マスターは初心者向けの説明会に参加するようです
「サカモト・ユータローさん。冒険者登録はサンテナン本店、と」
サンテナン……なんとなく聞いたことあるような気がする。そこにこのギルドのような組織の本部があるということか。冒険者の店だから本店、なるほど。
「すみません、ちょっと記憶がはっきりしなくてですね……一度、依頼の受け方とか、冒険者の店についてとか、教えていただくことはできますか?」
分からないことは聞くしかない。初心者向けの説明みたいな制度はきっとあるだろうから、最悪金を払ってでも教えてもらおう、そう思って聞いてみる。幸いこのカードでそれなりの金額が使えるようだし。
「それでしたら、登録者向けの簡単な案内がありますので、受けていかれますか?」
なるほど、右も左もわからないんだ、それがいいだろうな。
「じゃあそれをお願いします」
「わかりました。ではお昼の鐘が鳴ったらそちらの扉から入って、階段を上がってください」
他に何人ぐらいいるんだろうな?
「今のところ他に二名ですね」
とりあえず飯はここで食えるようだし、適当に昼まで時間潰すかな。
鐘の音を聞きながら、そこそこ立派な扉を開ける。扉の奥は思ったより簡素な階段。のぼりとくだりがある。ちょっと下に何があるのか興味がわいたが、あまり勝手なことをして怒られるのも恥ずかしいので、おとなしく階段を上る。後ろから足音が聞こえるのはきっと他の受講者なのだろう。面倒なので振り返らなかった、のだが。
「なに?あんたも今日登録したの?」
声をかけられてしまった。
「いや、以前登録してた……はずなんだけどね。覚えてなくて。仕方ないから色々教えてもらおうと思ったら、初心者向けの案内があるって受付で教えてもらってね」
「なにそれカッコワル……」
ずけずけと言う子だな。わりとかわいい顔してるくせに。そう思いながら振り返る。
「まあでも初登録と変わらないよ、何も覚えていないんだしね」
◆◆◆
「あの体で体験したことぐらい残して置いたらよかったのに」
「それをすると結局全部思い出しちゃうから、意味がないでしょう?少し不便かもしれませんがすぐ慣れますって」
「まあ、マスターですからね……」




