132 アバンの評価
「それにしても、相変わらずわけのわからない馬車だぴょん」
自分で要求しておきながら。しかもベッドに当然のように転がりながらラパンはぶつぶつ言っていた。ちなみにラパンも、あるいはニワトリ男も知らないことだが、この連れ込み馬車の衝撃吸収性能は、大聖堂の最高レベルのものを上回る。
「遠出には欠かせないぴょん」
ラパンはこれが他人のものだと言う意識があまりない。
「でも帰りはたぶん使えないぴょん……」
マスターに同行している二人と一緒に帰らなきゃいけないとしたら、この馬車では少々狭い。そのうえ荷物や追加メンバーでもいたら、自力で帰ってくるほかなさそうである。
「まあ、なるようになるぴょん!」
そもそも彼女は、冒険者ラパン・ラビットとして生きていることそれ自体が楽しみであり目的である。何をしていても楽しいのである。ニワトリ男の馬車を使うのも楽しいからだが、歩いて旅をするのだって楽しいのだ。きっとラパンとして死んでいくならそれすらも楽しいのだろう。
「さて、せっかく揺れないのだから、色々準備するぴょん」
ラパンはそう言うとポーチから固形インクを取り出す。煤を膠で固めたそれは、彼女の呪術との相性を高めるために兎膠が使われている。時間のある時にそれを石でできた皿の中で少量の水とともにゆっくりと磨り、十分な濃さになったものを小ぶりなボトルに移しておくのだ。液体になったものはあまり長期間の保存には向かないため、定期的にこの作業が必要になる。このインクを使う筆も兎毛のものと、ラパンのこだわりは徹底している。ちなみにとっておきの呪符の材料として兎皮紙も用意しているが、あまり出番はないようだ。
「ミノンもひさしぶりだぴょん」
◆◆◆
「正体も分かったし無理にラパンちゃんをマスターに追いつかせなくてもよくなったのよね」
アリシアの独り言に、アシュが反応する。
「そういえば結局そのアバンツァードって何者なの?」
「一言で言うと、頭のおかしい錬金術師?」
神の加護を解析しようとする錬金術師はそれなりにいる。魔術的にも実益的にもあまりメリットがないので、数多くいるというわけではないが。そしてその中でも神殿に真っ向から挑戦状をたたきつけるようなマネをする錬金術師は、他にあまり名前を聞いたことがなかった。
「直接知ってるわけではないけど、神殿にはかなり嫌われてるから名前は何度も見てるわ」
アリシアとしては、加護の解析などいくらでもさせればいいのにと思っている。その程度で揺らぐ信仰なら捨ててしまえばいい、とも。が、それはそれとして、アバンが神殿に嫌われているのは事実である。
「ふうん、変な人ってことね」
すみません、ぼちぼち復活していきます




