手とは……?


次回、親子の対面。死霊王に、俺はなるっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=476437095&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ