02 骨でもおなかは減るのかな
ないねえ。面白いぐらい何もないねえ。
いわゆる西洋風の城だと思うんだけど……西洋……
「いてっ」
なんかこう、脳に鍵がかかってるみたいなんだよなあ、脳多分ないけど。骨しかないけど。なんで俺動いてるんだろうな。回廊を歩きながらぐるぐると考える。そもそも俺はこの城に見覚えがない。何百年寝太郎で脳もなくてそのせいで記憶もないのかもしれないけど、少なくとも今の俺にとってここは未知の場所で、何の手がかりもない。
「割と困った状況かもしれない……んだけどあまり気にならないんだよな」
なんとなく、元のボロ椅子まで戻ってくると、深く腰掛けた。
「ま、なんとかなるだろ」
目を閉じた……ような気分になってみる。
ところで、俺は腹とか減るのかね?
◆◆◆
そのころどこかの神殿で、一人の少女が眉間にしわを寄せていた。
「なーんか妙な気配が沸いた気がしたんだけど……」
眉間のしわをもみほぐすようなポーズをとる。
「消えた……のかな?それもそれで変なのよねえ……」
自信なさげにつぶやく。そもそも何の気配なのかもわからない上に、探ってるうちに消えてしまったのだから無理もない。まあ気配の正体本人も自分が何なのかわかってないのだが。
「しょうがないなあ」
何もなければそれでいい、そう思いながら一応地図を出してくる。正確に方角を合わせ、気配を感じた方向に定規をあてる。相手がある程度わかっていれば気配の強さから距離も割り出せるので、地図上の位置を決められるのだが、今回はなんとなく延長線上を眺めるだけである。
「まさかね」
延長線上には、ある一点を除いてめぼしい施設はなかった。その一点も、もう何百年も前に脅威だったというだけの、今は何もないはずの場所である。しかも、この神殿からは相当距離が離れている。
「変なゴーストでも住みついたかな?」
そう口に出すと、少女は簡単な術の準備を始めた。机に広げた地図の上に、いくつかの道具を並べる。道具の配置が回路を構成し、そこに少しの魔力を流すことで術が起動する。こちらからある種の力を加えて反応を読み、軽く相手の能力や属性を測る程度の術である。距離に応じて多少のロスが発生するが少女にとってはそれほど問題にならない。
「よし」
少女は軽い気持ちで術を起動させ……
そのまま倒れた。