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死霊王に俺はなる!  作者: 城乃山茸士
死霊王の目覚め
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16 黒王の棺

 かつて黒王と呼ばれた死霊術師がいた。彼と彼の闇の軍勢は勇者の率いる討伐隊を幾度も退けたと言われている。いかなる理由があって勇者まで出てくるような、国家や世界の一大事として扱われるに至ったのか、その記録は残っていない。ただ、人の身でありながら魔王に匹敵する脅威として扱われたこと、そして結局勇者率いる討伐隊はその役目を果たせなかったことは間違いないようだ。彼は何度か居を移し最後は森の中の城に籠って討伐隊を迎え撃った。

 今その城は何重にも施された結界魔術によって、外から視認することはできない。ただ、黒い直方体に見えるだけだ。その中がどうなっているのか誰にも確認する術はない。人は彼を恐れ、彼の城を恐れ、外から全てを覆い隠してしまったのだ。そしてその森の中に聳える黒い直方体を人々は“黒王の棺”と呼ぶ。中に在るのが死者であってほしいという願いとともに。


◆◆◆


「面倒は勘弁してほしいって言ったんだけどなあ」


 調査していたネクロマンサーの研究成果が何者かに持ち去られた件では、襲撃の正確な時期がわからないため関連を断定はできないものの“やせ細った女性神官”が目撃されている。そして、どうやら別口で少し前に、地方の神殿内に突如“発生”したアンデッド、ミイラが武装神官を数人殺害して走り去ったらしい。


「やっぱりそのやせ細った女性神官って、このミイラだよねえ……」


 ミイラが神官服を着てそのへんをうろうろしているとは普通思わないだろう。おかしいと思っても“やせ細った神官”で納得してしまうのは自然だとも言える。そのミイラはどこかに走り去った後、例のネクロマンサーの研究施設に現れた。どこに行き、そこで何が起こって、何のために奪ったのか。


「そもそも僕の担当する案件ですかこれ?」


 単なる異常者の捕縛案件だったはずが、その異常者の研究施設の襲撃、殺人、成果の強奪と話がエスカレートしただけでも頭が痛いのに、襲撃者はミイラかもしれない、そのミイラは神殿で“発生”したかもしれない、さらには……


「走り去った先は黒王の棺かもしれない、だって?」


 神殿から走り去ったとされる方角について考える。その方向にめぼしい街や既知の施設、墓所、その他何らかの関連のありそうなものというのは他に思いつかない。


「神殿内部の調査はさすがに僕は関わらないけどね」


 神殿関係者はあまり部外者を入れたがらない。そのため神殿内の事件には、神職を兼務した専門の調査員があたることになっている。また、神殿側からも担当が割り当てられ、共同捜査の形をとる。


「あっちもあっちで面倒だよねえ」


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